通信業界の新規事業、フロント人材不足により構想段階で停滞
アイデア段階からフロント設計と開発・検証を進め、サービス提供を実現
藤牧 篤
Design Director / Project Manager
背景
ある通信会社が、産業用無人機と遠隔通信技術を活用し、業務効率化や安全性向上といった企業課題の解決を目指す新規事業を立ち上げた。対象領域は、太陽光発電設備の点検、鉄塔・高層建築物の外壁確認、農作物の育成調査、建設現場の進捗管理など多岐にわたっていた。
産業用無人機が取得したデータをユーザーが管理・運用するためのシステムを開発する体制は整っていたが、ユーザーが利用する画面のデザインやUX設計を担う人材が不在だった。このため、本プロジェクトでは、取得データをユーザーが活用できるようにする画面デザインと設計がミッションとなった。
また、機能はデータ取得から分析、レポーティングまで多岐にわたるため、段階的に開発・検証を重ねるスモールスタート型の推進が採用された。
補足要件
- 事業立ち上げに関するプレスリリースが予定されていた。
- 中間フェーズでは展示会でのプレゼンテーションも実施予定だった。
具体的なプロセス
STEP
1
情報整理と初期プロトタイプによる方向性の具体化
事業構想は存在していたが、全体像は不明瞭だったため、断片的な情報をもとに構想を言語化・可視化し、関係者とのワークショップを通じて課題や提供価値を定義。出てきたアイデアの優先順位を整理し、開発内容をフェーズに分割してタスクを明確化した。
初期プロトタイプでは、産業用無人機の運行ログ管理やデータの可視化などの基本機能を実装。社内検証を通じて方向性をすり合わせ、具体的なUI設計と画面構成によって実現性を高めた。
STEP
2
主要機能の強化と拡張可能なUI基盤の整備
初期プロトタイプを踏まえ、ユーザーが利用できる画面の全体設計に着手。運行管理やデータの可視化、AI分析、レポーティングといった主要機能の実装を進めた。開発では、短期的なゴールを設定し、段階的に実装を推進。
また、将来的にさらに多くの企業が業種や分野を問わず利用できるように、拡張性が高いUIの設計を行った。さらに、展示会出展やプレゼンテーションも見据え、初期段階からブランドイメージの仮設検証を行い、統一感あるビジュアルデザインの設計も並行して進行した。
STEP
3
デザインシステム整備とプロダクトの一貫性確保
正式リリースに向け、既存機能の見直しと統一感のあるデザイン体制の構築が必要だった。デザイン主導ではなく、バックエンド主体の開発では、同じボタンでも画面によって見た目や挙動が異なることがある。
そこで、個別に実装されていた機能を整理し、ユーザーがスムーズに操作できるよう、機能やデザインのルールを定義したデザインシステムを構築。さらに、サービスサイトや販促物、展示会出展時の情報設計まで含めて、一貫した印象を与えるUXを設計。
プロダクトとブランドを統合する設計思想に基づき、長期運用に耐えうる体制を整備した。
詳細
アドバイス
結果または成果
プロトタイピングを通じた開発・検証と将来を見据えた拡張性が高い基盤整備
アイデアが具体化していなかった段階から、情報整理と定義を行ったことで、サービスとしての価値と機能を明確化。段階的なプロトタイプ検証により、構想を提供可能な形に落とし込んだ。また、各フェーズでアウトプットにゴールを設定し、段階的に進めたことで、スムーズな推進につながった。
さらに、展示会や試験運用で得た外部フィードバックも改善に寄与。サービスリリースに向けた準備と並行して社内ノウハウが蓄積され、今後の内製化や効率的な運用に向けた基盤を築く結果となった。

