通信大手のドローン事業、既存市場での差別化とブランドイメージ確立に課題

競合との差別化を戦略的に設計し、ブランドイメージの確立と差別化を実現

本ケーススタディスタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。

背景

大手通信会社は、ドローンと遠隔通信技術を活用し、企業の業務効率化や安全性の向上を支援するBtoB向けの新規事業を開発していた。しかしこの分野では、すでに複数の競合サービスが市場に出ており、機能面での差はあっても、サービスサイトの内容はどれも基本的な機能紹介にとどまっていた。視覚的な違いも少なく、ブランドとしての印象にも差が出にくい状況だったため、独自性を打ち出す余地があった。こうした中、同社では、当初からブランドのあり方を意識してプロダクト開発を進めていたものの、正式なサービス提供を控えた段階でも、競合との差別化は十分とは言えなかった。サービスの中核となるプロダクトが完成に近づく中で、これまでの開発成果を活かしながら、体験全体に一貫性を持たせる「ブランドの顔」を整える必要があった。単なるドローンサービスとしてではなく、業界に変化をもたらす存在として認知されるために、より踏み込んだ戦略設計とデザインの構築が求められていた。

補足要件

  • 開発されたUIとの一貫性を保ちながらブランドデザインを構築する必要があった
  • 複数の業種をターゲットとしており、幅広い層に訴求できるデザイン設計が求められた
  • オンラインだけでなく、展示会などオフラインでの体験も含めた一貫したブランド体験の設計が必要だった
  • 社内での内製化も視野に入れ、実務に即したガイドライン整備が重要だった

具体的なプロセス

STEP 1

ブランドの方向性とコミュニケーション戦略の策定

まず取り組んだのは、ブランドの土台となる要素の整理。複数の業種を対象とするサービスであることを踏まえ、まずは想定されるユーザータイプを分析。業種ごとの違いや共通点を整理しながら、ペルソナや行動フローを構築した。これにより、必要なタッチポイントと、各接点で伝えるべきメッセージの軸を明確にできた。あわせて、競合他社のサービスも分析し、差別化できるポイントを抽出。多くの競合が機能や技術スペックの紹介にとどまっている状況を踏まえ、「業界変革」という視点を軸にブランドを構築する方針を固めた。サービスが持つポテンシャルを広くとらえ、「安全性向上」や「効率化」といった機能的な価値に加え、「働き方改革」や「新しい働き方の提案」といった未来志向の価値までを言語化・視覚化し、情緒的価値の訴求にも取り組んだ。さらに、営業時・導入時・利用時・サポート時といった各タッチポイントを全体的に見渡し、それぞれの役割や展開内容を整理。ユーザーの理解を深め、より身近な存在として届けるためのツールの検討も進めた。また、展示会への出展も予定されていたため、オンラインとオフラインで統一感のあるブランド体験を提供するためのコミュニケーション設計も行った。

詳細アドバイス
ブランド価値は、3つの視点で立体的に捉え、整理する
認知段階に応じたタッチポイント設計で、差別化と体験の一貫性を生む方法
STEP 2

MVVに基づくビジュアル計画と素材制作

定まったコンセプトと方針をもとに、ビジュアル計画を具体化。まず、MVV(Mission・Vision・Value)を視覚的に表現するために、それぞれに対応する表現ルールを定義。Missionでは、人・データ・ドローンによって構成される新しい働き方を想起させる写真や映像を活用し、情緒的価値の訴求を重視。Visionでは、具体的な提供内容を図式化したイラストレーションを用いることで、機能的価値と情緒的価値の両立を意識したビジュアルを設計した。Valueでは、実際の利用シーンを伝える写真や、ピクトグラムとの組み合わせを通じて、現場での活用イメージを具体的に示した。これらの表現方針をもとに、各種ビジュアル素材を制作。タッチポイントごとの目的に応じて柔軟に運用できるよう、全体の構成やバランスにも配慮した設計を行った。さらに、プロトタイプフェーズで構築されたプロダクトのUIとの一貫性も重視し、ブランドとしてのビジュアルデザインとプロダクトデザインを統合。その結果、ブランド全体として一体感のあるユーザー体験を実現することができた。

詳細アドバイス
MVVを元に、ブランドの視覚表現を伝わる形に整える方法
失敗しがちなビジュアル計画の合意形成を、円滑にする進め方
STEP 3

ブランドガイドラインの整備とコミュニケーションツールの展開

継続的なブランド運用を見据え、まずは最小限の内容からブランドガイドラインの整備を開始した。各要素の使用ルールや展開方法を整理し、段階的にブランドが実践レベルで運用できる状態へと移行させていった。さらに、プロダクト側で整備されていたUIガイドラインとも連携させ、デザインシステムとして機能するよう土台を構築。企業内での内製化も視野に入れ、実務に即した現実的な内容となるよう意識した。また、サービスの正式リリースと同時に展示会への出展も予定されていたため、オフラインでブランドを伝えるためのコミュニケーションツールも必要だった。そのため、サービス案内資料やスタッフTシャツといった基本的なアイテムに加え、このサービスの特徴を反映したグラフィックやノベルティの企画・制作を行った。ツール設計にあたっては、ブランドの遊び心と、ユーザーが日常的に使える実用性とのバランスを重視し、具体的な内容を丁寧に計画した。

詳細アドバイス
最小限から始める、ブランドガイドラインの整え方
ブランドらしさと、実用性を両立させる展示ツールの設計方法

結果または成果

プロダクト開発とブランディングを両立、かつ、継続運用の基盤も構築

明確なブランド戦略を策定したことで、機能的な優位性に加え、情緒的な価値も訴求できるようになった。その結果、競合サービスとの差別化を実現し、「業界変革」という視点をもったサービスとしてのポジションを確立。また、デザインシステム化を見据えて、ミニマムな構成から段階的に整備したブランドガイドラインにより、オンライン・オフラインを問わず統一感のあるビジュアルとメッセージの展開が可能に。企業内での持続的なブランド運用を支える基盤として、一貫したブランド体験を提供できる状態を構築した。プロトタイプ段階から伴走支援を続けたことで、プロダクト開発とブランド構築の両面から事業全体の競争力向上に寄与。機能訴求にとどまらず、情緒的価値を重ねて伝えることで、ユーザーに新しい働き方の可能性を感じさせるブランド体験を創出し、サービスの市場における存在感を高めることができた。

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企業

株式会社KAAAN

純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略

プロセスでなく、成果を、事業成長を提供

KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。

著者

藤牧 篤

Design Director

1974年、栃木生まれ。クリエイティブプロダクション数社にて、デザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクター、デザイン部門マネージャーを務める。新規事業におけるプロトタイピング、プロダクトのインターフェイスデザイン、ブランドの構築や改善、空間演出など、包括的なクリエイティブ支援を経験。事業開発におけるプロダクト設計やブランド構築に横断的に関わり、可視化や具体化の領域を幅広く担当する。2023年12月よりTHE MOLTSに所属、2024年9月よりKAAANに参画。