企業がブランドサイトとECサイトを一緒に運営していると、後から追加した機能やページが積み重なり、サイト全体がごちゃついてしまうことがある。その原因は、多くの場合、社内の都合や部署ごとの事情が優先されて、サイト全体を通してのわかりやすさや使いやすさが後回しにされていることにある。特に問題になるのが、ブランドとして伝えたい想いや考え方が、情報の多さやページの構造のせいでユーザーに届かなくなる点だ。知りたい情報が見つけにくかったり、途中で混乱してしまったりすると、ブランドへの信頼や好印象も薄れてしまう。さらに、ブランドサイトとECサイトが完全にひとつになっている場合、メンテナンスやトラブルがあると、どちらの機能も使えなくなるといったリスクもある。こうした状況は、単に見た目の問題ではなく、企業が届けたい価値や売上にも影響する「ビジネスの土台」の話として捉える必要がある。
まず取り組むべきは、ユーザーの立場に立って、サイトの構造を一度理想的な状態はどういうものかを検討してみると良い。情報が多すぎないか、迷わずページを移動できるか、知りたいことにちゃんとたどり着けるかなど、全体を通しての使いやすさをチェックする。このとき、1ページごとではなく、サイト全体をつないで考えることが大切。たとえば、買い物をしに来た人が商品の魅力を知るまでに迷子になっていないか、ブランドの考え方に共感した人がすぐに商品を見つけられるか。そうした“動線”がうまくできているかを確認する。ブランドサイトとECサイトをどう分けるか・まとめるかについても、正解はひとつではない。売り場の情報が訴求の邪魔になってしまうこともあるからだ。ブランドの世界観やストーリーをしっかり伝える必要がある場合は、それ専用のサイトを別に作った方が良い。一方で、ブランドがすでに広く知られていて、ECサイトの中でも十分にその魅力が伝わるなら、ひとつのサイトにまとめても問題ない。大事なのは、「どの構成が社内でラクか」ではなく、「どの構成ならユーザーに価値が届くか」という視点で判断すること。サイト構造はゴールではなく、価値を届けるための手段。構造を整理することで、ユーザーにとっての使いやすさが上がるだけでなく、企業として伝えたいことや売上にも良い影響を与える。ブランドの想いと商品を、どう組み合わせて届けるか。その設計が、これからの成長を左右する。