老舗菓子メーカーのブランディング、ウェブ戦略の壁

ブランド価値の再定義と、ブランドサイト・ECの役割を整理、デジタル体験を改善

本ケーススタディスタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。

背景

全国展開する老舗菓子メーカーは、リーズナブルかつ高品質なスイーツで多くの顧客から支持を得ていた。一方で、デジタル領域では複数の課題を抱えていた。1つは、ブランドサイトとECサイトが混在し、それぞれの役割が不明瞭な状態で運用されていたため、ユーザーにとって目的の異なる2つのサイトの違いが把握しづらかった。加えて、ECサイトのサーバーがダウンするとブランドサイトまで停止するなど、技術面でのリスクも顕在化していた。また、商品そのものの認知はあるものの、企業名の認知には乏しく、「安くて美味しい」という価格訴求ばかりが先行し、品質や製造背景といった本来伝えるべき価値が適切に届けられていなかった。こうした課題を受け、「美味しいけど安い」という新たな価値軸を掲げ、ブランドサイトとECサイトの役割を再定義するプロジェクトが始動。オンラインとオフラインの接点を整理し、統一感のあるブランド体験を設計することが目的とされた。

補足要件

  • 広告費を投下しない企業方針のもと、口コミと商品力で成長してきた
  • SNSは未運用で、社内にデジタルマーケティングの知見が乏しい状況だった
  • 商品サイクルが早く、入れ替わりも激しい
  • 自社工場による生産から配送までの一貫体制を強みに持つ

具体的なプロセス

STEP 1

現状分析と情報収集による課題の可視化

初期段階では、既存サイトの構造や活用状況、各部門の認識を整理し、全体像の把握に注力。サイトは5〜6年前のデザインのまま運用されており、現代的なユーザー体験とは乖離していた。まずは「何を維持し、何を改修すべきか」を明確にするため、部署横断でヒアリングと情報収集を実施。調査の結果、商品点数の多さや開発サイクルの短さ、複雑なEC購入フローなどが主要なボトルネックであることが明らかになった。ECシステムは既存のパッケージを大幅にカスタマイズして運用されており、改修に際してはシステムの柔軟性と制約を見極める必要があった。これらを踏まえ、ブランドサイト・ECサイト・店舗・パッケージなどのタッチポイントを洗い出し、それぞれの役割と関係性を整理。今後の設計方針を定める基盤とした。

詳細アドバイス
サイト構造の設計は、情報の流れを考慮して使いやすさを突き詰める
サイト構造が複雑化し、伝えたい価値を届けられない理由
ブランドサイトとECは分けるべきか?統合すべきか?
STEP 2

タッチポイントの再定義と実行計画の策定

次に、フェーズ1で整理した接点の役割を明確化し、具体的なアクションへと落とし込んだ。最優先で取り組んだのは、ブランドサイトとECサイトのシステム分離と役割分担の明確化。ブランド訴求と販売機能を切り離すことで、どちらの目的にも最適化された構造を実現した。あわせて、SNS運用を新たにスタートし、デジタル接点の拡張に着手。チラシやパッケージへのQRコード導入も進め、オンラインとの連携を強化した。ただし、SNS運用に対する社内知見は乏しく、導入初期はレクチャーや投稿サンプルの提供など、基礎知識のレクチャーを丁寧に行った。また、パッケージの刷新は商品サイクルの速さも影響し、短期的な変更が難しいことも判明。こうした対応を通じて、各タッチポイントごとの機能・目的を定義、それに応じた運用体制やコンテンツ方針を構築。組織全体での認識統一も目指した。

詳細アドバイス
ブランド価値を高めるために、点で終わらせないブランド接点のつなぎ方
実店舗とデジタルの統一感を作るための、ブランドガイドラインの要点整理
STEP 3

コンテンツ拡充とデザイン統一による体験価値の向上

実行フェーズでは、計画に基づき、個別タッチポイントの強化に注力。ブランドサイトでは、品質や製造工程へのこだわりを伝える新コンテンツを制作。原材料の産地情報、製造工程紹介、契約農家への取材記事など、商品背景にあるストーリーを可視化した。牛乳や小豆など、主要素材にフォーカスした特集ページを展開し、品質訴求を立体的に届ける構成とした。ECサイトでは、実店舗のデザイン要素を反映し、ブランドに統一感を持たせたビジュアルデザインを採用。購入フローの簡素化、ナビゲーションの改善など、ユーザー体験の向上にも取り組んだ。SNSは投稿頻度を段階的に増やしながら、他チャネルとのクロスプロモーション体制を構築。ブランドサイト、ECサイトとのコンテンツ連携を通じて、全体の情報設計を最適化した。制作にあたっては、関係者との密な連携を重視し、複数日の取材同行を実施。実情への深い理解をもとに、共創スタイルでコンテンツ制作を進行した。

詳細アドバイス
伝わるサイト設計は、文脈と情報配置の順序設計から始まる

結果または成果

ブランドとECの役割分離 × 品質訴求の強化で統一された体験と接点創出を実現

ブランドサイトとECサイトの役割が明確になり、それぞれが独立して最適に運用できる体制が構築された。ブランドサイトでは、「美味しいけど安い」という新たな価値軸を打ち出すコンテンツが整備され、企業の姿勢やこだわりを伝える場として機能しはじめた。新たに開始したSNS運用によって顧客接点が増え、キャンペーン情報や商品案内がダイレクトに届けられるようになった。オフライン施策との連携も進み、チラシやパッケージ経由でオンラインへ誘導する導線が整備された。全体を通じて、関係者間での丁寧なコミュニケーションが成功の要因となった。ブランドのあるべき姿を共有し、コンテンツのトーン設計やビジュアルの細部にまで一貫性を持たせることで、本質的な価値を伝えるデジタル体験が実現された。

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企業

株式会社KAAAN

純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略

プロセスでなく、成果を、事業成長を提供

KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。

著者

藤牧 篤

Design Director

1974年、栃木生まれ。クリエイティブプロダクション数社にて、デザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクター、デザイン部門マネージャーを務める。新規事業におけるプロトタイピング、プロダクトのインターフェイスデザイン、ブランドの構築や改善、空間演出など、包括的なクリエイティブ支援を経験。事業開発におけるプロダクト設計やブランド構築に横断的に関わり、可視化や具体化の領域を幅広く担当する。2023年12月よりTHE MOLTSに所属、2024年9月よりKAAANに参画。