ハイエンド製品メーカー、使いづらいブランドサイトが課題に
ブランドの世界観を再構築し、社内課題を解決したサイトリニューアル
藤牧 篤
Design Director / Project Manager
背景
業界大手の国内メーカーと海外の同業種メーカーが、デザインと性能を重視したハイエンド製品を生み出すためにブランドを立ち上げ、ブランド設立から一定期間を経て記念すべき節目を迎える。それに伴い、メーカーや建築家などのプロユーザーやエンドユーザー向けのブランドサイトをリニューアルすることとなった。
当時のブランドサイトは、古びたデザインや高級感不足、製品の訴求力不足、営業ツールとしての不十分さなど、運用面での更新性・柔軟性の不足などに課題があった。また、コロナ禍以降、ショールームが少なくなり、実際に目で見て導入を検討することが難しくなっていた。それらの課題をクリアした上で、記念モデルのプロダクトや新カテゴリーの製品リリースにも対応する必要があった。
そのため、ブランドの世界観を再構築し、情緒性と機能性を両立する新たなブランドビジョンを作り上げることがミッションとなった。
具体的なプロセス
STEP
1
使いやすさを追求した構造や機能の設計
サイト上でいかに導入後のイメージが持てるかが重要なため、サイトのカラーモード切り替え機能を導入し、明るい部屋や暗い部屋など、異なる環境での製品設置イメージをサポートする機能を設計。
また、製品ページをプロユーザー向けの資料ダウンロードとエンドユーザー向けの製品の特徴を紹介する2部構成をフォーマットにし、すぐに目的が達成できる構造に変更。他にも現行品、廃盤品、オプション品など多岐に渡る大量の製品は、資料として閲覧できることも求められているため、より簡単に検索できる機能を設計した。
さらにブランドのセールス担当者が営業ツールとして十分に活用できるように配慮しながら設計を行なった。
STEP
2
品質・ブランドの理念や価値観を感じられるコンテンツへの改変
ハイエンド向け製品として、各製品の質感や品質イメージが伝わるように小さかった製品画像などを拡大・高解像度に改変。また、製品設置イメージを具体的に想像しやすいように、豊富なシーンのイメージを用意、ユーザーに製品がどのようにインテリアに調和するかをイメージしやすくした。
さらに、ブランドのフィロソフィを整理し、メッセージを新たに開発するとともに、価値観や理念を深く訴求するコンテンツやブランドを言葉でも表現するために新しい言葉を作り出すなど、拡充を行った。
STEP
3
ブランドの個性や高級感を体現するデザイン設計
国内外のコラボレーションという特徴を表現するため、関係性が感じられるカラーリングやタイポグラフィなどのルールを策定し、グローバルな感性と日本の繊細さを融合させた独自のブランド表現へと変更。
また、シンボルに基づく緩やかなカーブを全体的なデザインに取り入れることで、洗練されつつ必然性のあるグランドデザインを構築した。これによりブランドのフィロソフィを具現化し、高級感と信頼性を兼ね備えたサイトへと生まれ変わった。
結果または成果
ステークホルダーに寄り添い、未来を見据えた耐久性を実現
高級商材を検討するユーザーは一定のこだわりを持っており、製品を提供するブランドとしてその期待に応えるために、検討に必要なコンテンツを多角的に整備し、満足感を与えることが求められる。
今回のサイトリニューアルは、プロユーザーやエンドユーザー、運営しているブランドなどにしっかりと目を向け、情緒性と機能性を両立させることにこだわり続けたことで、使いやすいサイトになるだけではなく、ブランドが持つ理念や高級感を表現する構成・デザインを実現。
各課題を解決しながら、今後の新カテゴリーの製品リリースにも対応可能な柔軟な運用環境を構築することができた。また、製品ページが整備されたことで、コストとなっていた紙カタログからの移行への基盤作りにつながったり、資料が見つけられないという問い合わせが減少した。各課題をクリアしながら、将来を見据え長期的に運用可能な耐久性のあるサイトが構築できた。

