HR向けSaaS企業、オーガニック経由のリード獲得に苦戦
仮:本ケーススタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。
BtoB向けHRクラウドサービスを展開する企業では、勤怠管理や経費精算を支援するツールを提供。サービスサイトを保有し、リード獲得やその集客活動を行っていた。そのなかで、オーガニック検索からのリード獲得をさらに強化するべく、サービスサイトやオウンドメディアの見直しが検討された。それまでキーワード対策を十分に行っていなかった背景もあり、自社の指名検索による流入に依存。さらに、オウンドメディアも複数のドメインで乱立しており、効率的な運用ができていない状況だった。結果的に、新規リード獲得に結びついていなかった。新たにマーケティング責任者がチームに加わったことを契機に、オーガニック施策の立て直しを図ることに。サービスサイトやオウンドメディア経由のリード獲得強化を目指し、サイト改善やコンテンツマーケティングを中心に立て直しプロジェクトが発足した。インバウンドのリード獲得を強化すべく、何をどう立て直すべきか、課題整理や戦略設計から着手することとなった。
現状課題を洗い出し、短期・中長期の計画を策定
目標とするリード獲得数に対しボトルネックを特定するため、まずは課題分析から着手。サービスサイト全体のCVポイントを洗い出し、どのページでCVが発生しているのか、または離脱しているのかを詳細に調査した。分析の結果、サービスサイトのCVRが想定よりも低いことがわかり、サイト改善による伸びしろが大きいと判断された。次に、リード獲得の数、質を向上させるべく、ターゲットの購買プロセスを可視化するカスタマージャーニーの作成に着手。セールスチームにもヒアリングを行い、顧客がどのような課題から出発し、どのような行動変容を経て当製品の導入に至ったかを整理した。そこから、どのようなコミュニケーション施策を用いればリード獲得に至るか、キーワード設計やコンバージョンポイントの設計に落とし込んだ。これらプロセスを通じて、短期的にはサービスサイトのCVR改善を、中長期的にはコンテンツSEO施策を主軸としたリード獲得強化を目指す方針を策定した。
乱立したオウンドメディアを統合し、統一された運用基盤を構築
コンテンツSEOを推進するうえで、オウンドメディアの整備が1つの課題だった。というのも、プロジェクト開始時点ではすでに複数のオウンドメディアが存在しており、それぞれが独立したドメインやテーマで運用されていた。結果、コンテンツの重複やSEO評価の分散が起きており、非効率な状況となっていた。いちはやく成果を得るために、オウンドメディア全体の棚卸しを開始。各オウンドメディアのSEO評価やキーワード獲得状況を分析し、もっとも効率的に評価を得やすい運用体制を策定した。具体的には、サービスサイトを加味したドメイン選定、使わなくなるURLの精査やリダイレクト設計、既存記事の対応リストの精査など。キーワード設計に応じて、新たに作るべき記事、既存内容を活す記事、閉じる記事、といった具合に数百ある記事の対応をすべて可視化させた。オウンドメディアのデザインやディレクトリ構造も刷新し、コンテンツSEO施策を運用する基盤が整えられた。
データ基盤を構築し、施策のチューニングをひたすら回す
コンテンツSEO施策を推進すべく、コンテンツ運用を行う専任チームを編成。新規記事の制作や既存記事のメンテナンスを行い、ターゲット集客の徹底的な強化を進めた。さらに、並行してサービスサイトやオウンドメディアのCVR改善にも注力。ランディングページの情報設計やデザインの改修、CTAの設置場所や内容の見直し、フォームの入力項目やUIの見直しなど、細々とした改修を地道に繰り返していった。リード獲得強化という共通の目標に対し、さまざまな施策や運用体制が同時並行で進むことで、同時にモニタリングの課題も生まれた。当然ながら施策ごとの数値計測や振り返りは各チームで実施していたが、チーム全体が把握できる共通のものがなかった。そこで、Google Analyticsやスプレッドシートなどを活用し、KPIツリーに沿った進捗確認ができるモニタリング環境を整備した。これにより、チームメンバー間での数値認識のずれが解消され、集計作業の手間を削減。各自が施策改善にリソースを集中できる環境を整えた。
CVR改善とコンテンツSEOの強化を徹底し、リード数は昨対比115%へ成長
立ち上げから約半年、サービスサイトの地道な改善や、コンテンツSEO施策を愚直に強化しつづけたことで、リード数は昨対比115%を達成。また、ターゲットリードが獲得できたことで商談数も昨対比120%を記録した。特に、短期的な施策として取り組んだCVR改善の取り組みは、リード獲得の底上げに大きく寄与した。もともと指名検索からの流入が多かったトップページにおいて、離脱を改善したことが早期に成果を生むことにつながった。並行して、検索意図に基づいた記事制作を徹底したことで、これまで獲得できていなかった層を新たに集客でき、リード拡大の新たな基盤を構築することができた。また、今回の取り組みを通じて、数値面だけでなく組織にも変化が表れた。これまでは、「なにをやるか?」が発想の起点となってしまい、結果、オウンドメディアが乱立したり、データの整備がままならない状況を生んでいた。しかし、今回の取り組みでは、ターゲットの調査分析やカスタマージャーニーの整理を通じて、「誰に、なにを届けるか?」といった、顧客を起点とした発想に切り替えることができた。それが明確な方針に基づいた施策の推進、ひいては事業に貢献する成果が生まれることとなった。リードや商談数といった事業貢献にも寄与しつつ、運営母体となるマーケティングチームの意識変革にもつながった取り組みとなった。
企業
株式会社KAAAN
純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略
プロセスでなく、成果を、事業成長を提供
KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。
著者
田島 光太郎
Media Planner / Consultant
1990年、大阪生まれ。新卒入社した企業にてコンテンツSEOを軸としたメディアのグロース、マネタイズ運用を経て、2018年5月より株式会社MOLTSへ参画。2023年9月にKAAAN(旧KOEDO)を設立し代表取締役に就任。現在はオウンドメディア・コンテンツマーケティングを用いたプロジェクトの立ち上げ・戦略設計、インハウス運用支援、運用代行を行う。