オーガニック経由のリード獲得で失敗続きのヘルスケア企業
オウンドメディアを抜本的に見直し、立ち上げ3年で半期1.5億円の売上創出
田島 光太郎
Marketing Planner / Consultant
背景
法人向けヘルスケア関連サービスを提供するヘルスケア企業は、C向けサービスで培ったノウハウを活用し、法人市場への進出を図っていた。しかし、広告運用によるリード獲得では一定の成果が見られたものの、オーガニック流入からのリード獲得はほとんどなく、さらなるマーケティングの強化に課題を抱えていた。
これまで、他商材でもオウンドメディアを立ち上げ、オーガニックからの獲得強化を幾度か試みてきたが、社内に十分なノウハウや運用リソースがなく、成果を得るには至らなかった。それ以来、オーガニック施策が進展しない状況が続いていた。
そんな状況はありながらも、法人市場への進出にオーガニック獲得の強化が欠かせないことは明白だったため、「いかに成果を出すか?」という観点から、オーガニック獲得の戦略策定が求められた。すでに法人向けサービスサイトの構築は確定事項としてあったため、そのドメインを活かしたオウンドメディア運用を前提とし、獲得強化プロジェクトが発足した。
しかし、過去の失敗経験から投入予算は限られており、運用体制は未経験メンバー1名のみ。限られたリソースで、最大限の成果を得るためのプランニングからスタートした。
具体的なプロセス
STEP
1
ターゲット調査に基づき、必要最低限のサイトをスピーディに制作
オウンドメディア施策を立ち上げるにあたりサイト制作が必要となったが、限られた予算やリソースを考慮する必要があった。立ち上げ初期はボトムアップで成果を作ることが求められていたため、ここでリッチなサイトを時間をかけて作り込むよりも、早々に運用に移るほうが重要であると判断。
BtoBサイトにおける最低限の機能を備えたシンプルなサイトを迅速に構築する方針を採用した。
まず、ターゲットと商材の理解を進めたうえで、カスタマージャーニーを整理。セールスチームへのヒアリングなども行い、どのような課題・ニーズをもった人物を想定するか、それら人物をどのようにCVまで導くかのストーリーを仮説立てた。
サイトやコンテンツの構造、ディレクトリ構造、UI設計などに落とし込みつつ、スケジュールや予算見合いで余分な機能は削り、スピーディにサイト・オウンドメディアの立ち上げを行った。
STEP
2
一次情報を重視したコンテンツの磨き込み
健康増進や福利厚生サービスの見込み客の獲得が目的のため、これら導入検討を行う企業担当者の検索キーワードをいかに押さえるかが重要である。
そこで、前述のカスタマージャーニーをもとに、キーワード設計を実施。これまで受注に至った企業の傾向をセールスチームともすり合わせ、それらの情報をもとにコンテンツの方向性や対策キーワードを定めた。
しかし、対策キーワードの検索結果をみると、すでに競合他社がひしめいている状況。真っ向勝負しても勝ち目が薄かったため、ターゲットにとって有益な情報とはなにか?を突き詰めた結果、一次情報の積極的な活用を方針として定めた。
これまでtoC事業で培ったメソッドや、独自の調査結果など、自分たちだから出せるを活用し、記事コンテンツの作り込みを徹底した。
STEP
3
指名クエリの検索市場を突き止め、獲得に徹底注力
一次情報の積極活用もあり、選定したキーワードでの上位表示が増加する一方で、リードの伸び悩みが課題として浮上した。というのも、福利厚生市場全体が成熟し、顧客が選びきれないほどにサービスラインナップが溢れていたのだ。
それにより、競合他社に流れるケースや、自社の提供サービスが特定のニーズがないと検討対象になりにくいという構造的な問題も判明した。
しかし、リード獲得の状況を細かく見ていくと、自社サービスの指名クエリのかけ合わせ検索が発生し、リード獲得に寄与していることが判明した。指名クエリが集中していた特定のページでは、訪問数は少ない一方で、他の対策記事以上のリードを生んでいた。
ニッチではあるものの、一定の検索需要があると判断し、指名クエリを軸としたキーワード設計にシフトチェンジ。それまでの対策記事はメンテナンスをすべてストップし、数十ある指名クエリのかけ合わせキーワード群の対策に一気に振り切った。
指名クエリのなかでも、サービス問い合わせに直結するものもあれば、単なる情報収集と思われるクエリも存在した。それら検索意図の違いにあわせてCVポイントも変えながら、サイト全体のリード獲得最大化に向けた地道な改修を繰り返し続けていった。
結果または成果
立ち上げ3年で年3,000リードまで成長、半期の受注金額は1.5億円に
オウンドメディア施策は立ち上げ当初から順調に成長を続け、順調にリード数を伸ばしていった。立ち上げ翌年度には年1,000リード、その翌年度は年2,000リードと常にリード数の更新を続け、立ち上げ3年で年3,000リードの創出に成功した。
ただやみくもにリードだけが増えても意味がないため、リード数以外に、オウンドメディア経由の商談、受注状況もモニタリング。獲得リードから商談もうまれており、事業としてもインパクトのある商談を生んでいることがわかった。
また、オウンドメディア運用のなかで、サービスラインナップが追加されることもあったが、早々にオウンドメディアが貢献したことも大きい。すでに一定のターゲット獲得ができていたため、CTAのチューニングだけでもリード獲得を行うことができた。
それらも功を奏し、立ち上げから3年目の年度では、上半期で約1.5億円の受注がオウンドメディア経由で生まれた結果となった。当初、未経験メンバー1名の運用でスタートしたオウンドメディアプロジェクトだが、人の入れ替わりはあれど、人数自体は変わっていない。
限られたリソースではあったが、攻めるポイントを見定めることで、事業貢献につながった取り組みとなった。

