アウトプットでなく、インプットをどう変えるか?の視点を持ち続ける理由
寺倉 大史
Director
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生成AIを使っていると、ある操作を繰り返している自分に気づく瞬間があります。
アウトプットを見て「もう少しこうしてほしい」と指示を追加する。少し変わる。まだ足りない。また指示を追加する。このやりとりを延々と繰り返す。
それ自体は間違いではありません。ただ、ある時点から気づいたことがあります。何度も指示を追加しているのに、根本的な問題が解消されないまま、同じ場所をぐるぐると回っていることがある。何十回と指示を変えても、どこか「核心に届いていない」感覚が残る。
その原因を突き詰めていくと、私たちは「インプットを疑う」という視点を持てていなかったことに気づきました。
この記事では、アウトプットへの不満をインプットの問いに変換し、それを持ち続ける習慣についてお伝えします。なぜその視点が自然に薄れていくのか、どうすれば取り戻せるのかを、私たちが実践していることを交えながら書いていきます。
アウトプットに手を入れたいという引力
生成AIのアウトプットが期待と違った時、多くの場合、私たちはアウトプットを見ながら「ここを変えてほしい」と考えます。これ自体は自然な反応です。
ただ、私たちはこの操作に一つの罠があると感じています。
アウトプットは目の前に見えています。具体的にどこが違うのかも分かります。「この段落の主張が弱い」「このトーンは合っていない」「具体例がない」。問題がはっきりと見えるから、そこに手を入れようとする。
しかし、生成AIのアウトプットは、私たちが直接編集できるものではありません。「こう変えてほしい」という指示を追加することはできますが、それはあくまでも再生成の指示です。アウトプットに直接手を入れているのではなく、インプットを変えてもう一度生成させているのです。
この構造を意識せずにいると、何が起きるか。「もう少しこうしてほしい」という指示を積み重ねる中で、根本的な原因には触れないまま、変形を繰り返すことになります。アウトプットは少しずつ変わっているように見えますが、なぜ最初の問題が起きたのか、何が足りなかったのかという問いは、持たれていません。
これが私たちのいう「アウトプットへの引力」です。見えるものに手が伸びる。改善しているように見えるが、実は根本に触れていない。意識しないうちにこの状態に入っていることがあります。
「なぜこうなったのか」という問いを立てる
では、インプットを疑うとはどういう操作なのか。
私たちが実践しているのは、アウトプットへの不満を、問いに変換することです。「もう少し良くしてほしい」という感覚を持った瞬間、立ち止まって問いに置き換えます。
- なぜ、主張が弱くなったのか
- なぜ、トーンが合っていないのか
- なぜ、具体例が出てこないのか
「もう少し良く」という感覚は、アウトプットへの評価です。問いは、インプット側への探索です。この変換が、インプットを疑う出発点になります。
問いを立てた後、その答えをインプット側に探します。「主張が弱い」なら、何を最も伝えたいのかをプロンプトで明示していなかったのかもしれない。「具体例が出てこない」なら、参照させるデータが不足していたのかもしれない。「トーンが合っていない」なら、読み手の像を渡していなかったのかもしれない。
たとえば以前、クライアント向けに報告書のドラフトを生成させた時のことです。内容が散漫で、何を言いたいのかが伝わらない仕上がりでした。最初は「もっとコンパクトにまとめて」「結論を先に出して」という指示を追加し続けていました。何度やっても、どこかズレたまま。
立ち止まって問いを立ててみると、こういう問いが出てきました。「なぜ、結論が見えにくいのか」。そこからインプット側を探すと、「今月の重要な変化はこれです」という情報をそもそも渡していなかったことに気づきました。結論として伝えたいことをインプットに入れていなければ、どれだけ指示を変えても結論は生まれない。シンプルなことでしたが、アウトプットを見ているだけでは気づけなかった点でした。
問いを立てることで、「インプットの何を変えるか」が見えてきます。
ただし、問いを立てても答えがインプット側に見つからないこともあります。その場合は、モデルの推論の限界やタスクそのものの複雑さを疑う段階です。問いを経由することで、「インプットが原因なのか、それとも別の問題なのか」の見極めができるようになります。
問いを持ったら補い、補ったら生成させる
問いを立て、インプット側に原因が見つかれば、次は補うステップです。
足りない情報を追加する。曖昧だったプロンプトを具体化する。一発で完成を求めていた構造を複数ステップに分解する。問いによって「何を補うか」は変わりますが、操作の方向は同じです。インプットを変えて、もう一度生成させる。
私たちはこの「問いを立てる → 補う → 生成させる」というループを繰り返しながら、インプットを少しずつ洗練させています。
このループを意識して回すと、何が蓄積されるか。インプットに対する理解が積み上がります。どういう情報が必要で、どういう指示が機能して、どういう構造が精度を上げるのか。これは試行錯誤の中でしか得られない知識です。
「もう少し良くしてほしい」という指示の追加を繰り返すだけでは、この蓄積は起きません。何を変えたから改善されたのかが分からないまま、操作が続くからです。ループを意識して回すことで、「何を変えたら何がどう変わったのか」が明確になり、次のインプット設計に活かせるようになっていきます。
回数を重ねると、ループのスピードも上がります。最初は問いを立てるだけで時間がかかっていましたが、慣れるにつれ、アウトプットを見た瞬間に問いが浮かぶようになっていきます。蓄積された理解が、問いの精度を上げていくからです。
この視点が自然に薄れていく理由
ここまで書いてきたことは、理屈としては分かりやすいと思います。ただ、実際にインプットを疑う視点を持ち続けることは、意識しないと難しいと感じています。
理由の一つは、アウトプットがすぐに目の前に現れるからです。
問いを立ててインプットに原因を探す操作は、目の前のアウトプットには何も起きません。思考の中で行う作業です。対してアウトプットに「もう少し」と指示を追加すると、すぐに何かが変わります。操作に対して即座に反応が返ってくる。この即時性が、アウトプット側への操作を自然に引き寄せます。
もう一つは、AIへの不満が少しずつ積み重なることです。
インプットを変えずに同じような指示の変形を繰り返していると、少しずつ「思い通りにならない」という感覚が生まれます。この感覚はやがて「AIに問題がある」という認識に変わっていくことがあります。でも実際には、インプット側を変えないまま、アウトプットの改善を期待し続けているだけかもしれません。
インプットを疑う視点は、「AIへの不満が正しいかどうか」を判断する視点でもあります。問いを立ててインプット側を変えた上でなお改善されないなら、そこで初めてモデルの限界について考える段階です。でも多くの場合、問いを立ててみると、インプット側に原因が見つかることの方が多いと私たちは感じています。
インプットを疑う視点は、意識して持ち続けないと、自然に薄れていきます。アウトプットの引力は強く、それ自体が悪いわけでもないため、気づかないうちに引き戻されてしまいます。
最後に
「生成するのはAI、用意するのは私たち」という原則は、頭ではわかっているつもりでも、アウトプットを目の前にすると薄れていきます。
私たちが大事にしているのは、この視点を保ち続けるための小さな習慣です。「もう少し良くしてほしい」という感覚を持った瞬間、問いに変換する。問いをインプット側に帰着させる。補って、生成させる。このループを意識して回し続けること。
アウトプットに向かいがちな注意をインプットに向け直す。この小さな方向転換を積み重ねることが、生成AIとの仕事の質を上げていく上での、私たちが持ち続けている習慣です。
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カテゴリ
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著者
寺倉 大史
Director
業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。
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