今のAIの広がり方は、オウンドメディア黎明期に似ている

寺倉 大史
Director寺倉 大史

今のAIの広がり方を見ていると、既視感があります。

2013年頃のオウンドメディア黎明期。あの頃の熱狂と、今のAIをめぐる動きが、どこか重なって見えるんです。

私がオウンドメディアに関わり始めたのは、まさにその頃でした。あれから10年以上が経った今でも、オウンドメディアに関わり続けています。幅は広がったけれど、私の原点だったりするので、今でもよくウォッチしている領域です。

だからこそ、今のAIをめぐる状況に対して、同じ構造を感じてしまう。

オウンドメディア黎明期に何が起きたか

2013年頃、オウンドメディアはものすごく盛り上がりました。

「これからはオウンドメディアの時代だ」「自社メディアを持つべきだ」「コンテンツマーケティングが来る」

こぞってみんなオウンドメディアを立ち上げた。大企業も、中小企業も。国内のあらゆる業界で、オウンドメディアが生まれました。

でも、2年くらい経つと、閉じるメディアが続出しました。

なぜか。

何の価値につながっているのか、わからなかったからです。

「とりあえず立ち上げた」「記事を量産した」「PVは増えた」。でも、それが売上にどうつながっているのか。事業にどう貢献しているのか。説明できない。

経営層から「これ、意味あるの?」と聞かれて、答えられない。予算が削られる。人が減る。更新が止まる。閉鎖。

このパターンを、何度も見てきました。

残ったメディアは何が違ったのか

一方で、今も続いているオウンドメディアもたくさんあります。10年以上経った今でも、事業に貢献し続けているメディア。リードを生み出し、売上につなげ、採用を支え、ブランドを作っているメディア。

何が違ったのか。

「これが何の価値につながるのか」を、立ち上げる前から考え抜いていたかどうかです。

残ったメディアには、「このメディアは事業の中でこういう役割を果たす」という定義があった。立ち上げる前から、事業のどこに効かせるのかが決まっていた。だから、数字が伸びなくても「何のためにやっているか」が明確だし、打ち手も判断できる。

逆に「なんかオウンドメディアが流行ってるからうちもやろう」で始めたメディアは、PVが増えても「で?」という状態になる。メディアを持つこと自体が目的になってしまっている。

流れに乗って立ち上げたメディアと、事業における役割を定義して立ち上げたメディア。この差が、2年後、5年後、10年後の明暗を分けました。

「手段が目的になる」という落とし穴

ここで起きていたのは、手段と目的の逆転です。

本来、オウンドメディアは手段です。リードを獲得するための手段。ブランドを構築するための手段。何かしらのビジネス上の目的があって、その手段としてオウンドメディアがある。

でも、ブームが来ると、順番がひっくり返ります。

「オウンドメディアを立ち上げる」こと自体が目的になる。それらしい理由は後からつける。「まずは立ち上げよう」「走りながら考えよう」。

立ち上げることがゴールになっているから、立ち上げた瞬間に達成感がある。でも、その先が続かない。「立ち上げたけど、次に何をすればいいかわからない」という状態に陥る。

しかも、オウンドメディアは成果が出るまでに時間がかかる。コンテンツを積み重ねて、認知が広がって、事業に効き始めるまで半年から1年はかかる。流れに乗って「なんとなく」始めた人たちは、この時間に耐えられなかった。

今のAIの広がりに感じる同じ構造

今のAIをめぐる動きを見ていると、同じ構造が見えます。

誤解のないように言っておくと、AIはブームではないと思っています。もう完全に実用的なものになっている。オウンドメディアが「流行りもの」だった頃とは、そこが根本的に違う。

ただ、企業がAIに飛びつく「構造」は、あの頃と同じに見えるんです。

「AIを導入しよう」「生成AIを活用しよう」「業務効率化しよう」

こぞってみんなAIを導入している。それ自体はいいことです。ガンガンやるべきだと思っています。

でも、気になることがある。

たとえば、「プレゼン資料が簡単に作れるようになった」という話で盛り上がっているのをよく見ます。

確かに、これまで3時間かかっていた資料が30分でできるようになった。それは便利です。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいんです。

その資料を作ったことで、何が起きたのか。商談が前に進んだのか。意思決定が加速したのか。プロジェクトのアウトプットの質が上がったのか。

もっと言えば、その資料、そもそも作る必要があったのか? 社内向けの報告資料なら、口頭で済む話かもしれない。Slackで要点だけ共有すれば十分な話かもしれない。

「AIで速く作れるようになった」という話は、「タクシーで速く移動できるようになった」という話と似ています。便利になったのは確かだけど、そもそもその移動は必要だったのか。目的地は正しいのか。

手段の効率化で満足してしまって、「それが結局どういう成果につながったのか」まで考えが及んでいない。これは、オウンドメディア黎明期と同じ構造です。

ただし、AIの方がはるかにスピードが速い

ここまで「同じ構造」という話をしてきましたが、一つ決定的に違う点があります。

AIは、オウンドメディアの時とは比べものにならないスピードで進んでいます。

オウンドメディアの黎明期は、2013年に盛り上がって、淘汰が始まるまでに2年くらいかかりました。「やり方がわからない」と言いながら、試行錯誤する時間があった。

AIにはその猶予がほとんどないと思っています。

理由はシンプルで、技術の進化スピードが全然違う。オウンドメディアの場合、CMSやSEOのツールが進化するペースは、年単位でした。「今年はこういう記事の書き方が効く」「来年はこういうアルゴリズム変更がある」という話。キャッチアップする時間的な余裕があった。

AIは、数ヶ月で景色が変わります。半年前に「最先端」だった使い方が、今は当たり前になっている。去年やっていたプロンプトの工夫が、今年はモデルの進化で不要になっている。

つまり、「走りながら考えよう」と言っている間に、走っている道自体が変わってしまう。

オウンドメディアなら、間違った方向で走り始めても、途中で軌道修正する時間がありました。AIでは、方向を間違えたまま半年過ごしたら、その間に正しい方向で走っていた企業とは取り返しがつかない差がついている可能性がある。

「AI時代の黎明期」は、オウンドメディアの黎明期より圧倒的に短い。だからこそ、今の時点で「何のためにAIを使うのか」を考え抜いておく必要がある。のんびり試行錯誤している余裕は、思っているほどないと感じています。

発展性のある時代にいる

最後に、少し違う角度からも書いておきます。

オウンドメディアは、10年以上経って、「こうすればうまくいく」というパターンがだいぶ固まってきました。再現性が高まった。それ自体は良いことです。

でも、正解が見えていない時代の方が、発展性があったなとも思います。真っ白なキャンバスにそれぞれが絵を描いていた時代。試行錯誤の中から、新しいやり方が生まれていた。失敗も多かったけど、発見も多かった。

今のAIは、まさにその時代にいます。何が正解かわからない。だからこそ、いろんなやり方が試されている。

ただし、その時代は長くは続かない。オウンドメディアよりもはるかに速く、パターンが固まっていく。今この瞬間が、一番自由に試せる時期です。

だからこそ、周りに流されて「とりあえずAI」ではなく、自分の頭で考え抜いて、本当に価値のある使い方を見つける。

オウンドメディアで学んだことを、AIでも活かしていきたい。そう思っています。

この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。

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寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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