ブランドらしさと、実用性を両立させる展示ツールの設計方法

想定場面や課題

展示会やイベントなどで配布するツールを企画する際、ブランドらしさと実用性のバランスに悩む場面は少なくない。単に企業ロゴを入れただけでは印象に残りづらく、かといって奇抜すぎるアイデアは使いにくく、日常使いされることがない。特に、サービスの特徴を伝えつつ、受け手にとって使いやすいツールに落とし込むには、両立が難しい視点を整理しながら設計する必要がある。また、展示会は予算やスケジュールの制約が大きい中で準備を進めることが多く、サービス資料やスタッフのユニフォームなど、最低限必要なアイテムは決まっているが、それ以外にどのようなツールを追加するべきかの判断は簡単ではない。むやみに数を増やしても意味がなく、サービスをより魅力的に伝えるための軸が必要になる。ブランドの特徴を表現しながら、手に取った人の記憶や日常に残るツールをどうつくるかが課題となる。

解決策

この課題に対しては、サービスの特徴を日常的な機能に変換するという視点が有効だ。たとえば、あるドローン関連のサービスを提供している企業では、飛行時に必要な発着場の「H」のマークを象徴的なモチーフとし、それをマグカップ用のコースターに見立ててツール化した。受け手にとって馴染みのあるアイテムに、ブランドのらしさを投影することで、サービスやブランドらしさと実用性を両立できる。このように、まったく新しいものをゼロから考えるのではなく、すでに生活にある機能や形にブランド要素をのせていく方が、理解や使用イメージのしやすさにつながる。そうすることで受け手に自然とブランドの印象を届けることができる。アイデアを検討する際には、まずサービスのキーワードやメタファー、象徴的なモチーフを整理し、それをどのように日常に置き換えるかを考える。さきほどのドローンのサービスでいうと、「発着」「離陸」「繰り返し使われる」といった動作や状態を、どんな使い方に見立てられるかという視点から検討を進めた。さらに、「必ず必要なもの」「あったら日常的に使ってもらえそうなもの」「そのブランドだけが展開できる特徴的なもの」という3つのレベルで整理してみる。3つのレベルに整理することで、展示会のように限られたリソースの中で進めるプロジェクトでも、必要性と意図をもとに、段階的に設計でき、無理なく効果的な選択ができるようになる。実際の進め方としては、まず、サービス紹介や営業、商談に必要なパンフレットや名刺など、必ず必要なアイテムを定義し、それをもとに自由にアイデアを発散。その後、予算やスケジュールに応じて現実的な形に絞り込んでいく。この段階での判断は、サービスらしさに照らし合わせて行うと、無駄な議論が生じにくく、スムーズな合意形成にもつながる。配布時には、色違いやデザイン違いの複数のバリエーションを用意し、来場者が自分で好きなものを選べるようにしたことで、ツールそのものへの満足度も高まり、会話のきっかけやブランドへの関心にもつながった。機能的でありながら遊び心もある設計は、体験としても強く記憶に残る結果になりやすい。抽象的なブランド要素を無理に説明しようとせず、受け手の日常に自然に置き換える視点を持つことが、伝わるツールづくりの第一歩になる。

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