マーケティングがAIから受けられる恩恵を定義する

マーケティングがAIから受けられる恩恵を定義する

マーケティングにおいて、AIをどう活用すべきか。この問いに対する答えは、人によってバラバラだと感じています。

私たち自身、しばらくの間、この問いに対して明確な答えを持てていませんでした。AIを使えば生産性が上がる。それは分かる。でも、「上がった」とは何をもって言えるのか。どこまでいけば成功なのか。

ある時、この問いに対してシンプルな定義ができるようになりました。「ゴールに対して、より大きな成果を、より速く」。これがAIから受けられる恩恵だと私たちは考えています。

今回は、この定義に至った経緯と、マーケターとしてAIとどう向き合うべきかについて共有したいと思います。

現場の活用度で計測してしまう

AIの活用度をどう測るか。これは多くの企業で議論されているテーマだと思います。

私たちも最初は、「現場でどれだけAIを使っているか」で計測しようとしていました。AIを使った業務の割合、AIで作成したコンテンツの本数、AIに投入した時間。そういった指標を追いかけていたんです。

でも、これには落とし穴がありました。

例えば、コンテンツの量産ができるようになった。スピードが速くなった。それ自体は良いことです。でも、冷静に考えると、それって利益における原価リソースのカットの話なんですよね。

マーケターとして本当に問われているのは、「売り上げをどう上げるか」という問いです。AIを使って原価を下げることと、AIを使って売り上げを上げることは、全く別の話なんです。

ここに気づくまで、私たちは結構な時間がかかりました。

世の中の生産性向上は2〜3割、でも本当にそれでいいのか

AIを全社で導入した企業のニュースを見ていると、「生産性が2〜3割向上した」という報告をよく目にします。4割増、5割増といった数字が出てくることもあります。

もちろん、それはそれで素晴らしいことです。でも、私たちはこう思いました。

それで本当にいいのか、と。

私たちがやろうとしているのは、10倍、20倍のスピードで走ることの追求です。2〜3割の生産性向上ではなく、桁が違うレベルでの変化を目指している。

なぜそう考えるようになったかというと、マーケティングの世界では、スピードが成果に直結するからです。

競合よりも早く市場に出る。顧客のニーズに素早く対応する。仮説検証のサイクルを高速で回す。これらはすべて、スピードが上がれば上がるほど、成果につながりやすくなります。

だから、2〜3割の改善で満足していては、本来得られるはずの恩恵を取りこぼしていると私たちは感じています。

生成AIが来ても、従来のKPIをまずは変えずに追いかける

では、どうすればいいのか。

私たちが行き着いた答えは、シンプルでした。生成AIが来ても、まずは従来のKPIを変えずに追いかける、ということです。

マーケターの目的は何か。商いを成立させること。そして、発展させること。これは、AIが来ようが来まいが変わりません。

売上、利益、顧客獲得数、リピート率。追いかけるべき指標は、基本的に同じです。AIはその指標を達成するための手段であって、目的ではない。

この軸がブレると、AIの恩恵を正しく受け取れなくなります。

「AIを使うこと」が目的化してしまうと、現場の活用度で計測するという罠に陥ります。AIをたくさん使っている=成功、という誤った図式ができあがってしまう。

そうではなく、従来通りのKPIを追いかけながら、AIによってそのKPIの達成スピードや達成度がどう変わったかを見ていく。これが正しいアプローチだと私たちは考えています。

KPIを3つの軸で考える

従来のKPIを追いかけると言っても、AIによって変化が起きることは確かです。その変化をどう捉えるか。

私たちは、3つの軸で考えるようにしています。

一つ目は、成果を倍にする軸。同じ時間をかけて、倍の成果を出す。例えば、同じ期間で倍の売上を作る。同じリソースで倍のコンテンツを出し、倍の流入を獲得する。

二つ目は、時間を半分にする軸。同じ成果を、半分の時間で出す。これまで1ヶ月かかっていたプロジェクトを2週間で終わらせる。週に10時間かかっていた業務を5時間で完了させる。

三つ目は、そのハイブリッド。倍の成果を、半分の時間で出す。これが「Double the Results, Half the Time」という考え方であり、私たちのスタンスです。

「倍のスピードになったとしても、倍の成果が出ていなければ、それは価値がない」

この言葉を、私たちは自分たちに言い聞かせています。スピードが上がること自体に価値があるのではなく、それによって成果が倍になるからこそ価値がある。

逆に言えば、成果が倍にならないなら、スピードを上げることに意味はありません。

活用度ではなく、成果で計測する

ここまで読んでいただいて、お気づきかもしれません。

私たちが言いたいのは、AIの恩恵を「活用度」ではなく「成果」で計測しようということです。

どれだけAIを使ったか、ではない。AIを使った結果、どれだけ成果が上がったか。これがマーケターとしてAIに向き合う際の正しい姿勢だと私たちは考えています。

具体的には、こう問いかけてみてください。

「このAI活用によって、売上は上がったか?」 「このAI活用によって、プロジェクトの完了は早まったか?」 「このAI活用によって、顧客への価値提供は増えたか?」

これらの問いに明確にYesと答えられるなら、AIの恩恵を正しく受け取れています。逆に、「AIをたくさん使った」としか答えられないなら、一度立ち止まって考え直した方がいいかもしれません。

最後に

AIによって、マーケティングの手法は大きく変わりつつあります。でも、マーケターとしての本質は変わらないと私たちは考えています。

商いを成立させ、発展させること。顧客に価値を届け、その対価をいただくこと。この本質は、どんなにAIが進化しても変わりません。

AIは、その本質的な仕事を「より大きな成果で、より速く」実現するためのツールです。

だから、AIの恩恵を定義するなら、「ゴールに対して、より大きな成果を、より速く」。これに尽きると私たちは考えています。

Double the Results, Half the Time。

この言葉を胸に、私たちはこれからもマーケティングに向き合っていきます。

カテゴリ

AIの考え方

タグ

AI

マーケティング

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著者

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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