属人的な業務はAIエージェントでなく、プロンプトチェーンから考える理由

属人的な業務はAIエージェントでなく、プロンプトチェーンから考える理由

属人的な業務って、なかなか自動化しづらいですよね。

私たちもずっとそう思っていました。「この人にしかできない」「経験がないと判断できない」といった業務は、AIには任せられない。そんな前提で考えていたんです。

でも、ある時その考え方が変わりました。属人的な業務でも、やり方次第でAIに再現させることができる。ただし、それはAIエージェントに丸投げすることではなく、プロンプトチェーンを組むというアプローチでした。

今回は、私たちがこの気づきに至った経緯と、実際にどう考えているかを共有したいと思います。

AIエージェントに丸投げして、うまくいかなかった話

最初に私たちがやったのは、AIエージェントに業務を丸ごと任せることでした。

「このタスクをやっておいて」と指示を出せば、AIが自律的に考えて、必要な情報を集めて、アウトプットを出してくれる。そんなイメージを持っていたんです。

結果はどうだったかというと、求めていたクオリティには全然届きませんでした。

アウトプット自体は出てくるんです。でも、「なんか違う」「そういうことじゃない」という感覚がずっとありました。何度やり直しても、微妙にズレている。指示を細かくしても、また別のところがズレる。

当時は「AIの限界なのかな」と思っていました。属人的な業務は、やっぱり人間にしかできないのかもしれない、と。

でも、それは間違いでした。問題はAIの能力ではなく、私たちの任せ方にあったんです。

「プロンプトチェーンを組む」という発想

転機になったのは、自分たちがやっていることを振り返ったときでした。

私たちがうまくいっているケースを見てみると、AIエージェントに丸投げしているわけではなかったんです。自分たちがこれまでやってきた業務プロセスを、AIに落とし込んでいる。それがプロンプトチェーンを組むということでした。

エージェントに「これやっておいて」と丸投げするのではなく、自分たちがやっている業務を分解して、一つひとつのプロセスをプロンプトとして設計し、それを繋げていく。

この発想の転換が、属人的な業務を自動化するカギだと私たちは気づきました。

プロンプトチェーンとAIエージェントの違い

ここで、プロンプトチェーンとAIエージェントの違いを整理してみます。

AIエージェントは、ゴールを伝えると、そこに至るまでの道筋を自分で考えて実行してくれます。一見すると便利そうですが、属人的な業務においては、これが問題になることがあります。

なぜかというと、推論の幅が広すぎるからです。

属人的な業務というのは、その人の経験や判断基準が詰まっています。「こういう場合はこうする」「この条件のときはこっちを優先する」といった暗黙知がたくさんあるんです。

AIエージェントに丸投げすると、その暗黙知がないまま、AIが独自に判断してしまいます。結果として、求めていたクオリティとは違うアウトプットが出てくる。これが、私たちが最初に経験した「なんか違う」の正体でした。

一方、プロンプトチェーンは違います。

業務プロセスごとにプロンプトを作り、それをチェーンで繋げていきます。一つひとつのプロセスで、自分たちの判断基準や考え方をプロンプトに組み込んでいく。そうすることで、コンテキスト(文脈)がAIに伝わるんです。

プロンプトチェーンを組んでコンテキストを作ってしまえば、自分たちの脳みそを再現することができる。そういう時代になっていると私たちは気づきました。

業務プロセスごとにプロンプトを作り、チェーンでくくる

具体的にどうやるのか、もう少し詳しく説明します。

まず、自分たちがやっている業務を分解します。例えば、コンテンツを作る業務であれば、

  • 情報を集める
  • 構成を考える
  • 下書きを書く
  • チェックする
  • 修正する

といったプロセスに分かれますよね。

これを、一つずつプロンプトとして設計していきます。

「情報を集める」というプロセスであれば、どんな情報を、どこから、どういう基準で集めるのか。自分たちがやっているときの判断基準をプロンプトに書き込んでいくんです。

そして、それぞれのプロンプトを繋げていく。前のプロセスのアウトプットが、次のプロセスのインプットになるように設計する。これがプロンプトチェーンです。

ここで重要なのが、目視チェックをプロセスとして挟むことです。

人がやっている業務でも、「部下がやったものを確認する」というプロセスがありますよね。AIに任せる場合も同じです。出来上がったものに対して、チェックリストを読ませて、問題がないか確認させる。

このチェックのプロセスを別で用意しておくと、うまく機能することが分かりました。バーっと出来上がったものに対して、ルールを読ませて問題ないかチェックして、修正を入れていく。より精度の高いものにしていくことができます。

質が上がらない時は、従来の業務プロセスに原点回帰する

プロンプトチェーンを組んでみたけど、まだ質が上がらない。そういうこともあります。

そのときに私たちが気づいたのは、まず原点回帰すべきは従来の業務プロセスと知識だということです。

AIに上手く伝わらないのは、自分たち自身がその業務をちゃんと言語化できていないからかもしれません。「なんとなくこうやっている」「経験的にこうしている」という部分を、改めて棚卸ししてみる。

すると、自分たちでも気づいていなかった判断基準や、暗黙のルールが見えてきます。それをプロンプトに落とし込んでいくことで、質が上がっていく。

AI時代になって、私たちが作れるものは何かと考えると、インプットなんですよね。アウトプットを作るのはAIです。私たちが作れるのは、データ、プロンプト、そしてプロンプトを繋げたコンテキスト、この3つです。

属人的な業務をAIに再現させるためには、自分たちの中にあるコンテキストを、プロンプトチェーンという形で外に出していく必要がある。それが分かってから、アプローチが変わりました。

最後に

プロンプトチェーンを組んでコンテキストを作ってしまえば、自分たちの脳みそを再現することができる時代です。

この気づきを得たとき、正直ちょっと怖いなとも思いました。自分たちの仕事がなくなるんじゃないか、と。

でも、実際にやってみると、そうではありませんでした。

プロンプトチェーンを組むためには、自分たちの業務を深く理解している必要があります。何をどういう順番で、どんな判断基準でやっているのか。それを言語化できる人でないと、チェーンは組めません。

つまり、プロフェッショナルとしての知見や経験は、むしろ価値が上がるんです。それをAIに伝えられる形にできる人が、これからは重要になってくる。

属人的な業務を自動化したいと思ったら、まずは自分たちの業務プロセスを棚卸しすることから始めてみてください。

AIエージェントに丸投げするのではなく、プロンプトチェーンを組む。その発想で考えると、「この人にしかできない」と思っていた業務も、再現可能になっていく。

私たちはそう考えています。

カテゴリ

AIの考え方

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AI

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著者

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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