SaaS is Deadの前に、Agency is Brokenについて語らないか

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

「SaaS is Dead」という主語が大きい言葉が一人歩きしてあらゆる議論が行われるシーンに今もなおよく出会う。

でも私はずっと引っかかってることがある。その話をする前に、Agency is Brokenを語った方がよくないか、と。

実際にもう潰れていったAgencyがある。ニュースにもなってる。そしてそっちの方が、これからもっと増えていくんじゃないかと思ってる。

この記事は「Agencyはもう終わりだ」と煽りたいわけじゃない。

私自身がマーケティングエージェンシーをやっている立場で、今何が起きていて、この先どうなりそうかを、あくまで個人的な考えとして整理してみたもの。

3つのフェーズに分けて、自分なりに構造を捉えてみた。

第一フェーズ——「作れる」の価値がなくなる

今起きているのは、まさにこの第一フェーズだと思ってる。

世の中の話題の多くは「これができるようになった」という話ばかり。AIを使って記事が作れる。サイトが作れる。スライドが作れる。SNSの投稿が量産できる。こういう煽りが本当に増えた。

毎日のようにタイムラインに流れてくる。「AIでこんなすごいものが作れた」「自然言語でここまでできる」「プロンプト一発でこのクオリティ」。そういう空気が蔓延してる。

それによって何が起きるかというと、エージェンシーサイドがどれだけすごい制作力を持っていても、クライアントが「これ、自分でもできるんじゃないか」と思って自分でやり始める。

そうすると、当然だけど仕事が来なくなる。何かを「作れる」というところに価値がなくなっていく。

ここで一回立ち止まって考えたい。

素晴らしいサイトが作れた。だからなんだよ。すごいコンテンツが作れた。だからなんだよ。スライドがクオリティ高く作れるようになった。だからそれで売上がどれだけ上がったんだよ。

作ることは、イコールとして目的を満たすことじゃない。

もともと、求められている目的・目標をどこが満たせるのかという戦いは従来から行われてきた。ただ、どちらかというと「作れる」こと自体にも価値があった時代だったと思う。

綺麗なサイトを作れること、質の高いコンテンツを量産できること、それ自体が差別化になっていた。でもAIの登場によって、その部分の価値が急速に失われつつあるように感じる。

特に定型業務寄りの制作を中心にやってきたところは、もう相当苦しくなってる。テンプレート的にサイトを量産する、決まったフォーマットで記事を書く、そういう業務を主軸にしてきたエージェンシーは実際に潰れていってるし、これからもっと加速すると思う。

マーケティング支援会社である私の立場で言えば、効率化しましたじゃ話にならない。どれだけ業績を上げたのか。クライアントの売上にどれだけ貢献したのか。そこを当たり前の価値提供として持っていかないといけない。効率化は手段であって、価値じゃない。

これが第一フェーズの現実。「作れる」が価値だった時代が終わり、「目的を達成できるか」だけが問われる時代に入ってると感じる。

第二フェーズ——支援領域をどこまで広げられるか

目的達成が価値の中心になると、次に来るのは「その価値をどの領域まで広げられるか」という戦い。

目的をガンガン達成しようとすると、壁にぶつかる。さまざまなパートナーと手を組んで進行するのは、マジでスピードが落ちるということ。

プロジェクト推進に関わる人の数は、ダイレクトにプロジェクトスピードに影響する。関係者が増えれば増えるほど、合意形成に時間がかかり、意思決定が遅れ、実行までのリードタイムが伸びる。これはどのプロジェクトでも経験したことがあるんじゃないかと思う。

だから、その範囲を自社内で、とにかく少数でできるような状況が求められるようになる。かつ、さらなる価値提供も同時に求められる。この二つの要求が同時にやってくる。

すると、単体の支援領域だけをやるのはどんどん不要になっていくと私は考えてる。

第一フェーズでは、どちらかというと職種の制限をなくすことが求められた。デザイナーがコードも書く、マーケターがクリエイティブも作る、そういう話。第二フェーズからは、それが領域そのものの拡張に変わる。

たとえば、マーケティング支援会社が手段としてサイト制作をやる。アプリ開発もやる。転職斡旋もやる。組織開発もやる。ブランディングもやる。セールスもやる。

一見すると無茶苦茶に聞こえるかもしれない。でも、じゃないと価値提供を広げられない。クライアントの目的を達成するために必要なことが、マーケティングの枠を超えてるケースなんていくらでもある。

できるできないの論は一旦置いておいて、あらゆる作り込まれたAIエージェントを自走させられる今となっては、そのハードルは一気に下がってる。

以前なら、新しい領域に参入するには専門人材を採用して、ナレッジを蓄積して、実績を作ってみたいなステップが必要だった。それが今は、AIエージェントという形で専門知識を実装し、少人数のチームで回すことが現実的になりつつある。

もちろん、まだ完璧じゃない。でも方向性としてはそっちに向かってるし、スピードは加速してる。

第三フェーズ——SaaSとAgencyの垣根が消える

今、SaaS(という区分が適切ではないと思うが一旦)とエージェンシーはくっきり分かれてる。プロダクトを提供する会社と、サービスを提供する会社。ビジネスモデルも違えば、組織構造も違う。

でもその境界線が、なくなっていくんじゃないかと思ってる。

そんな簡単じゃないのは十分承知の上で。でもイメージとしては、たとえばfreeeに会計コンサルティングチームができるとか、全然あり得ると思う。合併すればいい。

逆もある。会計コンサルティングチームが、freeeの器を使ってガンガン広げていく開発をしていくパターン。コンサルティングの知見をプロダクトに落とし込んで、そのプロダクトがさらにコンサルティングの価値を高めて、みたいな循環が生まれる。

そういうことが、小さくとも大きくとも、ガンガン発生するようになると思う。そしてそれが容易になっていってる。AIの力を借りれば、プロダクト開発のハードルは下がるし、サービスの品質を仕組みで担保することもできるようになっていくから。

価値提供を広げ、ガンガン先に進もうとすると、そうなっていくのは自然な流れだと私は考えてる。

SaaS、事業、Agencyといった垣根がどんどん消えていく。そうなったら、Agencyだけでやるっていうのは不要になっていくところが多く出てくるはず。

正直、第三フェーズはすでに多くの企業で動いているところをちらほら見る。境界線を超え始めてる企業は既に出てきてる。まだ主流じゃないだけで、動いてるところは動いてる。

天下一武道会の予選が始まった

昨年、DeNAの南場さんが「10人でユニコーンを作る」と言った。

聞いた時は正直ポカーンとしてた。10人でユニコーン?何を言ってるんだろう、と。

でも今になって、あの言葉の聞こえ方が変わった。10人が最小単位じゃなくて、最大単位で10人って言ってたように聞こえるようになった。つまり、10人「も」いればユニコーンが作れる時代がくるということ。それが現実味を帯びてきてる。

昨年、この先3年間のアメリカと日本のAI普及率のシミュレーションを自分で作ってみた。未来予測を数字に落として、どのタイミングでどれくらい普及するのかを見積もった。

もうかなり外れてる。

2025年4月くらいから本格的にやり始めた時は、マジでやばいなとなった。AI活用が実務に入り込んでくるスピードに焦りを感じた。でもそのあと、徐々に「思ったより日本は全然進んでないな」となった時期もあった。企業の導入は遅いし、個人利用も限定的だし、と。

それがまた一気に急加速してる感がすごい。波が来ては引いて、でも次の波は前より大きくて、みたいな感覚。しかも波の間隔がどんどん短くなってる。

こんな記事を書いている私自身も、この先のフェーズを見ながら震えてたりする。明日は我が身感がある。第一フェーズで他のエージェンシーに起きてることが、いつ自分に起きてもおかしくないと思ってる。

ただ、今の私の感覚は、天下一武道会の予選に出てるようなもの。

今はマーケティングエージェンシー部門。そこで淘汰が起きてる。予選を勝ち上がれるかどうかの戦い。

勝ち上がるために、どこまでAIを使えるのか。どこまで私が信じてきた価値観を大事にできるのか。どこまで時間とトークンを溶かせるのか。

トーナメント形式の戦いに、遊び心を持ちつつ臨む。とにかく価値提供をぶらさず突き進む。追求する。

具体的に考えてることがある。

半年で1億円の売上をつくった。そのプロジェクトを、1ヶ月で3億円にするにはどうするか。

プロモーションの準備で3ヶ月かかって、利益が5000万円出た。そのプロジェクトを、2週間で1億円にするにはどうするか。

こういう問いを自分に投げ続けてる。スケールの話じゃなくて、密度の話。同じ成果をどれだけ短い期間で出せるか。あるいは同じ期間でどれだけ大きな成果を出せるか。AIがその密度を引き上げる武器になるなら、徹底的に使い倒す。

まずは第一フェーズ、予選を勝ち切ろうというのが今考えてるところ。

Agency is Brokenという現実はある。でも私は、生存戦略をとるよりも、発展して価値提供をどこまで伸ばせるのかを重視して戦おうと思ってる。守りに入って延命するんじゃなくて、攻めて価値を広げる。

ピリピリしながらも、すげえ今楽しい。

この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。

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コラム

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AI

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寺倉 大史

寺倉 大史

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業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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