マーケティング支援企業、属人的なリード獲得に限界
インバウンド戦略により商談強化を実現、企業文化も確立
永田 さおり
Growth Architect
背景
顧客データを活用した事業支援を展開する企業では、戦略立案から施策の実行までを一貫して提供し、クライアントのマーケティング課題解決を支援している。
事業会社で一定の役職などで活躍していたメンバーのみで創業したこともあり、デジタルマーケティングに関わらず、組織の立ち上げから事業構築、マーケティング、営業までを一気通貫して行え、自立して行動できるメンバーのみで組織が形成されていた。
そのため、案件獲得も指名での引き合いが多く、一般的なマーケティングが不要の状態であった。しかし、今後の組織拡大や事業成長を見据えた際、属人的な案件獲得モデルから脱却し、安定的な案件獲得を可能にする組織体制と基盤の構築が必要と判断。
特に、シニア層の多くが多様な業界経験を持ちマルチスキルを保有していたため、事業全体を通じた包括的なサポートが可能であった反面、提供価値が抽象的に捉えられる課題が生じていた。
ターゲット層への訴求力を高めるために、自社の強みとサービスの訴求ポイントを整理したうえで、全体を構築し直す必要があった。
具体的なプロセス
STEP
1
デジマ総合支援から特定領域に強み持つ企業へブランドイメージを変更
創業時に作成したサービスページは、提供できる範囲が広かったことから、「デジタルマーケティングの総合支援が可能である」という見せ方に偏り、サイトに訪問した顧客にとって何を提供する会社なのかが不明瞭な状態となっていた。
インバウンドマーケティングを実施するにあたり、流入の着地点となるサービスページが適切に機能していないことも課題であった。
そこで、誰が見ても特定領域に強み持つ企業へブランドイメージを変更するために、提供サービスが明確に伝わるよう、サービスサイトのページ設計を見直すこととした。
STEP
2
受注獲得が急務に、リード不足を解決し即座に商談につなげる施策実行
サイトリニューアルにより見せ方が変わり、一定のインバウンド獲得が可能なスキームの構築が完了。一方で、現在の事業状況を踏まえ、早期に商談を創出し、受注獲得を進める必要があった。
インバウンドマーケティングの体制構築や施策実行は中長期の視点で設計されており、リード獲得までに時間を要することを前提としていた。そのため、一旦これを保留し、商談獲得に向けた施策の立案・設計・実行が急務となった。
しかし、リード数が不足している状況では、インバウンド施策のみに頼ることは難しく、商談数の確保が課題となった。加えて、新たな施策の開始時点では十分な予算や人的リソースの確保が困難であったため、即座に商談につなげる手法の検討が必要となった。
その結果、共催セミナーや自社ウェビナーの開催などを中心に施策を組み立て、限られたリソースの中で実行を進めた。
STEP
3
企業文化を伝え組織課題を解決するカルチャーブックを3ヶ月で作成
リード獲得から商談創出、受注までのプロセスが一定の形を成しつつある中で、組織の課題が浮き彫りとなった。特に、支援会社に見られるシニア層とジュニア層の実力格差の大きさが顕著であった。
シニア層はカルチャーを重視したリファラル採用を広く取り入れていたものの、ジュニア層は明確な採用基準がないまま採用がされている状況であった。その結果、シニア層は定着するものの、ジュニア層は早期退職や途中離脱に至るケースが多発していた。
本来、シニア層が企業文化を適切に伝達すべきであったが、軸が定まっておらず、伝達手法にも一貫性がなかった。今後の組織および事業拡大を見据え、まずは会社の考え方や存在意義を明確にし、組織内で浸透させる必要があると判断。
これらを実現するため、カルチャーブックの作成に着手した。代表と複数回の議論を重ね、会社のミッションやビジョンを再設計し、会社が重視するバリューを整理。そのプロセスを通じて、組織としての文化を確立するための指針を策定し、3ヶ月をかけて完成させた。
結果または成果
新たなブランド構築が実現し、商談数80件以上を創出。企業カルチャーも明確に
これまで属人的なリファラルに依存していた案件獲得の体制から、サービスサイトを中心としたインバウンドマーケティングの基盤を構築することに成功した。加えて、リード獲得の新たなチャネルとして、セミナーやメールマーケティングを活用し、マーケティングリードを安定的に獲得する仕組みを構築。
これにより、サービスの訴求がデジタル全体の設計と連動し、顧客データの利活用によって提供価値がより明確になり、ブランドの構築にも寄与した。また、組織の視点においても、企業としてのミッションや目指すビジョンを明確化し、それを実現するためのカルチャーの方向性を定めるため、バリューを設定。
これにより、全社で統一した価値観を共有できるようになり、社内のカルチャー醸成や教育体制の整備に加え、採用活動においても一貫性を持たせることが可能となった。

