マーケティング支援企業が、新規メディアで激戦領域に挑む 立ち上げ1年で100万MAU達成、分業と品質管理で月200本の記事制作を実現
著者: 株式会社KAAAN 岸 晃
背景
マーケティング支援を行っている企業は、若年層をターゲットとした情報メディアの立ち上げを目指していた。しかし、市場には既に大手情報サービスプラットフォームが市場シェアをしめ、さらに、新興メディアも続々と参入する激戦区だった。この厳しい競争環境に、限られた人員で挑むことになった。
最大の課題は時間的制約で、創業から約1年で月間アクティブユーザー数100万人という目標は、当時の業界水準では極めて高いハードルだった。短期間で成果を出す必要があるなか、大量のコンテンツを短期間で制作する必要があり、後発メディアとしてユーザーを獲得するには、キーワード選定の精度の高さが求められた。
さらに、差別化、品質維持と効率化の両立など、複数の課題が同時に存在していた。
STEP1
最初に取り組んだのは、完全分業制の導入だった。従来、コンテンツ制作は一人が企画から執筆まで担当するのが一般的だったが、効率化のために思い切って専門チーム制を採用することに決定、チームを3つの専門部隊に再編成した。
キーワード戦略チームは検索需要の分析とキーワード選定に特化し、新規コンテンツ作成班は執筆に集中、リライト班は既存記事の改善に専念する体制を構築。当初は「分業により記事の一貫性が失われるのではないか」という懸念もあったが、各チーム間の連携を密にすることで解決を図った。
この体制変更により、各メンバーが自身の強みに集中できるようになった。キーワード戦略の専門性が向上し、コンテンツ制作の効率も大幅に改善。特に、キーワード選定の精度向上は、その後のトラフィック獲得に大きく貢献することとなった。
さらに、月間100〜200本の制作を前提に、出勤ベースでの個人目標と日報による進捗管理、表現テンプレートの整備などを行い、制作効率を継続的に改善していった。
STEP2
分業体制が軌道に乗り始めた段階で、差別化戦略として「トレンド性の高いキーワード」に着目。大手プレイヤーが見逃している成長市場を発見するため、独自のアプローチを開発。
まず、社内の若手メンバーから直接トレンド情報を収集する仕組みを構築。若年層の生の声を聞くことで、検索データには現れていない潜在的なニーズを把握できた。次に、Googleのキーワードプランナーやトレンド分析ツールを活用し、収集した情報の検証を行う。さらに、SNS上のハッシュタグ分析を徹底的に実施し、視覚的コンテンツのトレンドも把握していった。
この3つのアプローチを組み合わせることで、競合が気づいていない成長キーワードでコンテンツを作成。特に、特定エリアに関するトレンドキーワードは、想定以上の検索ボリュームがあることが判明し、戦略の核となった。
STEP3
コンテンツの量産体制が整った一方で、品質管理が新たな課題として浮上した。月間100〜200本という制作ペースを維持しながら、法的リスクを回避し、高品質を保つ必要性がでてきた。
そこで構築したのが、多段階チェックプロセスである。まず、ダブルチェック体制を基本とし、誤字脱字の徹底排除を図る。次に、他メンバーからのフィードバックを必須化し、記事の客観性を担保。さらに、専任の監査担当者を配置し、特に画像使用に関しては著作権、肖像権、撮影許可の確認を厳格に行った。
この品質管理システムにより、大量制作でありながら重大なトラブルを回避。親会社のガイドラインも遵守し、企業としての信頼性も維持することができた。同時に、チェックプロセスの効率化も進め、品質と生産性の両立を実現する。
特に画像に関しては、著作権や撮影可否の確認を含めた専任の監査体制を設置。親会社のガイドラインに準拠し、リーガルリスクを最小限に抑える運用体制を整えた。
結果
月間100〜200本の安定的な制作体制を構築し、1年以内に100万MAUを達成。トレンドとエリア特化を掛け合わせたコンテンツSEO施策により、継続的な流入の仕組みを構築した。
また、品質・効率・リスク管理のバランスを取った制作プロセスを確立し、分業体制と目標管理により、各メンバーの専門性とモチベーションを最大限に引き出す運用体制を整備した。
このプロジェクトでは、「分業による生産性向上」と「多段階の品質管理体制」を両立したことが大きな成功要因となった。特に、ユーザー行動に即したトレンド分析と地域特化戦略により、大手プレイヤーに埋もれず独自のポジションを確立。持続的な成長を支える仕組みを整備できたことが、中長期のメディア価値向上にもつながった。
タグ: コンテンツ制作, プロジェクトマネジメント
