誰もピンと来なかった「セッション共有」が、AI時代のマネジメントを変えるかもしれない

寺倉 大史
Director寺倉 大史

正直に書きます。

「AIとのセッションを共有しよう」と社内で提案したとき、反応は薄かった。盛り上がらなかった。

セッション共有というのは、AIに出した指示、AIの返答、それに対する修正指示、試行錯誤の過程——つまりAIとのやり取りの一部始終を、チームメンバー同士で見せ合うことです。

まあ、盛り上がらないですよね。聞いた瞬間に「おっ」とならないテーマです。画期的な新ツールの話でもないし、劇的な数字の変化でもない。「共有しましょう」って、なんか地味じゃないですか。

でも、しばらく経って、ふと立ち止まって考えたときに気づいたんです。

これ、無茶苦茶重要だったと。

アウトプットのレビューが機能しなくなっている

AI時代に、マネジメントの前提が変わってきていると感じます。

たとえば、ジュニアメンバーから上がってきたアウトプットを見て、フィードバックする。これは従来のマネジメントの基本動作です。成果物を見て、良し悪しを判断して、改善点を伝える。

でも、AIを使って仕事をするようになると、この構造に違和感が出てくる。

なぜかというと、アウトプットの大部分をAIが作るからです。

メンバーが提出してきた提案書。文章はきれいに整っている。構成もロジカル。でも、それはAIが整えた結果であって、メンバーの思考力や判断力を反映しているとは限らない。逆に、荒削りなアウトプットが上がってきたとしても、そのメンバーの指示の出し方やデータの選び方が正しければ、あとはAIの使い方を少し変えるだけでクオリティは上がる。

つまり、完成したアウトプットを見ても、メンバーの「仕事のやり方」が見えなくなっている。

これは、マネジメントにとって結構深刻な問題です。成果物のレビューだけでは、メンバーをどう育てればいいか、どこに課題があるのか、どこが伸びているのか、判断できなくなってきている。

本当に見るべきは「指示の組み立て方」だった

ここで、セッション共有の話に戻ります。

ジュニアメンバーのアウトプットに対して「ここをこう直して」とフィードバックする。それも大事です。でも、もっと上流で見るべきものがある。

どのデータを使っているのか。どういうコンテキストを設定しているのか。どういう指示を出しているのか。

この3つです。

同じAIを使っても、アウトプットの質に大きな差が出る。その差は、AIの性能ではなく、人間の「指示の組み立て方」から生まれます。

どんなデータを食わせるかで、AIの出力は根本的に変わる。どういう背景情報を与えるかで、的外れにも的確にもなる。「こういう前提で、こういう目的で、こういうアウトプットが欲しい」という指示の精度が、そのまま成果物の精度になる。

AIセッションを見ると、これが全部わかるんです。

テキストとして残っているから。プロンプトから応答、修正指示、方向転換、最終出力まで、一連の流れがそのまま記録されている。

アウトプットのレビューでは見えなかったものが、セッションを見ると丸見えになる。

ここに気づいたとき、「セッション共有」が急に違う意味を持ち始めました。

セッション共有は「新しいマネジメント手段」になるかもしれない

従来のマネジメントでは、仕事のプロセスを把握するために、日報を書かせたり、進捗会議を開いたり、1on1で聞き出したりしていました。でも、これらはすべて「本人の言語化能力」に依存しています。本人がうまく説明できなければ、プロセスは見えないまま。

AIセッションの共有は、この問題を解決する手段になりうると感じています。

本人が意識して記録する必要がない。普通にAIと仕事をしていたら、思考のプロセスがそのままテキストとして残っている。どういう順番で考えたか、何を調べたか、どこで判断に迷ったか、なぜその方向に進んだか。言語化のスキルに関係なく、プロセスが可視化される。

これは、マネジメントの手段として相当使えるのではないかと思っています。

たとえば、あるメンバーがキーワード選定の自動化スキルをデモしたときのこと。見ていた別のメンバーが「めちゃいい」と反応して、すぐに自分の業務に取り込み始めた。

後からそのメンバーに聞くと、学んだのは「キーワード選定ツールの使い方」ではなかった。学んだのは、業務をAIに任せるときの設計の仕方でした。

どういうデータを渡すのか。どういう順番で処理させるのか。どこまでをAIに任せて、どこに人間の判断を挟むのか。ツールの背後にある「思考の組み立て方」を、セッションを見ることで読み取っていた。

教えていないのに、暗黙知が伝わっている。

これが、提案したときには誰もピンと来なかった「セッション共有」の正体なのかもしれません。

「教える」のではなく「見える」にする

従来の組織学習は、「教える→教わる」の一方向でした。

得意な人がマニュアルを作る。勉強会を開く。プロンプト集を共有する。これらは意味がないわけではありません。でも、根本的な限界がある。教える側の負担が大きいし、教えた内容がすぐに古くなる。AIの世界では、先週のベストプラクティスが今週はもう使えないということが普通に起きます。

セッション共有は、「教える」のではなく「見える」にする仕組みです。

教える構造 見える構造
得意な人がマニュアルを作る 全員のプロセスが自然に見える
勉強会で説明する 日常業務の中で学びが起きる
質問があれば答える 見ているだけで気づきがある
教える人がいないと止まる 特定の誰かに依存しない
教えた内容がすぐ古くなる 最新のプロセスが常に見えている

しかも、得意な人のセッションからだけでなく、初心者のセッションからも学びが生まれることがあります。初心者ならではの素朴な指示が、意外と良い結果を引き出していたりする。なぜそうなったのかを分析すると、ベテランにとっても新しい発見になる。

全員が「教える側」でもあり「学ぶ側」でもある。この構造が、セッション共有の本質です。

地味だけど、仕組みがないと回らない

「セッション共有が重要なのはわかった。でも具体的にどうやるのか」

大掛かりなシステムは必要ありません。私たちがやっていることは3つだけです。

1. 見せる場を定期的に設ける

定期的に、メンバーが自分のAIセッションを見せる場を設けています。私たちは開発ミーティングと呼んでいますが、形式は問いません。重要なのは、完成品を発表する場ではないということ。途中経過でも、うまくいかなかったものでも構わない。むしろ、失敗したセッションのほうが学びは深いことがあります。

2. 記録を自動で残す

手動で記録を取ろうとすると、続きません。私たちは会議データや日常のやり取りが自動でテキストとして蓄積される仕組みを作っています。AIとのセッション自体がテキストベースなので、ハードルは低い。「記録を残す」を個人の努力に頼らないこと。仕組みとして自動化しておくことが、続けるための条件です。

3. 試せる動線を作る

セッションを見て「これいいな」と思ったとき、そこからアクションまでの距離が短いほど、学びが定着します。たとえば、スラッシュコマンドで呼び出せるスキルとして共有すれば、他のメンバーは「/」と打つだけで試せる。見て、触って、自分のものにする。この動線があるかないかで、横展開の速度はまったく変わります。

盛り上がらないテーマにこそ、本質が隠れている

最後に、一つだけ。

「セッション共有」が提案時に盛り上がらなかったのは、当然だと思います。派手さがない。すぐに目に見える成果が出るわけでもない。「AIツールを導入しました!」のほうが、ずっとわかりやすい。

でも、AI時代のマネジメントで本当に必要なものは何か。

アウトプットはAIが作る。じゃあ、人間の仕事の良し悪しはどこで判断するのか。メンバーの成長はどこで見るのか。チーム全体の力をどう底上げするのか。

その答えの一つが、「指示の組み立て方を可視化する」ことであり、それを自然に実現するのが「セッション共有」なのではないかと、今は考えています。

地味なテーマだからこそ、見過ごされやすい。でも、地味なものが地味なまま組織に浸透したとき、気づいたら競争力になっている。私たちは、そういう種類の変化を大事にしたいと思っています。

この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。

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著者

寺倉 大史

寺倉 大史

Director

業界歴10年以上。マーケティング全体の戦略、プランニング、PM、組織開発など幅広く累計100社以上を支援。藍染職人、株式会社LIG執行役員を経て、デジタルマーケティングカンパニー『MOLTS』を設立。

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