使いやすいプロダクトは、主要な体験フローを定義し、軸をブラさない

藤牧 篤

藤牧

Design Director / Project Manager

想定場面や課題

プロダクト開発が進む中期フェーズでは、初期に実装した最低限の機能に加えて、さまざまな追加要素が増えてくる。しかし、この段階で全体の「体験の流れ」を意識せずに機能を追加していくと、ユーザーにとって操作がバラバラでわかりにくくなる。

結果として、プロダクトの目的が達成しづらくなるケースがある。例えば、産業用無人機の飛行ログを取得する機能が先に作られていたとする。後から追加されたログ分析やレポート出力の画面が別メニューで独立していた場合、ユーザーは何度も画面を行き来することになり、使い勝手が悪くなる。

初期プロトタイプでは「ログが取れればよい」と定義していたとしても、その設計のまま新機能を積み重ねていくと、全体の構造がちぐはぐになりやすい。気づけば、操作が細切れになり、どこで何をすればよいか分かりづらいプロダクトになってしまう。

こうした状況を防ぐには、機能ごとの実装に入る前に「ユーザーはどんな流れで目的を達成するのか」という視点で、主要な操作シナリオを整理しておくことが必要となる。

解決策

具体的には、「ユーザーがどの順番で、何をして、どこにたどり着くか」を一連の体験として定義する。例えば「運行ログを取得→データを分析→レポートとして出力」という流れになるとする。そのすべてがスムーズにつながる状態をプロトタイプでつくり、実際に触って検証できるようにする。

このような体験フローを明確にしておくことで、設計段階から「この画面の次はどこへ遷移するのか」「どの情報が引き継がれるべきか」といった論点が見えてくる。また、後から追加される機能に対しても、「この体験フローにどう組み込むべきか」と判断しやすくなる。

検証の際には、実際のユーザーの操作感をもとに「どこで迷ったか」「戻りたくなった箇所はどこか」といった細かい観察が重要になる。そこから改善の優先順位をつけることで、使いやすさの向上と開発効率の両方を実現できる。このタイミングで、インターフェースの統一性にも意識を向けたい。

例えば、ボタンの配置やサイズ、導線のパターンがページごとに違っていると、ユーザーは戸惑ってしまう。そのため、デザインガイドラインやスタイルガイドを整備し、全体のUI設計に一貫性を持たせておくとよい。定義された主要な体験フローは、今後の開発の「軸」になる。

プロダクトが成長する中で新機能が追加されていっても、この軸があることで設計のブレが減り、ユーザーにとって自然な体験を保ち続けられる。体験設計を「あとから整えるもの」と捉えるのではなく、「中期フェーズから先に決めておくべきもの」と位置づけることで、プロダクトの完成度は大きく変わってくる。

著者

藤牧 篤

藤牧 篤

Design Director / Project Manager

デザイナーからクリエイティブディレクター、マネージャーを歴任。2024年9月よりKAAANに参画。事業開発を中心にプロダクト設計、ブランド構築、インターフェイスデザインなど、クリエイティブ領域を幅広く担当。

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