効率化目線にばかり目が行き、業績拡大にならないマーケティングプロジェクトの特徴
寺倉 大史
Director
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「AIを使ってマーケティングを効率化させ、リソースや原価をカットし、利益を伸ばすのが大事」「AIで効率を上げるだけでなく、非効率なところにも価値がある」。最近こういう記事をよく見かける。言いたいことはわかる。
でも、どちらもどこか「効率化」に目線がいきすぎている気がしてならない。
マーケティングの目的は、商売を成立させて、拡大させるところにあると私は考えている。もちろん利益も見る必要がある。売上をどう伸ばすのかは切っても切れない関係で、そこ抜きにしてマーケティングとAIを語るのはあまり良くない気がしている。
にもかかわらず、AIの話になった途端、効率化ベースの議論に終始してるケースが多い。
この記事は「効率化が無意味だ」と言いたいわけじゃない。時間削減が目立つのはとてもいいことだと思ってる。ただ、それだけをやっていくことが全てじゃない。
マーケターなら本来の役割をもっと見てもいいんじゃないかと私は思ってる。
スライドのクオリティを上げるのはマーケターの役割ではない
よくあるのが、スライドのクオリティをとにかく上げる、毎回アップデートを繰り返すみたいなプロジェクト。AIを使って見栄えのいいスライドが速く綺麗に作れるようになった。フォーマットが整い、グラフも美しくなり、情報の整理もスムーズになった。
それ自体はいい。でも、それやって業績どれだけ上がるの...と正直思う。
スライドの見た目に時間をかけること、それがマーケターの仕事なのかと考えると、かなり疑問が残る。マーケターの仕事は商売を成立させ、拡大させること。スライドのクオリティを上げることがそのまま売上に直結するケースは、実はそう多くない。
AIを使ってサイトができた。記事ができた。スライドのクオリティが上がった。それぞれ「できた」は事実。でも、その先にある「だからなんだよ」に答えられないと意味がない。
「だからなんだよ」にしかならない状態のまま、AIを使えてる感だけが残る。そこに危うさを感じてる。
目的が商売を成立させて拡大させることなら、マーケティングがAIから受けられる恩恵を効率化だけに置いちゃダメだと私は考えてる。商売をどう拡大させるのか。売上をどう上げるのか。業績をどう伸ばすのか。トップラインをどう伸ばすのかから逃げないこと。
効率化をした結果、できることが増えて、だから気づけばトップラインを伸ばすことにつながっているという論もあるが、じゃあそれでどれくらい伸ばせられるのか?という問いへの回答にはつながらない。
見直すべきは、シンプルにプランニングから、ではなかろうか。
プロジェクトのゴールを再設計する
じゃあどうするのか。答えはシンプルで、ゴールの再設計から始める。
期日とゴールが定まった業務の集合体をプロジェクトと呼ぶなら、従来のプロジェクト設計をそのままにしてAIを導入しても、起きるのは「同じことが速くできるようになった」だけ。それでは効率化の域を出ない。
たとえば、従来「6ヶ月で1000万円の売上を作る」だったプロジェクトがあるとする。これを「3ヶ月で2000万円の売上を作る」に再設定してあげればいい。
期間は半分、目標は倍。普通に考えたら無理な数字。でも、従来だと「無理」で片づけられてたところにAIを活用して、実際にそこに辿り着けたなら、それこそがAIの恩恵を受けてるということになる。
今の議論は、どちらかというと個人の生産性単位で語られがち。業務プロセスの改善ベースで語られることがほとんど。でもそれだと、プロジェクトのゴール自体は変わっていない。同じゴールに対して、少しだけ速く到達できるようになっただけ。
ガチでこれ行ける?ってレベルのゴール設定から始めると、景色がまるで変わる。
スライドのクオリティに時間を割いている暇はなくなる。サイトを作れたことで喜んでる場合じゃなくなる。ガンガン必要なことを、最適な形で推進していくしかなくなっていく。
そうやってプロジェクト自体が研ぎ澄まされていく。だから辿り着けるところがある。研ぎ澄まされないプロジェクトは、どこまでいっても「できた」止まりで、「だからなんだよ」に答えられないまま終わる。
まずプロジェクトの再設計をしないとダメだと私は考えてる。ゴールの再設計がないまま効率化だけ進めても、意図した業績拡大にはつながらない。
個人の生産性が上がっても、プロジェクトの生産性は上がらない
私はよく、こういう質問をする。
「毎月10本の記事を公開していたメディアのライターが、同じクオリティの記事を100本作れるようになった。生産性は何倍か?」
多くの人が10倍と答える。
でも、ちょっと待ってほしい。ライターが10本から100本書けるようになった。それは事実。でも、レビューする人は10本分のリソースのまま。入稿する人も10本分のリソースのまま。編集体制は何も変わっていない。
だとしたら、公開できるのは結局10本のまま。
ライター個人としては生産性が10倍になった。でも、プロジェクトとしての生産性は1倍のまま。何も変わっていない。ライターが100本書ける能力を手に入れたところで、プロジェクトのアウトプットは10本から動かない。
これが、個人の生産性とプロジェクトの生産性の違い。今、AIの文脈で語られてる「生産性向上」の多くは、個人の生産性の話をしてる。プロジェクト全体を見たときに、本当に生産性が上がってるのかという視点が抜けてることが少なくない。
ここで本来考えないといけないのは、個人の生産性を高めるアクションではなく、プロジェクト全体を見直すという大上段からの視点。個人が速くなっただけでは、プロジェクト全体は引き上がらない。
そもそも100本の記事を公開することが成果に紐づくのかという問いもあるけど、それは一旦脇に置くとして。
プロジェクト全体を引き上げるには、プロジェクトと組織の設計そのものを変える必要がある。ゴールを再設計し、そのゴールに対してプロジェクトをどう構成するか、組織をどう動かすか。そこまで踏み込まないと、個人の生産性向上が宙に浮いたまま終わる。
プロジェクトのあり方や組織のあり方にまで密接に関わる話。だからこそ、効率化だけを見ていてはたどり着けない領域がある。
レビューする人のリソースをどう確保するのか。入稿のプロセスをどう変えるのか。そもそもレビューや入稿というフロー自体をAIで再設計できないのか。そういった問いが出てきて初めて、プロジェクト全体の生産性が動き始める。
個人が速くなったことを「生産性が上がった」と言い切ってしまうと、プロジェクト全体のボトルネックが見えなくなる。そこが怖いところだと思ってる。
オウンドメディア黎明期に似てる
今の状況を見ていて、2013年頃のオウンドメディア黎明期にすごく似てるなと感じてる。
私がオウンドメディアに関わり始めたのがちょうどその頃。当時、とにかくみんなオウンドメディアを立ち上げた。「オウンドメディアをやらなきゃ」という空気感があって、あちこちで新しいメディアが生まれていった。
完全に手段が目的化していた。とにかくオウンドメディアに価値があるんだと、みんな立ち上げていった。コンテンツを作ること自体がゴールになり、そのメディアが経営にどういう価値をもたらすのかという問いは後回しにされていた。
結果、2年くらいで一気に閉じるところが増えた。理由はシンプルで、会社にとってあまり意味がないとなったから。コストだけがかかって、経営へのインパクトが見えない。そうなれば、続ける理由がなくなる。
逆に伸びていったのは、きちんと経営・事業に対して数値を残せているところか、またはそうでなくても価値があると判断された媒体だった。オウンドメディアという手段を使って、経営・事業目標に貢献できたところだけが生き残った。
オウンドメディアは真っ白なキャンバスみたいなもので、目的のために何を描くのか次第で、あらゆるものを変えていく必要があった。戦略も、体制も、KPIも、コンテンツの方向性も、全部が目的から逆算して決まる。キャンバスだから何でも描ける。でも、何でも描けるからこそ、目的がないと何も描けない。
AIも今、同じような状況にあると思う。
AIという真っ白なキャンバスを手にして、多くの人がまず「何ができるか」から入ってる。できることが多すぎるから、手近なところから使い始める。スライドが作れる、記事が書ける、サイトが作れる、業務が速くなる。それ自体は素晴らしいこと。
でも、「何ができるか」から入ると、手段が目的化する。オウンドメディア黎明期とまったく同じ構造。
時間削減が目立つのはとてもいいことだと思う。効率化の恩恵を否定するつもりは一切ない。ただ、それだけをやっていくことが全てじゃないし、マーケターなら本来の役割をもっと見てもいいのではないかと私は思う。
マーケターの本来の役割は、商売を成立させて拡大させること。AIという新しい道具を手にしたなら、その道具で効率化するだけじゃなく、その道具でどうやって商売を拡大させるのか。そこに目を向けたい。
オウンドメディアの時と同じで、2年後に「意味がなかった」とならないために。経営に対して数値を残せるプロジェクトであるために。ゴールの再設計から始めて、プロジェクトと組織のあり方まで踏み込んで考える。
効率化の先に、業績拡大という本来の目的がある。そこからブレないプロジェクトを、私は作っていきたいと思ってる。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
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著者
寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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寺倉 大史
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業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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