マーケターの「AI使えない」は、ただ任せているだけが多い

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

「AIを使ってみたけど、結局使えなかった」

この言葉を、今もなお本当によく聞く。

社内でAIの話をした時にも、「AIを使えば同じ結論になっていく」とか「AIの判断やアウトプットはまだまだ自分でやった方がいい」とか、どこかAI否定論が漂うような会話が行われることがある。

気持ちはわかるのは、私も同じ思考になっていた時期があったから。

ただ、ある時から気づいたことがある。「AI使えない」となる思考の多くは、AIに自分自身を再現させようとしているのではなく、ただ漠然と任せているだけなんじゃないかと。

この記事は「AIを使え」という話ではない。使わなくても成果が出ているなら、それでいい。

ただ、「任せる」と「再現させる」の違いを知っているかどうかで、AIとの付き合い方が根本から変わるんじゃないか?というお話です。

同じことをしているのに、なぜここまで差が出るのか

以前、ある類似した業務を行っているA社とB社に対して、特定形式のインタビューコンテンツをAIで自動化するのはどうかと提案したことがある。

類似するパターンがあるコンテンツだったし、そのプロセスは作れると思ったからだ。もちろん、人のレビューは必ず必要。それは大前提として。

結果、A社は改良を繰り返し、今ではほぼ完全自動化できている。レビューコストもほぼかからなくなってきた。

一方でB社は「AIっぽい文章になる」「AIにこのヒアリングはできない」「AIは私のようにはできない」となって、当時否定的だった。

どちらがいい悪いという話ではない。ただ、客観的に見て、類似しているケースなのに、なぜここまで差が出てしまうのか。

その問いに向き合った時、大きな違いに気づいた。

B社は「AIがなんでもしてくれる、だから任せても求めてるものは出ない」と考えていた。

A社は「AIに従来の業務をどう再現させるのか」と考えていた。

たったこれだけの違い。でも、この違いが結果を大きく分けた。

A社も最初は「AIに任せたところでうまくいくのか?」という温度感だった。

ただ、任せるのでなく、求めているクオリティに達するために、自身をどうAIで再現するのか?という視点にA社は立てた。B社は、丸投げして「AIっぽい文章が出てきた」「自分が求めているクオリティじゃない」と感じた。

再現するのに、それが一つのプロンプトで、雑なデータで、やれるわけがない。AI否定寄りの思考が、そこから先の工夫を止めてしまっていたんだと思う。

非定型業務をAIに丸投げしても、うまくいくことは稀

そもそも論として、非定型業務、つまり属人的な業務をAIに任せて、自動出力で素晴らしいものが出来上がることは稀だ。

戦略や意思決定、クリエイティブ、あらゆるものがそうだ。

プロフェッショナルであればあるほど、AIのアウトプットは自分が求めるものから程遠くなる。理由はシンプルで、AIが推論する幅が広すぎるからだと思っている。

何も制約を与えずに「カスタマージャーニーマップを作って」と言えば、AIは無数の可能性の中から「それっぽいもの」を出す。

でも、それは私のカスタマージャーニーマップではない。私の経験、私の判断基準、私のプロセスが反映されていない、ただの一般的なアウトプットだ。

だから「使えない」と感じる。当たり前の話だと思う。

じゃあどうすればいいのか。私がやっているのは、自分自身をどうAIに再現させるかを徹底的に詰めること。これに尽きる、そう今は思っている。

自分のプロセスを整理するところから始める

具体例を一つ挙げる。

私は昨年5月頃から、カスタマージャーニーマップの作成を完全に自動化している。

カスタマージャーニーマップと一口に言っても、目的が違えば作り方も変わるし、購買行動プロセスもペルソナによって変わる。意図や戦略によっては内容がガラリと変わる。

同じカスタマージャーニーマップでも、ブランドや攻め方、状況、フェーズが違えば全然違うものになる。超属人的なアウトプットだ。

これをどうやって自動化したか。

まず、自分が普段どういうプロセスでカスタマージャーニーマップを作っているかを整理するところからスタートした。

対象ブランドの調査、ターゲティング、競合調査、ポジショニング、ペルソナ。こういった順を追って、特定のロジックに沿ってカスタマージャーニーを作成していた。

そして、どういう情報を用いていたか。競合のサイト調査、市場調査、顧客情報など。

大事なのはここからだ。

私は雑なデータをもとにポンとカスタマージャーニーマップを作っていたわけじゃない。情報を整理し、一つ一つのプロセスにこだわりを持ってアウトプットして、次のプロセスへ。

これを連続的に行うことで、自分自身の推論の幅を狭めていた。「だからこのカスタマージャーニーマップになる」ということを、プロセスの積み重ねで導いていた。

このプロセスをそのままAIに移せばいい。そう気づいてから、全てではないものの、非定型業務を自動化することを繰り返すようになった。

推論の幅を狭めるプロセスを、そのままAIに移す

具体的には、プロンプトチェーンという手法を使った。

一つのプロンプトで全部やらせるのではなく、複数のプロンプトを連続的に自動実行する。

ブランド調査、ターゲティング、競合調査・分析、ポジショニング、ペルソナ、カスタマージャーニー。私がやっていたのと同じ順番で、一つずつ丁寧にアウトプットさせていく。

各ステップで推論の幅が狭まっていくから、最終的なカスタマージャーニーマップは、私が求めるクオリティに近づいていく。

最初の作り込みには3日くらいかけた。慣れていなかったから。

そこから精度が80点くらいのものを、どう95点にするか。あらゆるパターンに対応できない時に、どう対応させていくか。チューニングを繰り返した。

結果、今では特定の情報をサクッと入れれば、15分もあればデータの収集からあらゆる情報の整理、そして求めているカスタマージャーニーマップまで出来上がるようになった。

使えば使うほど、生産性は上がる

例えば、AIを使わなかった時はカスタマージャーニーを丸2日かけて作っていたとしたら、10回目も2日かけることになる。

ただ、自身を再現して、初回に今まで以上に時間をかけて仕組みを作る。1回目は3日かかったとしても、2回目は3時間になる。10回目には15分になる。

使えば使うほど精度が上がり、生産性が上がっていく。

非定型業務の中でも、何度も繰り返し行う業務は特に効果的だ。カスタマージャーニーマップもそうだし、コンテンツ制作、提案書、LPO改善提案など、パターンはあるけど毎回内容が違うという類のもの。

こういう業務に対して、自分のプロセスを一度再現してしまえば、あとはどんどん良くなっていく。

やればやるだけ生産性が上がるので、常にもう1ヶ月前には戻れない...という状態になり続けることが今は正常な状態だと思う。

できないと思うなら、できていることから再現すればいい

「AI使えない」と感じる気持ちは否定しない。

でも、AIっぽい文章になってしまう理由はなんなのか。自分のアウトプットと何が違うのか。そこを考えた方がいいと私は思ってる。

AIに任せてうまくいくわけがない。それはその通りだ。

でも、自分が日々やっていること、自分ができていることであれば、ガンガン再現していけばいい。

自分のプロセスを整理して、どういう順番で、どういう情報を使って、何を判断して、どうアウトプットしているか。それをAIに渡せるように言語化する。

やってみると気づくけど、これは「AIのスキル」の問題じゃない。「自分自身のプロセスをどれだけ理解しているか」の問題だ。

プロフェッショナルとして長年培ってきた判断基準やプロセスは、自分の中にある。ただ、それが暗黙知のままになっている。

暗黙知を形式知にする。そしてAIに再現させる。それだけの話で、この視点があるかないかで、AIとの付き合い方がまるで変わってくるように思う。

もしAIは...となるなら、まずは再現から始めてみる。それだけで、AIとの付き合い方は大きく変わるんじゃないだろうか。

この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。

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コラム

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AI

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寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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