AIで自社ツール作成における数多くの失敗談と、今の私たちの最適解
寺倉 大史
Director
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AIを使えば、ツールやシステムが驚くほど簡単に作れるようになった。私も私のチームも、特にこの半年はかなりの数を作ってきた。
従来のSaaSツールの置き換えから、対話型の提案ツール、共有型タスク管理ツール、データ連携型自動LPO提案ツール、キーワード選定の自動化ツールなど。作ってる時は「これはいける」と本気で思っていたし、実際にクオリティの高いものができた。
でも、個々人で使うことはあれど、チーム全体ではほとんど使われなくなった。
作ること自体は楽しいし、学びもある。ただ、「作れるから作る」と「使われるものを作る」はまったく別の話だった。
その違いに気づくまでに、私はかなり遠回りをしたと思う。
作れるのが楽しくて、どんどん作った
最初は半年以上前。きっかけは、BtoBマーケティングって無駄が多いなと思い始めたことだった。
あるプロジェクトで行われていたホワイトペーパーをダウンロードしてもらって、インサイドセールスが架電して、フィールドセールスにつないで、商談。ヒアリングの時間もかかる。
また、私たちの会社でも相談をもらってから、一度ヒアリングが始まり、提案し、検討が行われる。
この流れ全体に、もっとショートカットできる余地があるんじゃないかと感じた。
そこで作ったのが、Webサイトの「相談」や「資料DL」の横に「提案」ボタンを置くこと。5問から7問の都度カスタマイズされるヒアリングに答えてもらうと、問題点の整理から、プロジェクトのゴール、予算や期間、またフェーズごとの動きなどがまとまった提案書が自動で出来上がる仕組み。
これができれば、ヒアリングは済んでいる状態から商談に入れるし、そもそも興味がある企業だけと話ができるし、場合によってはその場で決まることもあるかなと。
100%とは言えないものの、あらゆる情報とエージェントの作り込みで実際にかなりクオリティの高いものができて、一時期サイトに掲載してた。
でも、やめた。理由は入力に5分くらいかかることが今の時代っぽくないから。
URLで診断のような形式ではなかったため、あらゆるタイプの質問をぶつけていくそのロジックは、短くて4-5分、長くて10分ほどかかってしまう。自社サイトに来た人がいきなり5分も入力するのはしんどい。
とはいえ、診断でなく、URL入力での提案にすると正直いくつかの企業のを試してみたが微妙だった。
逆にボクシルやITreviewみたいなプラットフォーム上にあったらいい機能だと思った。他のツールや企業でも使えるなら、5分は無駄にならない。つまりツールとしてのクオリティは高くても、置く場所と使う文脈が違った。だからやめた。
次に作ったのが、共有型タスク管理ツール。
エージェンシーの人たちって、プロジェクトごとにツールが違う。Backlog、Asana、Notion、Jira。クライアントごとに使うツールがバラバラだから、結局自分のタスクは自分で管理するしかない。そこで、グループ対応がしっかりできるシンプルなものを作った。
共有URLベースで相手へタスクを追加できたり、つながりがある人ベースでタスクに追加できる仕組みも入れた。アラート機能も作り、いちいちリマインドしなくてもいい状態にした。
最初はむちゃくちゃ良かった。でも、どんどん使われなくなった。理由はログインがめんどくさくなったから。これは後で詳しく書きますが、構造的な問題だった。
さらに、昨年10月くらいから、10人くらいで毎月1つツールやシステムを作るという会を始めた。データ連携型自動LPO提案ツール、キーワード選定の自動化ツール、、、あらゆるものができあがった。最初は「できる」が楽しかった。「やれる俺たちは!」みたいな空気もあった。
でも結局、みんな使ってない。それぞれを使うためのセッティングがめんどくさいし、ログイン画面がどんどん増えていったし、自分で作った方が早いという結論に行き着いた人もいた。
作れるが楽しくて作る、やれる俺たちは!と盛り上がる、でも結局使わない。このサイクルを何度も繰り返した。
なぜ使われなくなったのか
理由はシンプルで、機能が点なのに、それぞれごとにログイン画面が増えたこと。
今、私たちはClaude、Claude Code、Cursorをベースに仕事をしてる。あらゆるAPI、MCPと接続できる環境がある。そうなると、そこで完結できるかどうかがすごく重要になってくる。
Slackで終わるか、IDEの中で終わるか。わざわざ別のツールにログインして使うという行為自体が、作業の流れを分断してしまう。
しかも私の場合、もともとマーケティングのコンサルをやっていたが、今ではあらゆる職種、あらゆる業種の仕事をするようになった。使うツールもみるみる増える。ログインがどんどん増えていく。とにかくしんどい。
つまり、作ったツールのクオリティが低かったわけじゃない。そもそも私たちの業務はどんどんAIによって変化していく。それを加味せず、AIの作業環境に最適化されていなかったということだと思う。
また、定型業務系の効率化は今はもうAIで自動化できる、非定型業務は個々人の属人性に依存する。そういったことも加味せずに作っていたこと。オーケストレーターとして全体をまとめようにも、まとまらない作り方になっていたこと。
あらゆる観点から反省が多かった。
使えるようになってきたもの
大量に作って、大量に使われなくなった。でもその中で、実は使えるようになってきたものの方向性が今のところ3つある。
1つ目は、特化型のデータベース。
みんなで使おうとするものの中で、特定の情報がまとまっている場所を作る。そしてそれをAPIやMCPで呼び出せるようにしておく。ダッシュボードもある。こうしておくと、SlackでもClaude Codeでも、どこからでも呼び出せる。欲しい時に、欲しいように情報が置かれてる。これがものすごく大事だった。
どこかでリリースするかもしれないのであまり詳しくは書けないけど、マジでいいよねという手応えがある。ログインして見に行くのではなく、今使ってるツールから呼び出せる。この違いは大きい。
2つ目は、ローカルWebアプリ。
CursorなどのIDEはブラウザモードがあるので、ローカルで動くWebアプリを作ってしまえば、IDE内で起動させれば一画面で完結できる。
私が作って実際にかなり重宝してるのが、レビューアプリ。特定のフォルダにAIが作ったコンテンツがたまるようにしておいて、ローカルでWebアプリを起動すると、記事一覧、編集画面、プレビュー画面、設定画面が並ぶ。
アイキャッチ画像も、特定のカテゴリーならテンプレートをセットしておけば、PlaywrightでHTMLをキャプチャして保存するだけ。ログインは不要で、リポジトリに置いておけばいい。立ち上げスキルを用意しておけば、すぐ使える。
ここがポイントで、作業を継続しながら同一画面で完結でき、ログイン不要というのが圧倒的に楽。リポジトリの中に置いてあるから、開発環境を立ち上げるのと同じ感覚で使える。
3つ目は、Chrome拡張の分離ウィンドウ活用。
常に表示させておきたい情報がある場合、違法にならないよう注意しつつ、APIと連携してリアルタイムで情報を出し続ける仕組みを作る。Chrome拡張の分離ウィンドウは、ブラウザを閉じても残ってる。常駐型の情報表示として、これがかなり便利だった。
この3つに共通してるのは、「ログインして使うツール」ではなく「今いる場所から使えるもの」だということ。作業の流れの中に溶け込んでいて、わざわざ移動しなくていい。
世の中凄いプロダクトがどんどん出来上がっていく、そこを目指そうとは思わない。ただし、非エンジニア組織で作れる範囲で構築し、皆でどんどん使っていけるものという視点だけでいうなら、まずはログインを不要にするという視点は欠かせないように思う。
作れるから作るは、手段の目的化になりがち
もちろん、ガンガンツールを作られている企業の中で素晴らしいものはたくさんある。
例えば、グッドパッチ土屋さんがツールを作ったとおっしゃられていてたまたまフラッと見せてもらったのだが、凄いやん...となった。
なので、あくまで当時の私たちレベルだったらという限定的なお話でしかないが、振り返ると、「作れるから作る」は手段が目的化していただけだった。
目的をぶらさず、それをどう作るかを考える。シンプルな話なのですが、作れそうだから作るという方向に引っ張られてしまう。AIで簡単に作れるようになったからこそ、この罠にはまりやすくなったと私は考えてる。
今、新しく何かを作ろうとする時に考えるのは「それ、本当にこの先も使うの?」「業務に溶け込んでいる?」「定型業務?非定型業務?」など、いくつも生まれるようになった。
今作るものは、データベースか、ローカルWebアプリか、Chrome拡張か、自分が本当に使いやすいツールか、作ってみて何度もリピートしているか、改良が簡単か...。
そういうところに落ち着いてきてる。作れることはもう優位性ではない。「あったらいいよね」は、なくてもいいことが多い。作ってみる分にはいいけど、使わないなら使わないでいい。
もちろん、この考え方が正しいかはわからない。どんどんアップデートされていく必要があるし、1ヶ月後には全く違うことを言ってるかもしれない。
ただ、マーケターとしてSaaSやあらゆる企業の支援に入る時に、こうして自分で手を動かして色々やっておかないと、「いいじゃん」で飛び乗ってしまう可能性が高いと思った。たくさん失敗してきて良かったなと、今は思ってる。
「ガンガンツールが作れる」は、だから何?になる時代。どう使われるのか、何のためになるのか。マーケティングを行う以上、考え続けないといけない。
とにかく、こういう思考実験はたくさんしていきたい。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
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著者
寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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寺倉 大史
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業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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