AIのアウトプットがイマイチなときは、「コンテキスト漏れ」を疑う
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
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「フルリモートの会社へ転職して10営業日目。完全にお化粧することを諦めました(東京在住30代会社員)」
先日、Xにこんな投稿をしました。私(X歴12年)がよくやるいつもの、軽いノリのつぶやきです。
ところがその直後、社内から指摘が入りました。「うちはフルリモートじゃない」と。
あ、これはやってしまった。
目次
「フルリモート」と「出社義務なし」は、別物だった
私がいま在籍しているMOグループは、創業期からずっと「パフォーマンスを出せる環境は自分で選ぶべき」という考え方のもと経営されていて、出社義務がありません。
オフィスのほうが捗るなら出社する。自宅のほうが集中できるならリモートで働く。働く場所の選択は本人(あるいはチーム)に委ねられています。
これは、パフォーマンスが出ている前提で成り立つ仕組みです。パフォーマンスが出ていないのに自由を与えていると、組織は崩れてしまう。自由と責任はワンセットであり、「パフォーマンス次第で出社を命じることもある」とルールにも明記されています。
つまり正確には、「フルリモート」という制度を従業員に提供しているわけではなく、あくまで「出社義務がない」だけ。
その前提を、私は入社時にちゃんと説明を受けていた。それなのに、Xでの投稿が「フルリモートの会社」になっていた。
広報として、大反省事案です。
……せっかくなので、この失敗を構造化してみようと思います。
「知っている」と「アウトプットできる」も、別物だった
上記のような現象は、他の場面でもよく起きているんじゃないかと思っています。
たとえば、クライアントへの急ぎのメール返信や、突如打ち合わせで意見を求められた瞬間。頭の中には「このクライアントにはこうコミュニケーションをとるべき」という前提がちゃんとあるはずなのに、口から出た言葉や送信ボタンを押した文面には、それがすっぽり抜けてしまう。
情報として知っているだけでは足りない。一つひとつの発信のたびに前提を意識し直さないと、なかなかアウトプットには乗ってこない。
「前提を知っている」と「アウトプットできる」の間には、思っているより距離がある。
私のうっかりフルリモート投稿は、その距離を盛大にさらしたケースでした。
そしてさらにこの構造は、AI活用にも通ずる部分があります。
AIに指示を出すときに毎日起きていること
仕事でAIを使い始めて、もう数年は経ちました。それなりに使ってきたつもりですが、いまだに頻繁にぶつかる現象があります。
「いい感じで記事を書いて」と頼んで、出てきた文章がなんとなく微妙。「企画を整理して」と頼んで、整理されてはいるけれど核心を外している。「これを要約して」と頼んで、字数は減ったけれど、本当に捨ててはいけない部分が落ちている。
最初の頃は、「まあAIってこんなもんか」くらいに捉えていました。これがいまのAIの出すクオリティなんだろう、と。プロンプトを少し書き直したり、ツールを変えてみたりはするけれど、ある種クオリティには諦めの感情を抱いていました。
でも、最近ようやく腑に落ちたことがあります。
足りていなかったのは、AIの性能でもプロンプトの精度でもなく、「コンテキスト」のインプットだったんです。
アウトプットの質は、データ × プロセス × プロンプトで決まる
弊社では、AIへのインプットを3つに分解して考えています。これは社内勉強会でも繰り返し共有されているフレームです。
| 種類 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| データ | 参照する情報そのもの(素材) | 事例集、過去の数字、参照ドキュメント |
| プロセス | 業務工程 | 文字起こし→タイトル決め→本文執筆→文字校正 |
| プロンプト | その場の指示・問い | 「要約して」「構造化して」 |
料理にたとえるなら、データは食材、プロセスは調理工程、プロンプトは「これ作って」というオーダー。
また、データには「点の情報」と「線の情報」があります。
たとえば「手元にはじゃがいもがある」というのは、それ自体は1点の事実。けれど、なぜその状況になっているのか、前日に何を食べたか、好みの味付けは何か、という周辺情報まで含めると、それは線の情報になります。
この線の情報が、「コンテキスト」です。食材が同じでも、点の情報だけ渡すか、コンテキストまで含んだ線の情報を渡すかで、肉じゃがになるのか、甘いカレーになるのか、辛いカレーになるのか、出てくる料理の細部はまるで変わるはず。
仕事でも同じことが起こります。実際にうちの社内で「自己紹介LPを作って」というシンプルなお題を出したところ、みんなのアウトプットは見事にバラバラ。社内向けで作る人もいれば社外向けで作る人もいる、フロントエンドの演出にこだわる人もいればテキストコンテンツを厚くする人もいる。誰に向けて、何のために、どの場面で使うLPなのか……といったコンテキストが共有されていないと、出てくるものはまったく別物でした。
私のうっかり投稿も同じ構造です。
「出社義務がない」というデータ自体は持っていました。けれど、自由と責任はワンセットという根底にある考え方や、なぜ出社義務がないのかといったコンテキストが、投稿直前で頭からすっぽ抜けていた。結果、アウトプットが「フルリモートの会社」にズレてしまった。
私はこの現象を「コンテキスト漏れ」と呼ぼうと思います。
「コンテキスト漏れ」を正すと、クオリティが上がる
今思い返すと「これもコンテキスト漏れだったな……」と思うエピソードを一つ紹介します。
以前、自分のライティングをAIで再現すべく試行錯誤していた時期があったのですが、文体はかなり再現できるようになったものの「タイトル案がどうも浅い」という壁にぶつかっていました。
なんでだろうと考えたときに、ふと気付いたんです。私がふだん無意識に持っている「読者像」を、AIに渡せていなかったと。
Xのタイムラインを毎日見ていれば、マーケターがいま何に関心を持っていて、どんな投稿に反応して、どんな言葉を使っているか、なんとなく把握できる。でもその「なんとなく」をAIは持っていない。
そこで「Xにいるマーケターの分析レポート」を作りインプットに組み込んだところ、AIが出すタイトル案の「刺さり具合」がかなり変わりました。
これも、まさに「コンテキスト漏れ」でした。
私の頭の中にはあった「読者像」というコンテキストが、AI側にはまったく渡っていなかった。だからこそ「なんかちょっと違うな、イマイチだな」が続いてしまったんです。
アウトプットをよくしたいなら、まずコンテキストを見直す
「AIでいいアウトプットを出すためには、まず自分のインプットを疑え」。これは社内で何度も聞いてきた言葉ですが、自分が盛大に失敗してから、そのインプットの中で何がいちばん抜けやすいかがわかりました。
それは私の場合間違いなく、「コンテキスト」です。
アウトプットを磨くなら、コンテキストをとにかく渡す。いま必要なのは、自分の頭の中にあるたくさんの周辺情報を、ちゃんと棚卸してAIへ渡し直す力なんだろうと思います。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
カテゴリ
AIの考え方タグ
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著者
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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齊藤 麻子(まこりーぬ)
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業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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