「新しいAIモデルを試して速くなったつもりが、むしろ遅れていた」と気づいた話

齊藤 麻子(まこりーぬ)

齊藤 麻子(まこりーぬ)

Media Planner / Editor

先日、AnthropicがClaude Fable 5という新しいAIモデルを発表した。

私のXのタイムラインは、その日も翌日も、Fable 5の話題で埋め尽くされていた。「Opus比で正答率10%以上向上」「無料配布期間中に試さないと損」。気づけば私のブックマークは驚きの声ばかりになっていた。

こんなにポンポンと新しいAIモデルやツールに出てこられると、それはもうキャッチアップが追いつかない。結局自分がどれを使えばいいのかも、ぶっちゃけわからない。

そんなモヤモヤを抱えながらも、時代に取り残されないためには、必死にトレンドを追うしかない。新しいAIモデルやツールは、試さなきゃいけない。そのほうがきっと、速く前に進めるはずだ

……そう疑いもせずに、最新情報を追いかけ続けてきた。

ところが、社内のある勉強会で、その前提がぐらりと崩れた。

「成果事例」の中身を聞いていて、ハッとしたこと

弊社では定期的に、AI推進をテーマにした勉強会を開いている。メンバー数名が、自分の担当プロジェクトにおけるAI活用の話を順番にプレゼンしていく形だ。

その日のプレゼン内容は、SEO支援やリード獲得、デザイン構築と領域はバラバラ。しかし出てくる成果の構造はよく似ていた。「当初の予定より明らかに早くプロジェクトが進んでいる」というのだ。

  • 通常、プロジェクトが始まってから1〜2ヶ月かけてやっていた要件定義を、提案段階で詰めて持ち込んだら、初週から開発が動き出した
  • 200ある商材をAIで一気に整理しなおして、サイト構造の切り口そのものを変えるところまで提案で見せたら、その場で意思決定が進んだ
  • 修正のたびに後戻りしないデザインの土台を作っておいたら、クライアントからのフィードバック対応がぐっと軽くなった

この勉強会の締めくくりに、上司がふとこう言った。

「これらのエピソードって、別にClaude Codeじゃなくても、GeminiでもChatGPTでもできちゃいますよね」

「新しいAIモデルを使い倒そうとするのではなく、プロジェクトの成果をどれだけ上げられるかに、みんな注力してる。いいAIの使い方だなと思いました」

正直、ハッとした。

プレゼンしているメンバーの誰一人として、「今までと違うAIモデルやツールを使ったから速くなった」という説明をしていない。どれも「いつ・誰と・どの順で動くか」といったプロジェクトのプロセスそのものを組み替えることで、より早く成果を出している話だった。

……新しいAIモデルを試して速くなったつもりだった私は、たぶんずっとプロジェクトの外側で走っていた。それらを試している間に、プロジェクトは動かない。成果を出すという目的に対し、時間の使い方を間違えていたのだ、とようやく気づけた。

それでも、新しい情報は流れ続ける

正直に書くと、これに気づいた今も、私のタイムラインには毎日のように新しいAIモデルやツールの情報が流れてくる。指は無意識にブックマークボタンに伸びるし、いまもなお実際に触って試してみることがある。

最新のトレンドを追いかけることそれ自体は、決して悪いことではない。ただ困るのは、それで「プロジェクトがもっと速く進むはずだ」と勘違いしてしまうことだけだ

モデルやツールに向き合っている時間の分だけ、私はたぶん、成果から遠ざかっていた

そう気づいてから、私の情報消費時間は少しだけ短くなった。「これを使って、プロジェクトの何が動くんだろう?」と一度自問するようになった。ようやく、AI活用の判断が、自分のプロジェクトの内側から始まるようになった気がする。

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齊藤 麻子(まこりーぬ)

齊藤 麻子(まこりーぬ)

Media Planner / Editor

業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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