オウンドメディア未経験の飲料メーカー、新サービスの販促と認知拡大に苦戦
1年で8万UU/月を達成、独自コンテンツの制作体制を構築
田島 光太郎
Marketing Planner / Consultant
背景
老舗飲料メーカーは、高品質な製品づくりで長年にわたり支持を得てきた。豊富な専門知識と歴史を持つ一方で、従来は実店舗での販売が中心で、デジタル領域における情報発信やユーザーとの関係構築に関する経験が不足していた。
そのため、新サービスの展開にあたり、新サービスの認知拡大と利用促進を図るためには、ウェブマーケティング基盤の整備が不可欠だった。
本プロジェクトでは、「1年で月8万の新規ユーザーを獲得する」ことを主要目標とし、PVではなくUUを重視。閲覧数ではなく、実際の新規接点数を正確に示す指標として、UUを軸にしたメディア設計に取り組んだ。
補足要件
- 飲料に関する専門知識や技術は豊富だが、社内にコンテンツ制作体制がなかった
- 嗜好品のため一般論では伝わりづらく、独自の視点や語りが必要だった
- 品質基準が高く、記事の監修には厳密なフローと調整が求められた
- 制作量と質を両立しながら、社内チェックを通す体制の設計が課題となった
具体的なプロセス
STEP
1
戦略とキーワード構造の設計
まずは、メディアの役割と方針を明確にし、SEOを中心とした戦略の設計から着手。自社製品を日常的に利用するユーザーを想定し、商品認知から利用までのプロセスをカスタマージャーニーとして整理。それに基づいて、各ステップに必要な情報やキーワードを設計した。
設計段階で注目したのは、製品カテゴリに関する検索ニーズの広がりだった。基本的な使い方から応用的な活用法まで多岐にわたり、膨大なキーワードボリュームがあった。
それらをテーマ単位で網羅的に整理し、独自の切り口で掘り下げることで、メディアとしての独自性と価値を確立できると手応えを感じた。
STEP
2
コンテンツ制作体制の構築と役割分担の明確化
次に、1年で目標UUを達成するための制作体制を構築。記事制作フローを複数ステップに分け、構成設計・執筆・監修の役割を外部と社内で明確に分担した。
執筆前の構成案作成は外部チームが担当し、同社の監修を通じて構成や主張の方向性を確認。これにより、初稿段階から品質担保された記事制作を可能にした。
ライターにはSEO専門人材ではなく、日常的に対象製品を楽しむ愛好家をアサイン。嗜好品特有の主観的な価値観を活かし、読み手の共感を得る自然な語りを重視した。嗜好品には決まった正解がないため、その人の色や考え方、主張が盛り込まれている方がメディアらしさが出ると考えた。
STEP
3
コンテンツマップと複数チャネルでの拡散
SEO起点だけのコンテンツでは全テーマを満たすことができないため、コンテンツSEOの設計に加え、独自のテーマ体系を設計。情報構造の可視化によって、制作すべきテーマや進捗が全体像として把握できる環境を整備した。
また、SEOに依存しすぎず、SNSなど他チャネルでの接点創出にも着手。開発担当者や店舗関係者へのインタビュー企画を別チームで進行し、SNSで拡散されやすいコンテンツを設計。多面的なアプローチにより、接点を広げながらブランド価値を伝えることを目指した。
詳細
アドバイス
結果または成果
8万UU/月 達成と、継続成長を支える社内資産の確立
プロジェクト開始から1年半で、当初目標としていた月間8万UUを達成。主要なSEOキーワードでは上位を獲得し、初めてのオウンドメディアでありながら社内でも中核メディアとして評価された。
立ち上げ時は予算制限の中で最低限のデザインと機能でスタートしたが、成果を受けて追加予算が承認され、UI/UXの改善を実施。以降も安定してトラフィックを伸ばし続けている。
成果の背景には、愛好家による深みのある記事制作、カスタマージャーニーを使った構造設計と方針の明確化、構成・監修フローの仕組み化により、知見の言語化と伝達を実現できたことにある。
特に、独自のテーマ体系による全体設計と、SEOライターではなく対象製品の愛好家をアサインする判断が、他社では真似できない独自性のあるコンテンツ創出につながった。このプロジェクトは、オウンドメディア活用の一つの成功例となり、現在もその知見が社内外の施策に活かされている。

