ファーストパーティーデータの収集と有効な活用方法

広告運用において、個人情報保護規制の強化やサードパーティークッキーの廃止が進む中、従来のターゲティング手法やパフォーマンスの維持が困難になっている。これまで多くの企業は、サードパーティークッキーを活用し、ユーザーの過去の閲覧履歴や行動データをもとに最適な広告を配信していた。

例えば、あるECサイトで靴を閲覧したユーザーが、別のニュースサイトを訪れた際に、同じ靴の広告が表示されるといったリターゲティング広告が代表的な例である。

しかし、サードパーティークッキーが廃止されると、異なるサイト間でのユーザー追跡ができなくなり、こうしたターゲティングの精度が著しく低下する。その結果、関心のない広告が表示される可能性が高まり、広告の効果が低下する恐れがある。

また、これまで広告主が蓄積していたユーザーデータの一部が活用できなくなるため、従来の広告運用手法の見直しが求められている。このような状況において、自社が保有するファーストパーティーデータが競争優位性を持つ重要な資産として注目されているが、このデータを十分に活用できていないのが現状である。

主な課題として、データの収集・管理体制の整備不足、分析スキルや適切なツールの欠如が挙げられる。

この課題を解決するためには、まずデータのプロダクトを整備する必要がある。ファーストパーティーデータを活用するには、データが正確かつ整備された形で保存されていることが前提となる。例えば小売業界では、顧客の購入履歴や閲覧データを統合し、マーケティング施策に活用することで、より精度の高い販促が可能になる。

ある企業では、オンラインと実店舗のデータを組み合わせ、消費者の行動パターンを把握することで、プロモーションの効果を向上させた。

次に、パーソナライズの実現とセグメンテーションを強化することが重要となる。ファーストパーティーデータを用いて顧客を細かくセグメント化し、個別のニーズに応じたメッセージを届けることで、顧客体験の向上とCVRの向上が期待できる。

例えば、過去の購買データをもとに、特定の時期に購買行動が活発になる顧客層へ向けたプロモーションを実施し、販売数の増加につなげるなど。さらに、自動化ツールの活用がデータ活用の効率化を促進する。CDPやCRMの導入により、データの統合・分析をスムーズに進めることが可能となる。

例えば、大手小売企業ではCDPを利用して顧客データを統合し、AIアルゴリズムを活用して顧客ごとに最適な商品提案を自動生成。その結果、メールマーケティングのCTRが10％以上向上した。また、CRMを活用することで、顧客との接点を一元管理し、営業チームが適切なタイミングでフォローアップを実施できるようになり、商談成立率の向上にもつながった。

このように、広告運用においては、ファーストパーティーデータの活用が企業の競争力を左右する要素となる。データの収集・管理体制を強化し、適切な分析手法とツールを導入することで、ターゲティングの精度を高め、広告の効果を最大化することが可能となる。