「ジュニアはワークしない」と言われる時代に、ジュニアがワークした3つのケース
寺倉 大史
Director
記事をシェア
「ジュニアクラスは、もうワークしないんじゃないか」
ホワイトカラー領域で、こういう話を最近よく聞くようになった。海外では「AI新卒就職氷河期」なんてニュースも珍しくなくなってきたし、日本もそうなっていく気配がある。採用は特に難しくなっていくだろうと感じてる。
実際、この感覚はやってみるとすごく肌感として得られる。
AIは、活用する人の従来のポテンシャルをどこまでも飛躍させてくれるツールだ。そうなると、そもそもジュニアに一から教える必要はあるのか、組織を育てていく余裕があるのか、という問いにぶつかる。
組織を作ろうにも、特定の市場は恐ろしいスピードで回っていて、教育にかけるゆとりがどんどんなくなっている。
教育のためにAIを使ってもらっても、レビューが増えて従来よりもスピードが遅れてしまうことがある。また、ジュニアだけの話ではなく、プロフェッショナルな領域であっても、人が介在する数がプロジェクトのスピードをとにかく下げる。価値を提供できるフルスタックに成長していけなければ厳しい——そういう時代になりつつあると思う。
じゃあ、ジュニアクラスは本当にワークしないのか。
あくまで私たちのクラスの会社での話で申し訳ないが、突出してワークしたケースが3つほど紹介するとともに、それぞれのケースを振り返りながら、何が機能したのかを考えてみたい。
目次
ケース1: 別領域の開拓をフルで任せる
私はマーケティング全体を見ることが多いが、SNSは正直なところ得意とは言えない。動画を作ったり、どうプラットフォームごとにコミュニケーションを作ったり、伸ばしたり、計測して取りまとめたり。
展開したいのに、時間的な余裕がない。
そこで、ジュニアクラスのメンバーに自社アカウントとして、ちょっとした設計と、とてつもなく高い指標とKPIを渡してゴリゴリ自走してもらうことにした。AIの課金は自由にしていい。
TikTok、Instagram、YouTube——好きなだけ開拓してくれ、と。
ポイントは、私がレビューする必要がない領域を任せるということだった。自分の専門領域であれば、どうしてもレビューが発生する。でも、自分がそもそも得意じゃない領域なら、レビューのボトルネックが生まれない。助言やルールは随時出しつつ走ってもらい、それをその人自身のスペシャリティとして持ってもらう。
これはかなりワークしている実感がある。全部自分でやろうと思っていたところが、ガンガン開拓されていく。統合した計測ダッシュボードが作られ、生産量はみるみる増え、前日のデータを踏まえてPDCAが繰り返されていく。
何ができて、何ができないのかー。そこに多方面からアドバイスを行い、さらにアプローチを広げていく。
それらその過程で生まれたナレッジがチームに蓄積されていくので、次の展開がどんどんしやすくなっていく。
自分の領域外をまるごと渡す、という発想は一見リスクに見えるかもしれない。でも、自社での実験でありかつAIがある今の環境だと、そのリスクをかなり低く抑えながら、スピード感を持って領域を広げていける。
ジュニアだからこそ、既存のやり方に縛られず、新しい領域を素直に開拓できるという面もあると感じてる。
ケース2: プロフェッショナルの「認知キャッシュ」をクリアする
2つ目のケースは少し変わった話になる。
プロフェッショナルだから全て素晴らしいことができるわけではない——これはやってみての率直な所感だ。成果やアウトプットの責任をとって展開できることの素晴らしさはある。でも、従来のやり方に足を引っ張られてしまい、逆にスピードが出ないケースが結構多い。
たとえば、Aをして、Bをして、Cをして……という従来の流れをそのまま踏襲して1週間かけてしまう。「AとBとCを一気にやるには?」という発想がそもそも出てこない。できるできないの話ではなく、その発想自体が浮かばないということが起きる。
ホワイトペーパーのクオリティを上げたい、という議論をしている時に、「そもそもこのプロジェクトって、ホワイトペーパーがない方がよくない? 受注から逆算して考えると、AIでこういうの作ったら速いんじゃない?」という視点が出てこないことがある。
実際にあった話だが、半年ほど前、プロフェッショナルが2週間かかってもできなかったタスクがあった。それをジュニアのメンバーにトライさせたら、2日で終わった。しかも、プロフェッショナルが認めるクオリティのものが出てきた。
私たちはこれを「認知キャッシュ」と呼んでる。ブラウザのキャッシュのように、経験が貯まるといいことも起きるし、悪いことも起きる。それが人にもある。長年の経験で培った「こうやるものだ」という思い込みが、新しいやり方を見えなくしてしまう。
この認知キャッシュが悪い方向に出た時に、ジュニアメンバーに「認知キャッシュクリア」をしてもらうとうまくいくことがある。経験がないからこそ、固定観念に縛られない。「そもそもなんでこのやり方なんですか?」という素朴な問いが、プロジェクトを一気に前進させることがある。
ケース3: プロジェクトの完全サポーターとして入る
3つ目はシンプルだが、地味に効果が大きいケース。
AIベースでゴリゴリ環境を構築していっても、設定まわりでちょっと時間がかかりそうなことは往々にして発生する。最終的な確認作業にも時間がかかる。こういった部分に、サポーターとしてジュニアメンバーに入ってもらう。
AIをベースに作ってもらったり、確認作業を担ってもらったり。プロジェクトのメインラインを止めずに、周辺のタスクを並行して進めてもらう。
これは華やかさはないが、プロジェクト全体のスピードを上げるという意味ではかなり効いてくる。大事なのは、明確な業務の棲み分け、メインとサポートを分けて、役割を徹底する。
これでメインで動いている人が、細かいタスクに時間を取られずに本質的な部分に集中できるようになる。
3つのケースから見えてきたこと
この3つのケースに共通しているのは、「従来の教育・育成の枠組みでジュニアをあまり捉えていない」ということだと思う。
一から手取り足取り教えて、徐々にレベルアップしていってもらう——という従来のモデルでは、確かにジュニアはワークしにくい。レビューが増え、スピードが落ち、プロジェクトの足を引っ張ることになりかねない。
本来きちんと育てる必要がある、ただし、その余力を用いる余裕はない。
でも、別領域の開拓、認知キャッシュのクリア、完全サポート。この3つは、いずれも「教育」ではなく「活躍の場を設計する」という発想で動いている。
しかも、こうした活躍の場でワークしていってもらう中で、メンバーの学びがガンガン増えて、結果としてとにかく成長していっているところがある。教育を目的にしなくても、適切な場と役割があれば、人は勝手に育っていく。
世界最先端の企業がやっていることをそのまま適応しても戦えないところがある。ただし、私たちも最速でそっちに向かわないといけない。だからこそ、全員が活躍できる場をどう作るのか——これはとにかくしこたま考えないといけないことだと私は思ってる。
結局、マインドが全てだった
ただ、やってみてわかったことだが、マインドが合っていなかったら、プロフェッショナルだろうがジュニアだろうが、そして私自身だろうが、いらなくなる。
とにかく物事を吸収していく強さ。苦手や得意を見ずに突っ走れる素直さ。ガンガン前に進んでいく勢い。そして、プロジェクトに貢献するために自分自身を高め続けようと思えること。
これらがなければ、どんな人材でも価値を発揮できないということが、ひしひしと目に見えるようになった気がする。
たとえば、規模もスピードも求められるプロジェクトで、いくら認識を合わせようとしても、自分のプライドやこだわりに依存してしまうと、そこに価値が発揮されるところもあれど、プロジェクト単位でどうしてもしんどくなってしまう。
ジュニアメンバーがワークする姿を見て、どちらかというと、私や他のプロフェッショナルの方が身が引き締まった。経験があるから価値がある、その側面だけを見てればいいというわけではないからだ。
経験があっても、吸収し続け、変化し続けなければ先はない。それは脅しではなく、目の前で実際に起きていることだった。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
カテゴリ
コラムタグ
記事をシェア
著者
寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
詳細を見る


寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
詳細を見る
関連記事
SaaS is Deadの前に、Agency is Brokenについて語らないか
マーケターの「AI使えない」は、ただ任せているだけが多い
AIで自社ツール作成における数多くの失敗談と、今の私たちの最適解
「Claude Codeの良さがわからない」という人に伝えたいこと
「それ、サムアルトマンに言えるのかよ」を合言葉にしたらAI推進が加速した話
今のAIの広がり方は、オウンドメディア黎明期に似ている
非エンジニア組織の私たちが、Claude Codeに一本化する理由
書けなくても語れる。「カンバライティング」で非ライターから記事が上がり始めた
誰もピンと来なかった「セッション共有」が、AI時代のマネジメントを変えるかもしれない
毎月10本公開するメディア、100本作れるようになったら生産性は何倍か
ご相談・お問い合わせ
KAAANへのご相談やお問い合わせを承ります。事業成長を実現するための最適な解決策をご提案いたします。
会社案内資料
KAAANの会社案内をダウンロードいただけます。サイトグロースで事業成長を実現する支援内容をご紹介します。