商業メディアの収益化モデルを横展開するときに、注意すべきこと
岸 晃
Marketing Director / Consultant
想定場面や課題
特定のメディアでうまく収益化できているモデルを別のメディアに展開する際、「一度成功したモデルだから他でもそのまま使える」と安易に捉えてしまうのは、陥りがちな落とし穴のひとつだ。特にネットワーク広告やアフィリエイト広告など、複数の収益源を組み合わせて成長させたモデルを横展開する際に、メディアごとの特性やユーザー層の違いを軽視してしまうことがある。
例えば、旅行メディアで確立したモデルを若い女性向けのコスメメディアやシニア向けの暮らしメディアにそのまま適用しようとしても、UIやCMSの構造、ユーザーの広告への反応などが異なるため、うまくいかないことが多い。
実際に、あるメディアでは「この広告配置と内容であれば、1,000万円を目指せる」というモデルを構築し、他メディアにそのまま適用したところ、滞在時間やCTRが大きく下がり、問い合わせが増加。成果指標であるRPMも目標に届かず、仮説の見直しを余儀なくされた。
このように、表面的な手法だけをなぞっても、本来得られるはずの成果には結びつかない。だからこそ、「横展開=コピペ」ではなく、「モデルを基に、どう最適化するか」という視点が必要になる。
解決策
収益化できているモデルの横展開を成功させるには、「標準モデルのパッケージ化」と「受け手側の特性に合わせた調整」の両方が必要となる。まずは、もとの収益化モデルを「汎用的な型」として整理する。
例えば、
・ネットワーク広告とアフィリエイト広告の構成比
・PC/スマホごとの広告配置とサイズ例
・推奨するRPMやCPMの水準
・モニタリングの項目や頻度
などをまとめ、展開先でも再利用しやすい形に整える。
次に、展開先メディアに合わせた調整を行う。CMSやデザイン構造によって、同じ広告枠でも表示場所が変わり、IMPやCTRに差が出る。そのため、UIや導線に応じた仮置きからスタートし、A/Bテストや日次モニタリングを通じて最適な配置を探っていく。
また、ターゲットユーザーの広告に対する許容度にも着目する必要がある。たとえば、若年層であれば広告慣れしていて反発が少ないが、年配層には拒否感を示す傾向が強い、など。どこまで踏み込むかの判断基準をチームで持ち、問い合わせ件数や滞在時間と照らし合わせながら進めることが重要だ。
さらに、広告ごとのRPMを分解して、どの枠が高いのか・低いのかを検証。成果が出ていない場合は「クリエイティブの質」「掲載位置」「ユーザーの質(回遊率・離脱率)」などの観点から仮説を立てて見直す。
このように、横展開を「最初のモデルを活用しつつ、新しい環境での最適解を探るプロセス」としてとらえることで、形式だけに頼らない本質的な収益化が可能になる。

