大手IT企業の子会社として新規メディア事業を立ち上げる際、親会社から明確な事業計画と撤退条件が課されるケースがある。中でも、大規模なユーザー獲得を短期間で達成することが前提となり、未達成の場合は撤退という厳しい条件が提示されることも少なくない。 このような状況下で、中規模のチームが大きな目標を達成するためには、限られた人数で効率的に組織を運営する必要がある。従来のフラットな運営では限界が生じやすく、一人のリーダーがすべてを管理するのでは、チーム全体のパフォーマンス維持が困難になる。 特に、チーム規模が10人を超えると、個々のメンバーへの細やかな対応や、全体の方向性統一が難しくなり、目標達成に向けた組織的な取り組みが機能しなくなる。さらに、目標が大きくなればなるほど、個人の努力や裁量に依存した運営では、限界が見えやすくなる。

中規模チームで大きな目標を達成するには、人数に応じた適切な責任分散と、全員が数字を意識できる可視化の仕組みが重要になる。10人を超えた段階でチームを分割し、1チーム6〜7人規模としたうえでリーダーを配置、それぞれのリーダーに明確な責任を持たせること。 各チームリーダーは「自分の責任で目標を達成しなければならない」という意識を持ち、チーム間で切磋琢磨しながら、現場での意思決定の速さと、チームごとの主体性を両立するようになる。具体的には、週に1回のリーダー会議を設け、進捗報告や課題の共有、リカバリー案の検討を実施する。 会議では他チームからのフィードバックを取り入れることで、チーム間の温度差をなくし、組織全体の足並みを揃えられる。また、チームごとの進捗やメンバー単位の達成状況を、オフィスのホワイトボードに掲示する。 チャットなどのクローズドな場ではなく、全員が見える場所に掲示することで、自然と目に入り、チーム間の意識の差や努力の度合いも共有されやすくなる。個々の作業完了時に自ら記録する運用とすることで、責任意識も強まる。 さらに、目標達成が近づくフェーズでは、アクティブユーザー数やトラフィック状況を毎日共有し、チーム全体に緊張感を持たせる。数字の動きを日常的に確認する習慣ができると、各自が自分の行動と成果を紐づけて考えられるようになり、判断の質も高まる。 このように、責任の分散と情報の可視化を組み合わせた運営体制を敷くことで、短期間で大きな目標を追う場面でも、組織全体がブレずに前進できる。特に、0→1や1→10を担うグロースフェーズでは、トップダウンで全体を統率しつつ、現場にも裁量と責任を持たせる仕組みが効果を発揮する。 一方で、より成熟した事業や50人を超える大規模な組織では、求められるマネジメントの手法が異なるため、このような体制は万能ではない。組織規模や事業フェーズに応じて、適切なマネジメント手法を選択することが重要。