書けなくても語れる。「カンバライティング」で非ライターから記事が上がり始めた
語れるけど、書けない。
組織の中には、こういう人がたくさんいると思います。クライアントの前では的確に話せる。メンバーへのフィードバックは的を射ている。ミーティングでは鋭い視点を出せる。でも、「それ記事にしてください」と言われると手が止まる。
これは能力の問題ではありません。語ることと書くことは、まったく別のスキルです。
私たちの会社でも同じ状況がありました。一番価値のある知見を持っている人が、一番コンテンツを作れない。頭の中には伝えるべきことが詰まっているのに、それが形にならない。
この問題に対して、「ライターを雇う」「書き方を教える」ではない解決策を探してきた中で生まれたのが、カンバライティングという仕組みです。
目次
カンバライティングとは何か
「カンバライティング」は、私たちが社内で使い始めた言葉です。
カンバセーション(会話)+ ライティング。語れる人がAIと会話しながら記事を作る仕組み。それがカンバライティングです。
「会話しながら書く」とはどういうことか
従来のライティングは、白紙に向かって一人で文章を組み立てる作業でした。テーマを決め、構成を考え、一文ずつ書いていく。これが「書ける人」しかコンテンツを作れない構造を生んでいた。
カンバライティングでは、語れる人がAIと対話しながらコンテンツを形にしていきます。「私たちはこういう課題に対してこうアプローチした」「ここが難しかったけど、こう乗り越えた」——そうやって会話の中で語った内容を、AIが文章として構造化する。
ピカソの「何を描きたいかは、描きはじめてみなければわからない」という言葉がありますが、カンバライティングもそれに近い。テーマを事前に決める必要がない。原稿を1文字も書く必要がない。会話から始めて、対話の中で思考が整理されていき、気づいたらコンテンツになっている。
重要なのは、書く力ではなく語る力であるということです。自分の経験と知見に基づいて「私はこう考えている」と言える人が、会話を通じてそのままコンテンツを生み出せる。取材で聞いた話を代筆するのとは、根本的に質が違います。
暗黙知が形式知になる
カンバライティングのもう一つの本質は、暗黙知の形式知化です。
現場のプロが持っている知見の多くは、暗黙知として頭の中に眠っています。本人ですら「自分が何を知っているか」を正確に把握できていないことが多い。
AIとの会話は、この暗黙知を引き出す装置として機能します。AIが60点の回答を出す。それに対して「いや、それは違う。私の経験ではこうだ」とフィードバックする。この「違う」と感じる瞬間に、暗黙知が言語化される。未経験者に教えるような感覚で話しているうちに、自分でも気づいていなかった知見が形になっていく。
これは単なる「効率化」ではなく「変換」の話です。今まで個人の頭の中にしかなかったものが、組織の資産になる。
なぜ「会話」が鍵なのか
「語れる人が書けない」問題に対して、従来の解決策は2つしかありませんでした。
1つ目は、語れる人に「書くスキル」を身につけてもらうこと。しかし、これは時間がかかりますし、そもそも書くことが業務の中心ではない人に強いるのは合理的ではありません。
2つ目は、ライターが取材して代筆すること。しかし、先述のとおり、取材では一次情報の深い部分が引き出しきれません。
会話というフォーマットは、この2つの制約を同時に解消します。語れる人は、文章を書くのは苦手でも、話すことはできる。そしてAIとの会話は、取材とは違って「聞かれていないけど大事なこと」も自然に出てくる。
私自身を振り返ってみても、暗黙知が言語化される瞬間は、いつも対話の中でした。クライアントからの質問に答えるとき、メンバーにフィードバックするとき。一人で書こうとしても出てこないものが、会話の中では自然に出てくる。カンバライティングは、この「対話で思考が引き出される」構造をAIとの間で再現している仕組みです。
ただし、ここで私たちが強調しておきたいのは、AIが担うのは「文章化」であって「思考」ではないということです。
AIが担うのは「文章化」であり「思考」ではない
AIライティングに対する懸念の多くは、「AIが考えた内容」が量産されることへの不安です。この懸念は正当だと私たちも考えています。
「思考」と「文章化」は別の工程
コンテンツを作るプロセスには、大きく2つの工程があります。
1つ目は「何を伝えるか」を考える工程です。テーマの選定、主張の決定、論点の整理、具体例の選択。これは思考の工程であり、書き手の経験・知見・判断が必要です。
2つ目は「どう伝えるか」を形にする工程です。文章の構成、段落の分け方、表現の選択、読みやすさの調整。これは文章化の工程であり、技術的なスキルが求められます。
カンバライティングでは、1つ目を人間が担い、2つ目をAIが担います。
なぜこの切り分けが重要なのか
AIに「この業界の課題について記事を書いて」と丸投げすれば、それらしい記事は出てきます。しかし、そこには書き手の一次情報がありません。AIが学習データから再構成した「一般論」になります。
一方で、「私たちはこの課題に対して、一般的なアプローチとは違うやり方をしている。その理由は3つあって......」という思考を先に整理した上で、AIに文章化を依頼すると、出てくるコンテンツの質がまるで違います。
同じAIを使っていても、入力する思考の質で出力が変わる。これは、AIが思考を代替しているのではなく、思考を文章に変換しているだけだという証拠です。
私たちの社内でも、「私たちはAIの専門家ではなく、マーケティングの専門家であって、必要なためにAIを活用している」という認識を共有しています。AIは手段であり、価値の源泉はあくまで現場の知見です。
社内で試行錯誤している具体的プロセス
カンバライティングは、まだ完成した仕組みではありません。私たちが社内で試行錯誤しながら組み立てているプロセスの現在地を共有します。
カンバライティングの具体的な流れ
カンバライティングのプロセスはシンプルです。
まず、AIと会話を始める。 テーマが決まっている必要はない。「最近こういうことを考えている」「この案件でこういうことが起きた」程度で十分です。AIが質問を返してくるので、それに答えていく。
次に、AIの回答にフィードバックする。 AIが出す内容は60点です。「いや、それは違う」「実際にはこうだった」「ここが抜けている」と返す。この工程で暗黙知が言語化されていく。新人に教えるような感覚でやるとうまくいく。
思考がまとまってきたら、まとめを依頼する。 「これまでの会話をもとに内容をまとめてください」と指示する。ここでAIが会話全体を構造化してくれる。
最後に、品質基準に沿って整形する。 トーン、構成、フォーマット。あらかじめ定義しておいたルールに従ってコンテンツを仕上げる。
このプロセス全体が、短いもので5〜15分、しっかり深掘りしても30〜60分で完了します。
加えて、私たちが組織として取り組んでいるのは、日常業務のデータをインプットとして活用するアプローチです。ミーティングの議事録、プロジェクトの設計書。日々の業務の中で自然に生まれる情報が、コンテンツの原料になる。わざわざ執筆のために時間を取る必要がない仕組みです。
品質の段階的向上
カンバライティングで最初に作られるコンテンツは、正直なところ、完璧ではありません。
私たちはこれを「0点から50点、50点から75点へ」というステップで捉えています。
AIが生成した最初のドラフトが50点だとします。一般的なAIライティングの問題は、この50点をそのまま公開してしまうことです。あるいは、50点に不満を感じて「やはりAIでは無理だ」と諦めてしまうこと。
私たちが重視しているのは、50点を75点に引き上げるプロセスです。語れる人が、AIが生成したドラフトを読み、「ここは違う」「これは足りない」「この表現は自分たちの考え方と合わない」と修正を加える。この修正プロセスこそが、コンテンツに一次情報と独自の視点を注入する工程です。
そして、この修正のパターンが蓄積されていくと、AIのドラフトの精度が上がっていく。50点が60点になり、65点になり、やがて初期ドラフトの品質自体が向上する。成長する過程に価値がある仕組みです。
ライティングパイプラインの設計
現在、私たちが構築を進めているのは、このプロセス全体を自動化するパイプラインです。
インプットデータの収集、構造化、AIによるドラフト生成、品質チェック、レビュー、修正、公開。これらの工程を、できるだけ人の手を介さずに流れるようにする。ただし、「思考」の部分は必ず人間が担う設計にしている。
具体的には、プロンプトの構築、品質基準の設計、レビューの仕組みづくりを同時に進めています。プロンプトは、単に「記事を書いて」ではなく、インプットデータから何をどう抽出し、どういう構成で、どういうトーンで文章化するかを細かく定義しています。
この仕組みが整ってくると、「書ける人」を増やさなくても、「語れる人」がそのままコンテンツを生み出せるようになります。
導入してみて起きていること
カンバライティングは構想段階の話ではありません。私たちは実際に社内外で導入を進めてきました。そこで起きていることを、正直に共有します。
非ライターから記事がどんどん上がる
一番大きな変化は、これまで記事を書いたことがなかった人たちから、コンテンツが上がるようになったことです。
コンサルタント、プランナー、マネージャー。「書けない」と思っていた人たちが、AIとの会話を通じて自分の知見を記事にできるようになった。企画の相談をしている感覚で話しているうちに、気づいたらドラフトができている。そういう世界が、少しずつ現実になり始めています。
見えてきた課題:ルールの必要性
ただし、非ライターから記事が上がるようになると、別の課題が見えてきます。
企画の設計をどうするか。 何をテーマにするか、どういう角度で切るか、読者にとっての価値は何か。ライターなら暗黙的に持っている企画力を、どう仕組みとして補うか。
ジュニアとシニアの差をどう扱うか。 経験の浅いメンバーが語る内容と、10年選手が語る内容では、一次情報の厚みが違う。その差をどう品質に反映させるか。一律に同じプロセスでいいのか。
会社として出すなら、どこまで統一するか。 トーン、主張の方向性、使ってはいけない表現。個人の語りを活かしつつ、企業のコンテンツとして成立させるためのガードレールが必要になる。
これらは、カンバライティングが「うまくいき始めたからこそ」出てくる課題です。仕組みが回り始めると、品質管理の仕組みも同時に必要になる。
それでも、違う世界線が生まれている実感がある
課題は山積みです。でも、私たちはこの方向に手応えを感じています。
なぜなら、「コンテンツが出ない」という問題が、「コンテンツの質をどう上げるか」という問題に変わったからです。これは、本質的にフェーズが進んでいる。ゼロをイチにする段階は超えて、イチをどう磨くかという段階に入った。
非ライターが自分の言葉でコンテンツを作り、それが読者に届く。今までのコンテンツマーケティングの常識とは違う世界線が、少しずつ立ち上がり始めています。
0点を50点にすることの価値
カンバライティングの話をすると、「でも結局、品質が低いんじゃないか」という反応をいただくことがあります。
これに対する私たちの考えを正直に共有します。
出ないコンテンツより、出るコンテンツ
多くの企業で起きている現実は、「完璧なコンテンツを目指して、結局何も出ない」です。
忙しいコンサルタントに執筆を依頼しても、優先順位は下がり続ける。外部ライターに依頼しても、一次情報が薄くて差別化できない。記事企画だけが溜まっていく。
カンバライティングの最大の価値は、「出なかったものが出るようになる」ことです。
0点とは、コンテンツが存在しない状態です。存在しないコンテンツは、どれだけ高い品質を想定していても、読者に届くことはありません。50点でも形になれば、そこからフィードバックが得られる。75点まで磨けば、十分に読者の役に立つ。
量と質のバランスは変えられる
「量を重視すると質が落ちる」という懸念は理解できます。しかし、カンバライティングの構造では、量を増やしても質を維持できる仕組みを目指しています。
なぜなら、品質を担保しているのはAIの文章力ではなく、語れる人の思考だからです。思考の質が高ければ、AIが文章化したコンテンツも質が高くなる。そして、レビューと修正のプロセスが仕組み化されていれば、一定の品質基準を下回るコンテンツが世に出ることはありません。
私たちも、まだ試行錯誤の最中です。うまくいっている部分もあれば、課題も多くあります。ただ、この方向性には手応えを感じています。
最後に
「AIでコンテンツを効率化する」という話は、もはや珍しくありません。しかし、効率化の先に何を作るのかは、まだ多くの企業が模索している段階だと感じています。
私たちが考えるカンバライティングは、AIを「ライターの代わり」ではなく「語れる人の会話相手」として位置づける仕組みです。
- ボトルネックの再定義 -- 「書ける人の不足」ではなく「語れる人が書けない」問題に目を向ける
- 会話というフォーマット -- 書けなくても語れる。会話を通じてAIが文章化する
- 仕組みとしての設計 -- 個人の努力ではなく、プロセス全体を設計して解決する
まだ完成形ではありませんが、知見を積極的に公開していこうと考えています。同じ課題を抱えている方にとって、何かしらのヒントになれば幸いです。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
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