大手菓子メーカー、ECとブランドの役割が曖昧で魅力が伝わらない ブランドサイト・ECの役割を整理、オンラインとオフラインのユーザー体験を改善

著者: 株式会社KAAAN 藤牧 篤

背景

オンライン・オフラインでサービスを展開する菓子メーカーは、手頃な価格帯の商品ラインナップと品質へのこだわりで長年多くのファンを獲得してきた。一方、デジタル領域では複数の課題を抱えており、ブランドサイトとECサイトが役割を明確に切り分けられないまま運用されていたことから、ユーザーにとって情報取得の導線がわかりづらい状態となっていた。 また、インフラ面の連動性にも課題があり、一部のシステム障害が他チャネルにも波及するリスクが顕在化していた。加えて、商品の認知度は高いものの、企業としての価値や背景が十分に伝わっておらず、価格中心の印象に偏っていた点もブランド側の懸念として挙がっていた。 こうした状況を受けて、あらためて価値訴求の軸を整理し、ブランドサイトとECサイトの役割を再定義。オンライン・オフラインを横断したブランド体験の再構築に取り組むプロジェクトが始動した。

STEP1

初期段階では、既存サイトの構造や活用状況、各部門の認識を整理し、全体像の把握に注力。サイトは長期間おなじデザインのまま運用されており、現代的なユーザー体験とは乖離していた。 まずは「何を維持し、何を改修すべきか」を明確にするため、部署横断でヒアリングと情報収集を実施。調査の結果、商品点数の多さや開発サイクルの短さ、複雑なEC購入フローなどが主要なボトルネックであることが明らかになった。 ECシステムは既存のパッケージを大幅にカスタマイズして運用されており、改修に際してはシステムの柔軟性と制約を見極める必要があった。これらを踏まえ、オンライン・オフラインでのタッチポイントを洗い出し、それぞれの役割と関係性を整理。今後の設計方針を定める基盤とした。

STEP2

次に、STEP1で整理した接点の役割を明確化し、具体的なアクションへと落とし込んだ。最優先で取り組んだのは、ブランドサイトとECサイトのシステム分離と役割分担の明確化。 ブランド訴求と販売機能を切り離すことで、どちらの目的にも最適化された構造を実現した。あわせて、SNS運用を新たにスタートし、デジタル接点の拡張に着手。チラシやパッケージへのQRコード導入も進め、オンラインとの連携を強化した。 ただし、SNS運用に対する社内知見は乏しく、導入初期はレクチャーや投稿サンプルの提供など、基礎知識のレクチャーを丁寧に行った。また、パッケージの刷新は商品サイクルの速さも影響し、短期的な変更が難しいことも判明。 こうした対応を通じて、各タッチポイントごとの機能・目的を定義、それに応じた運用体制やコンテンツ方針を構築。組織全体での認識統一も目指した。

STEP3

実行フェーズでは、策定した計画に沿って、各接点におけるブランド体験の強化に取り組んだ。ブランドサイトでは、製品の背景にある品質やこだわりを伝える新たなコンテンツを制作。素材の選定理由や製造プロセスに関する情報を可視化し、信頼性のある商品像を伝える構成とした。 主要な原材料に焦点を当てた特集コンテンツを展開し、商品の魅力を多面的に伝える工夫も加えた。ECサイトでは、実店舗の世界観を反映したデザインを取り入れ、ブランド全体での一貫性を担保。 あわせて、ユーザー導線の改善や購入手続きの簡素化にも着手し、使いやすさの向上を図った。SNSにおいては、発信の継続性と他チャネルとの連動性を高める運用体制を構築。ブランドサイトやECサイトとのコンテンツ連携を通じて、全体の情報設計を最適化した。 制作過程では、関係者との丁寧なコミュニケーションを重視し、現場への理解を深めながら、共同での表現づくりを進めた。

結果

ブランド発信と購買導線それぞれの役割が整理され、各チャネルが独立して機能する運用体制が整備された。ブランド発信の場では、新たな価値軸を掲げたコンテンツが展開され、企業としての姿勢や思想を伝える役割を担いはじめている。 また、新たに開始したSNS運用によって顧客接点が拡大し、情報発信の即時性と利便性が向上。オフライン施策との連携も進み、店頭ツールや印刷物を起点としたオンライン誘導の仕組みが構築された。 プロジェクト全体を通しては、関係者間での丁寧なコミュニケーションが推進力となり、ブランドの方向性を共有した上で、コンテンツの表現トーンやビジュアル設計に至るまで一貫性のある設計が実現された。その結果として、ブランドの価値を適切に届けるデジタル体験が構築された。
タグ: クリエイティブヒント, サイト設計, 部門間連携

大手菓子メーカー、ECとブランドの役割が曖昧で魅力が伝わらない

ブランドサイト・ECの役割を整理、オンラインとオフラインのユーザー体験を改善

本ケーススタディスタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。

背景

オンライン・オフラインでサービスを展開する菓子メーカーは、手頃な価格帯の商品ラインナップと品質へのこだわりで長年多くのファンを獲得してきた。一方、デジタル領域では複数の課題を抱えており、ブランドサイトとECサイトが役割を明確に切り分けられないまま運用されていたことから、ユーザーにとって情報取得の導線がわかりづらい状態となっていた。また、インフラ面の連動性にも課題があり、一部のシステム障害が他チャネルにも波及するリスクが顕在化していた。加えて、商品の認知度は高いものの、企業としての価値や背景が十分に伝わっておらず、価格中心の印象に偏っていた点もブランド側の懸念として挙がっていた。こうした状況を受けて、あらためて価値訴求の軸を整理し、ブランドサイトとECサイトの役割を再定義。オンライン・オフラインを横断したブランド体験の再構築に取り組むプロジェクトが始動した。

補足要件

  • 広告費を投下しない企業方針のもと、口コミと商品力で成長してきた
  • SNSは未運用で、社内にデジタルマーケティングの知見が乏しい状況だった
  • 商品サイクルが早く、入れ替わりも激しい
  • 自社工場による生産から配送までの一貫体制を強みに持つ

具体的なプロセス

STEP 1

現状分析と情報収集による課題の可視化

初期段階では、既存サイトの構造や活用状況、各部門の認識を整理し、全体像の把握に注力。サイトは長期間おなじデザインのまま運用されており、現代的なユーザー体験とは乖離していた。まずは「何を維持し、何を改修すべきか」を明確にするため、部署横断でヒアリングと情報収集を実施。調査の結果、商品点数の多さや開発サイクルの短さ、複雑なEC購入フローなどが主要なボトルネックであることが明らかになった。ECシステムは既存のパッケージを大幅にカスタマイズして運用されており、改修に際してはシステムの柔軟性と制約を見極める必要があった。これらを踏まえ、オンライン・オフラインでのタッチポイントを洗い出し、それぞれの役割と関係性を整理。今後の設計方針を定める基盤とした。

詳細アドバイス
サイト構造の設計は、情報の流れを考慮して使いやすさを突き詰める
サイト構造が複雑化し、伝えたい価値を届けられない理由
ブランドサイトとECは分けるべきか?統合すべきか?
STEP 2

タッチポイントの再定義と実行計画の策定

次に、STEP1で整理した接点の役割を明確化し、具体的なアクションへと落とし込んだ。最優先で取り組んだのは、ブランドサイトとECサイトのシステム分離と役割分担の明確化。ブランド訴求と販売機能を切り離すことで、どちらの目的にも最適化された構造を実現した。あわせて、SNS運用を新たにスタートし、デジタル接点の拡張に着手。チラシやパッケージへのQRコード導入も進め、オンラインとの連携を強化した。ただし、SNS運用に対する社内知見は乏しく、導入初期はレクチャーや投稿サンプルの提供など、基礎知識のレクチャーを丁寧に行った。また、パッケージの刷新は商品サイクルの速さも影響し、短期的な変更が難しいことも判明。こうした対応を通じて、各タッチポイントごとの機能・目的を定義、それに応じた運用体制やコンテンツ方針を構築。組織全体での認識統一も目指した。

詳細アドバイス
ブランド価値を高めるために、点で終わらせないブランド接点のつなぎ方
実店舗とデジタルの統一感を作るための、ブランドガイドラインの要点整理
STEP 3

コンテンツ拡充とデザイン統一による体験価値の向上

実行フェーズでは、策定した計画に沿って、各接点におけるブランド体験の強化に取り組んだ。ブランドサイトでは、製品の背景にある品質やこだわりを伝える新たなコンテンツを制作。素材の選定理由や製造プロセスに関する情報を可視化し、信頼性のある商品像を伝える構成とした。主要な原材料に焦点を当てた特集コンテンツを展開し、商品の魅力を多面的に伝える工夫も加えた。ECサイトでは、実店舗の世界観を反映したデザインを取り入れ、ブランド全体での一貫性を担保。あわせて、ユーザー導線の改善や購入手続きの簡素化にも着手し、使いやすさの向上を図った。SNSにおいては、発信の継続性と他チャネルとの連動性を高める運用体制を構築。ブランドサイトやECサイトとのコンテンツ連携を通じて、全体の情報設計を最適化した。制作過程では、関係者との丁寧なコミュニケーションを重視し、現場への理解を深めながら、共同での表現づくりを進めた。

詳細アドバイス
伝わるサイト設計は、文脈と情報配置の順序設計から始まる

結果または成果

ブランドとECの役割分離 × 品質訴求の強化で統一された体験と接点創出を実現

ブランド発信と購買導線それぞれの役割が整理され、各チャネルが独立して機能する運用体制が整備された。ブランド発信の場では、新たな価値軸を掲げたコンテンツが展開され、企業としての姿勢や思想を伝える役割を担いはじめている。また、新たに開始したSNS運用によって顧客接点が拡大し、情報発信の即時性と利便性が向上。オフライン施策との連携も進み、店頭ツールや印刷物を起点としたオンライン誘導の仕組みが構築された。プロジェクト全体を通しては、関係者間での丁寧なコミュニケーションが推進力となり、ブランドの方向性を共有した上で、コンテンツの表現トーンやビジュアル設計に至るまで一貫性のある設計が実現された。その結果として、ブランドの価値を適切に届けるデジタル体験が構築された。

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企業

株式会社KAAAN

純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略

プロセスでなく、成果を、事業成長を提供

KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。

著者

藤牧 篤

Design Director

1974年、栃木生まれ。クリエイティブプロダクション数社にて、デザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクター、デザイン部門マネージャーを務める。新規事業におけるプロトタイピング、プロダクトのインターフェイスデザイン、ブランドの構築や改善、空間演出など、包括的なクリエイティブ支援を経験。事業開発におけるプロダクト設計やブランド構築に横断的に関わり、可視化や具体化の領域を幅広く担当する。2023年12月よりTHE MOLTSに所属、2024年9月よりKAAANに参画。