オウンドメディアは、数ヶ月から数年単位の中長期で成果を出す施策である。だからこそ、KPIがあいまいなままだと、運用が迷走しやすい。KPIが定まっていないと、リソースの配分に迷いが生じたり、チーム間の連携や進捗評価が不明瞭になり、モチベーションの低下にもつながってしまう。ただ、数値目標の達成ばかりに注力すると、「誰に、何を届けるべきか」という視点が抜け落ちてしまう。結果として、表面的な成果は出ても、顧客との接点がかみ合わず、商談や受注といった事業貢献にはつながりにくい。ターゲットの課題やニーズへの理解が不十分なままでは、たとえ一時的に数字が伸びたとしても、持続的な成果には結びつかない。このような課題を抱えないために、数値だけでなく、数値とターゲットの両面から運用の軸を再定義し、チーム全体で共通の判断基準を持つことが必要となる。
具体的には、次の2つのステップを押さえることが重要になる。1. KPIを目的に紐づけて設定するまず、オウンドメディアの目的に応じて、KPIを定義する。たとえば、認知拡大が目的なら「流入数」、商談化を目指すなら「CV数」や「資料DL数」など、成果に直結する指標に絞り込む。そのうえで、KPIに対してインパクトの大きい施策にリソースを集中させ、定点で効果検証を行う体制をつくる。 2. ターゲット像を明文化し、コンテンツの方向性を一致させる数字だけを追いかけないために、「誰に情報を届けるのか」を明文化しておく。ターゲットの職種や態度を言語化し、「どんな課題を抱え、何を調べているのか」を整理する。検索キーワードや商談時の質問、現場の声などをもとに、リアルな行動像や関心に基づいてコンテンツを設計する。KPIとターゲットが明確になれば、「なにを、誰に、どの成果につなげるのか」がクリアになり、コンテンツや施策の優先順位も整理される。数字とターゲット理解をセットで捉えることで、数値を追うこと自体が目的になるのを防ぎ、短期の効果と中長期の成果を両立する運用が実現できる。