AI時代のキャリアの武器は「足す」より「捨てる」かもしれない
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
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最近、新入社員として先輩社員にいろいろ話を聞いているなかで、ちょっと「異常だな」と感じることがある。
うちの社内には、「勝手に自分で自分のハードルを上げ続けている人」が、一人といわず、複数名いるのだ。
その人たちを観察していると、AI時代に何を持っていると強いのか、何がキャリアの武器になるのか、その輪郭がうっすら見えてきたのでここに残しておこうと思う。
目次
観測1:「KPIを3ヶ月に1回上げ続ける」と語る、コンサルの先輩
一人目は、コンサルを担当している先輩社員。
マーケティング組織の再構築によって国内シェアNo.1を獲得した案件、オウンドメディア立ち上げによるCV100件獲得・広告費50%削減の案件など、たくさんの成果を出してきた活躍社員の一人である。
先日、担当案件について話を聞いていたときに、こんな言葉が飛び出した。
「このAIベースのプロジェクトは、これからKPIを3ヶ月に1回上げ続けようと思っている。一年間同じKPIで走り続けると、自分も組織もそこに最適化されてしまう。だからより成果を伸ばすために、短期間で強制リセットをかける」
なんなら低いほうが嬉しいKPIを「自ら上げる」なんて、どれだけストイックな人なんだろうか。しかも、定期的に上げ続ける仕組みにまで落とし込もうとしている。
この先輩は別の場所で、こんな発言もしている。
「単月コンバージョン数が100に増えても200に増えても、正直もうあまり嬉しくない。それよりも『1億円売れました』『上場できました』という方が、自分が成果に貢献できている実感がある」
成果が出ても満足せず、自らより高いハードルを掲げ直す人だった。
観測2:「1日でやってみます」と宣言する、デザイナーの先輩
二人目は、デザイナーの先輩社員。
この先輩は2025年9月、業界相場で3〜4ヶ月かかるはずのサイトリニューアルを、AIをフル活用して主担当として2週間でやり切った。続いて2026年3月、50ページ規模のクライアントサイトリニューアルを約20日。さらに最近は、自社のコーポレートサイトを今度は数日で再リリースしようとしている。
3〜4ヶ月 → 2週間 → 20日 → 数日。
ふつう、ここまで圧縮できたら一旦は満足するはずだ。ところが、まだ縮めようとしている。
「最近はすっかり、自分でゴール設定を上げるクセも身についてきました。同じレベル感で続けていても仕方ないから、ちょっと上のゴールを設定する。1日でできる根拠がないプロジェクトであっても『1日でやってみます』と宣言してみる。……もし達成できなかったとしても、上げないより上げたほうが、次に進めます」
根拠がないのに、「1日でやってみます」と先に宣言してしまう。誰に強制されているわけでもない。
サイト制作のプロセスを抜本的に組み換え、納期を自ら短くし続けている人だった。
「異常だな」の正体は、なんなのか
この二人に限った話ではなく、社内では似たような現象をあちこちで見かける。誰になにも言われていないのに、成果のために、さらなる高みを目指してハードルを上げ続けているのだ。
「KPIを上げ続けろ」「納期を短くし続けろ」と誰かから具体的に指示をされているわけでは一切ない。
ただ、AI駆動の組織に変革していくなかで、社内で繰り返し何度も飛び交う言葉ならある。
「認知キャッシュをクリアしろ」
これは社内の造語で、ざっくり言うとこんな話だ。
AIプロジェクトが思ったよりも加速しない原因は、ツールやスキルの問題ではなく、頭の中に残った古い前提にある。「この規模なら3ヶ月かかる」「これはエンジニアの仕事」「単月CV100が出れば十分」。いつの間にか積もっている、こうした凝り固まった判断ロジックが、AIベースのプロジェクトの足を引っ張る。
かつ、凝り固まった考え――認知キャッシュは、内省では消えない。気合いで「よし、捨てよう」と思っても、勝手に戻ってくる。だから高いゴールを掲げることで、強制的にクリアする必要がある、と。
高いハードルが、キャッシュを強制クリアさせる
改めて振り返ってみると、コンサルの先輩の「KPIを3ヶ月に1回リセットする」も、デザイナーの先輩の「1日でやってみますと宣言してみる」も、やっていることは同じだと気づく。
長年の経験のなかで自分の内側に積もった「これくらいの数字が妥当」「こういう手順で進めるべき」という基準を、外から強制的に壊しにいっている。
AI時代においては、その基準こそが、いちばん厄介な前提になる。デザイナーの先輩は「20年のキャリアは毒にもなる」とも形容していた。
内省では消えないから、外圧を、自分で自分にかけ続けるしかない。そういうことなのだろう。
また、もうひとつ気づくことがある。
おそらく二人はもともと「異常」だったわけではない。会社として、「AIを活用してより早く、より大きな成果を出すこと」を旗として掲げたからこそ、こういう考え方や動き方が定着していった、というほうが近い気がする。
何を「当たり前」とする環境にいるかが、個人の判断軸を作り変える、ともいえる。
「足す」より「捨てる」ほうが、武器になる
AI時代、これからのキャリアに悩む人は多いと思う。私自身もその一人だ。
時代に乗り遅れないために、「AIを使いこなすスキルを身につけたい」「隣接する職域にもどんどんはみ出ていかなきゃいけない」――もちろん、これらもひとつの解である。
だが、その一つ手前で、「いままで持っていたものを手放すこと」。これが、大きな成果を出すためにはむしろ必要なのではないかと感じる。
自分の中の「これくらいでいい」「こうあるべき」という基準を強制リセットし続けられるかどうか。そのキャッシュクリアの速度こそ、AI時代のキャリア形成の肝なのではないだろうか。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
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著者
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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齊藤 麻子(まこりーぬ)
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業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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