プロジェクトでAIを使っても、KPIだけはブラさない

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

生成AIをプロジェクトに導入すると、ほぼあらゆる業務に「改善の余地」が見えてきます。文章も、構成も、デザインも、資料も。「これにも使えそう」「あれも改善できそう」とメンバーが動き始めるのは、ごく自然なことです。

ただ、ある時気づきました。メンバーがそれぞれの方向にAIを使い始めると、「そもそも何のためにAIを使うのか」という問いが、いつの間にかどこかへいってしまう。

個人の生産性は確実に上がっている。なのに、プロジェクト全体の成果が思うように伸びない。

この現象に向き合い続けてきた中で、自分なりに整理できたことを書いてみます。

AIで「改善できること」が増えすぎる問題

あるメンバーがプレゼン資料のクオリティにこだわり始めたことがありました。AIを使えば、見た目も構成も文言も洗練されます。その体験が面白くて、どんどん深みにはまっていく。気持ちはよくわかります。

でも、立ち止まって考えると問いが出てきます。そのプレゼン資料のクオリティを上げることで、KPIはどれだけ動くのか。

私たちの場合、プレゼン資料はそれほど使いません。発表が必要ならサイトを作ってしまう方が早い。ではその時間を何に使うか、という話になります。

これは一例にすぎません。マーケターひとりをとっても、コンテンツ、広告文、レポート、提案書、メールの文面と、AIで磨ける対象はいくらでもあります。全部磨いていたら一日が終わります。

従来の仕事では、改善するにも時間とコストがかかりました。デザインの知識がなければ資料は直せないし、作り直す時間がなければ「これでいこう」という判断が自然に入っていた。AIはその摩擦をほぼ消してしまいます。コストが低いから、どこまでもやれてしまう。

「改善できる」が、いつの間にか「やるべき」にすり替わっていく。これは誰かの判断力の問題というより、AIを導入したプロジェクトで構造的に起きやすい現象なんだろうと感じています。

なぜプロジェクト成果につながらないのか

この現象が厄介なのは、一人ひとりは確かに成果を出しているように見えるところです。資料のクオリティは上がっている。メールの文面も洗練されている。レポートも見やすくなった。個人単位で見れば、全員が「良い仕事」をしています。

でも、プロジェクトの成果は個人の成果の足し算ではありません。

自分なりに振り返ると、ここには3つのずれがありました。

ひとつは、個人最適と全体最適のずれです。各自が自分の担当領域を磨くことに集中すると、プロジェクト全体として何に注力すべきかという視点が後回しになります。5人のメンバーが5つの方向に10倍速で走ったら、プロジェクトとしてはどこにも着きません。

ふたつめは、アウトプットの質と成果貢献度の混同です。資料の見た目が良くなることと、プロジェクトのKPIが動くことは、直結するとは限りません。クオリティが高いアウトプットを出していると「やっている感」は満たされますが、それが本当に成果につながっているかは、別の問いです。

3つめは、「忙しい=価値がある」という感覚です。AIで改善できる範囲が広がると、やることも際限なく増えます。全員が忙しく動いている。その忙しさ自体が「プロジェクトはうまくいっている」という空気をつくり、立ち止まって全体を見る機会が減っていきます。

この3つが重なると、「全員が一生懸命なのにプロジェクトの成果が変わらない」という状況が生まれます。私自身、まさにこの状態にいた時期がありました。

KPIを起点にした判断の仕方

ではどうするか。私がたどり着いたのは、KPIを起点に判断する、というやり方でした。

考え方はシンプルで、プロジェクトの最初にKPIを定め、あらゆるAI活用をそのKPIへの貢献度で見てみる。「このAIの使い方で、KPIはどれだけ動くのか」。この問いを、チームの共通言語にしていく、ということです。

私自身がやっていることを3つ紹介します。

KPIを「ひとつ」に絞る

複数のKPIを同時に追うと、メンバーごとに違うKPIを見て動き始めます。結局バラバラになる。まず最も重要なKPIをひとつ選び、それだけを全員で共有するようにしています。

クライアントワークでも、最近は最初に「まずKPIをひとつに絞りましょう」という話からしています。AIの話、ツールの話、施策の話は全部その後です。

「KPIにどれだけ効くか」で優先順位をつける

施策やAI活用のアイデアが出たときに、「それでKPIはどれくらい動くか」を問うようにしています。プレゼン資料を磨く話が出たら、「そこに時間を使ってKPIがどれだけ変わるか」を話す。

この問いが共有されていると、「じゃあ後回しにしよう」「そこじゃなくてこっちに時間を使おう」という判断が速くなります。

改善の余地があっても、KPIへの影響が小さいなら後回しにする。逆に、地味でも影響が大きいことから着手する。この判断軸があるだけで、だいぶ動きやすくなりました。

KPIから逆算して、施策を増やす

単一の施策を徹底するだけで成果が2倍・3倍になることは少ないです。組織の実行力が追いつかないこともあります。だからこそ新しい施策にも取り組む必要が出てきます。

ただ、その場合もまずKPIありきで逆算しています。「KPIをあと20%伸ばすには何が必要か」から考えて、足りない部分を埋める施策を選ぶ。

「AIで何ができるか」から考えるのではなく、「KPIを動かすために何をすべきか」から考え、その手段としてAIを使う。この順番を意識するようになってから、プロジェクト内のAI活用がだいぶ整理されてきました。

それでもKPIに固執しすぎない

ここまでKPIの話をしてきましたが、ひとつ補足しておきたいことがあります。

「KPIから考える」という思考パターン自体が、時間が経つと硬直化することがあります。KPIを守ることに集中するあまり、新しい可能性に気づけなくなるケースです。

たとえば、あるプロジェクトで「月間セッション数」をKPIにしていたとします。そのKPIに忠実に動いた結果、セッション数は伸びた。でも、コンバージョンにつながらないトラフィックばかりが増えていた、ということが起こりえます。

KPIを設定した時点の前提が変わっているのに、KPIだけをそのまま追い続けてしまう。私たちはこういう現象を「認知キャッシュ」と呼んでいます。過去の成功体験や判断基準が、状況が変わった後もそのまま残り続けて、ブレーキになる。KPIに限った話ではなく、あらゆる判断に潜んでいる現象です。

だから、KPIは定期的に問い直すようにしています。「このKPIは、まだプロジェクトのゴールと整合しているか」。この確認を怠ると、KPI自体が形骸化してしまう。

これが最終的な正解だとは思っていません。ただ、「なぜAIを使うのか」「何のためのプロジェクトか」という問いをブラさないこと。ここから始めるのが、今のところ一番しっくりきています。

この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。

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寺倉 大史

寺倉 大史

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業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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