デジタルマーケ支援会社、外部編集者依存とコンテンツ制作の限界に苦戦 AI対話システムで社員をライター化、月2本から30本へ15倍の生産性向上を達成

著者: 株式会社KAAAN 寺倉 大史

背景

幅広い領域のプロフェッショナルを抱えるデジタルマーケティング支援企業では、ブランディングとマーケティング強化を目的として、外部の編集者に月2本の企画コンテンツの作成を依頼していた。 しかし、専門性が多岐にわたるため、編集者が各領域の学習を継続することが困難で、企画作成に時間がかかる状況が続いていた。また、ライティングやヒアリングも思うように進まず、コンテンツの内容が偏ってしまったり、執筆後の確認作業にも相当な時間が必要だったため、月2本の制作が限界だった。 一方で、情報発信の量ををさらに増やし、多面的に展開して強化することで、市場でのポジションを高めたいという強い意向を持っていた。そのためには、現状の課題を解決し、質の高いコンテンツ制作を実現する抜本的な手法の変更が必要だった。

STEP1

プロジェクトチームは、まず社員をライター化する際のコンテンツ作成方法の根本的な見直しから着手した。面白いコンテンツは世の中に溢れている情報ではなく、その企業や個人が仕事を通じて得た経験や知識で形式知化されていない暗黙知をどれだけ引き出せるかが重要だと定義した。 この暗黙知は、新人やクライアントへのフィードバック、質問への回答といった日常の会話の中に転がっているため、会話形式で展開してそのままコンテンツ化することが最適だと判断。 そこで「カンバライティング」という独自手法を考案した。これはAIとの対話を通じて思考をコンテンツ化する手法で、非ライターでも30〜60分の会話でコンテンツを作成できる仕組みを構築した。

STEP2

次に、導入時の課題を解決するため、AIの仕組み作りに注力した。どのような会話を展開するか、どんな返答をするか、会話相手のテイストなどを詳細に設計し、作業環境を整備した。 メンバーに覚えてもらうことや、やってもらうことを極力排除し、ヒューマンエラーを防ぐために自動で進む仕組み化を重視。1つのファイルを実行するだけで、あらゆるプロンプトが連動して会話、編集、コンテンツ化が全て自動で行われるシステムを構築した。 当初はClaudeが最適と考えていたが、MCPなどの設定が複雑だったため、最終的にCursorでファイル選択してDriveに接続する方式を採用。試行したところ、思いのほか質の高いコンテンツが生成されたため、メンバーへ本格展開を実施。

STEP3

カンバライティングはフィードバックの質が高いほど、コンテンツが面白くなる特性があるため、レイヤーの高いメンバー10人から試験運用を開始。AIリテラシーが低いメンバーが多かったため、メンバーを集めてCursorの設定を一緒に行い、まず体験することから始めた。 初の試みだったため、環境の違いによるトラブルやエラーが発生し、会議で説明しながら問題を解決していった。また、会話の回数や長さによってコンテンツのクオリティが大きく変わるため、品質のばらつきが課題となった。 クオリティのばらつきは、プロンプトに追加項目を入れて実行・テストを繰り返し、自動でテーマが生成される仕組みも構築した。さらに公開コンテンツがシェアされた際のチーム共有や、クオリティ低下の理由を明確化してプロンプトで補完、AIによる品質チェック機能の追加など、継続的な改善を実施した。

結果

1週間で1本の作成を目標としていたが、実際には20本のコンテンツが作成された。通常1ヶ月1本でも重いライティング作業が、30分の会話でコンテンツが完成するようになり、「思っていることをコンテンツ化するのは楽しい」という声が多数上がった。 当初は1人1本の納品を想定していたが、結果的に1人で3〜4本を担当するケースも生まれ、想定以上のアウトプットにつながった。最終的に月30本以上のコンテンツが作成され、一人当たり平均3本という当初の予想を大きく上回る成果となった。また、公開できるレベルのコンテンツ化率は50%から85%以上に向上。 副次的効果として、作成されたコンテンツが暗黙知の集約となったため、これらを戦略オートメーション化AIエージェントに組み込んで考慮観点を増やしたり、コンテンツSEOのリライトに自動活用するなど、売上向上と原価削減の両面で暗黙知を設計・活用する仕組みが構築された。 プロジェクト成功の最大要因は、編集を楽にするという改善ではなく、構造から見直して「メンバーをライター化する」という発想転換にあった。これにより生産性は従来の15倍に向上し、企業の情報発信力が飛躍的に強化された。
タグ: コンテンツ制作, プロジェクトマネジメント, 施策ヒント

デジタルマーケ支援会社、外部編集者依存とコンテンツ制作の限界に苦戦

AI対話システムで社員をライター化、月2本から30本へ15倍の生産性向上を達成

本ケーススタディスタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。

背景

幅広い領域のプロフェッショナルを抱えるデジタルマーケティング支援企業では、ブランディングとマーケティング強化を目的として、外部の編集者に月2本の企画コンテンツの作成を依頼していた。しかし、専門性が多岐にわたるため、編集者が各領域の学習を継続することが困難で、企画作成に時間がかかる状況が続いていた。また、ライティングやヒアリングも思うように進まず、コンテンツの内容が偏ってしまったり、執筆後の確認作業にも相当な時間が必要だったため、月2本の制作が限界だった。一方で、情報発信の量ををさらに増やし、多面的に展開して強化することで、市場でのポジションを高めたいという強い意向を持っていた。そのためには、現状の課題を解決し、質の高いコンテンツ制作を実現する抜本的な手法の変更が必要だった。

補足要件

  • 過去に何度も社員のライター化に取り組んだ経験があったが、いずれも失敗に終わっていた
  • 社員は日々の業務で多忙を極めており、1本のライティングに5〜8時間を要する従来の手法では継続が困難
  • 公開できないレベルの記事が増えると、執筆者のモチベーション低下につながり、取り組み自体が頓挫するリスクがある
  • 強制的な参加ではなく任意での対応とし、不満が生じないよう全員に配慮した展開が必要

具体的なプロセス

STEP 1

カンバライティング手法の開発

プロジェクトチームは、まず社員をライター化する際のコンテンツ作成方法の根本的な見直しから着手した。面白いコンテンツは世の中に溢れている情報ではなく、その企業や個人が仕事を通じて得た経験や知識で形式知化されていない暗黙知をどれだけ引き出せるかが重要だと定義した。この暗黙知は、新人やクライアントへのフィードバック、質問への回答といった日常の会話の中に転がっているため、会話形式で展開してそのままコンテンツ化することが最適だと判断。そこで「カンバライティング」という独自手法を考案した。これはAIとの対話を通じて思考をコンテンツ化する手法で、非ライターでも30〜60分の会話でコンテンツを作成できる仕組みを構築した。

詳細アドバイス
AI導入を加速させた、あえて全社展開しない選抜式導入アプローチ
少数限定から始める、ハレーションが起きない組織変革
STEP 2

自動化システムの構築

次に、導入時の課題を解決するため、AIの仕組み作りに注力した。どのような会話を展開するか、どんな返答をするか、会話相手のテイストなどを詳細に設計し、作業環境を整備した。メンバーに覚えてもらうことや、やってもらうことを極力排除し、ヒューマンエラーを防ぐために自動で進む仕組み化を重視。1つのファイルを実行するだけで、あらゆるプロンプトが連動して会話、編集、コンテンツ化が全て自動で行われるシステムを構築した。当初はClaudeが最適と考えていたが、MCPなどの設定が複雑だったため、最終的にCursorでファイル選択してDriveに接続する方式を採用。試行したところ、思いのほか質の高いコンテンツが生成されたため、メンバーへ本格展開を実施。

詳細アドバイス
非エンジニアでも独自AIシステムを迷わず使える運用設計のコツ
AIをつかって「暗黙知」を会話で引き出す発想術
STEP 3

段階的展開と品質向上

カンバライティングはフィードバックの質が高いほど、コンテンツが面白くなる特性があるため、レイヤーの高いメンバー10人から試験運用を開始。AIリテラシーが低いメンバーが多かったため、メンバーを集めてCursorの設定を一緒に行い、まず体験することから始めた。初の試みだったため、環境の違いによるトラブルやエラーが発生し、会議で説明しながら問題を解決していった。また、会話の回数や長さによってコンテンツのクオリティが大きく変わるため、品質のばらつきが課題となった。クオリティのばらつきは、プロンプトに追加項目を入れて実行・テストを繰り返し、自動でテーマが生成される仕組みも構築した。さらに公開コンテンツがシェアされた際のチーム共有や、クオリティ低下の理由を明確化してプロンプトで補完、AIによる品質チェック機能の追加など、継続的な改善を実施した。

詳細アドバイス
人ではなく、AIを制御すれば、コンテンツ品質のばらつきを解消できる
AIを活用し記事制作プロセスを改革、編集主導体制からの脱却に成功

結果または成果

月2本から30本へ、業務負担を減らし暗黙知の資産化を実現

1週間で1本の作成を目標としていたが、実際には20本のコンテンツが作成された。通常1ヶ月1本でも重いライティング作業が、30分の会話でコンテンツが完成するようになり、「思っていることをコンテンツ化するのは楽しい」という声が多数上がった。当初は1人1本の納品を想定していたが、結果的に1人で3〜4本を担当するケースも生まれ、想定以上のアウトプットにつながった。最終的に月30本以上のコンテンツが作成され、一人当たり平均3本という当初の予想を大きく上回る成果となった。また、公開できるレベルのコンテンツ化率は50%から85%以上に向上。副次的効果として、作成されたコンテンツが暗黙知の集約となったため、これらを戦略オートメーション化AIエージェントに組み込んで考慮観点を増やしたり、コンテンツSEOのリライトに自動活用するなど、売上向上と原価削減の両面で暗黙知を設計・活用する仕組みが構築された。プロジェクト成功の最大要因は、編集を楽にするという改善ではなく、構造から見直して「メンバーをライター化する」という発想転換にあった。これにより生産性は従来の15倍に向上し、企業の情報発信力が飛躍的に強化された。

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企業

株式会社KAAAN

純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略

プロセスでなく、成果を、事業成長を提供

KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。

著者

寺倉 大史

Media Consultant / Business Producer

1987年、京都生まれ。藍染見習いから2013年株式会社LIGに入社。同社でメディア事業部部長、人事部長を経て、2015年9月からは執行役員を務める。2016年3月にデジタルマーケティングカンパニーを設立し、独立。BtoC、BtoB問わず、戦略からプロジェクトマネジメントを行い、累計200以上のプロジェクトに参画。