想定場面や課題
新しいシステムやツールを組織に導入する際、全社一斉展開を選択したくなるものだが、これは大きなリスクを伴う。特に既存の業務プロセスに加えて新しい取り組みを求める場合、現場からは「また新しいことを」「時間がない」という反応が予想される。一気に大人数を動かそうとすれば、必然的にハレーションが発生し、せっかくの良いシステムも組織に定着しないまま頓挫してしまう可能性が高い。組織を動かすということは、人を動かすことであり、人の心理的な抵抗を軽視すれば、失敗は避けられない。成功のためには、まず協力的な人材を見つけて小規模から始め、確実な成果を作り上げてから展開する戦略が必要だ。
解決策
新しいシステムやツールの導入を成功させるためには、「論より証拠」を作る段階的に展開する必要がある。まず、関係性と信頼のある協力的な人材を10人程度選定し、限定的に新しい仕組みや技術を導入する。この選定基準は、「この人なら協力してくれる」という推進側の直感と、説明に対して前向きな反応を示す人材かどうか。少数限定の利点は、コミュニケーションが少ない中で、高速にPDCAサイクルを回せることにある。トラブルや品質の問題が発生しても、協力的なメンバーは不満を言うのではなく、建設的な改善提案をしてくれるため、新しいシステムやツールの導入を急速に推進することができる。そして重要なのは、この10人が生み出す成果の波及効果である。「自分でもできた」という成功体験や、実際に公開されたコンテンツがシェアされる事実は、組織内に「あの人、あのチームでもできるなら自分もできる」という心理的変化を生み出した。スーパーエースの成果では「あの人だから」で終わってしまうが、同レベルの人材の成果は「私もできる」という感情に直結する。この心理効果により、全社展開時には自然な導入が進み、ハレーションを回避しながら組織全体の変革を実現できる。