仮:本ケーススタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。
大手企業の一事業部として、特定の業界や職種に特化した転職エージェントサービスを展開。広告やSEOを活用し、自社への相談数を最大化することを目的にマーケティング活動を実施してきた。ビジネスモデルは一般的な形態であり、まずは事業としての形を整えて既存のキャッシュやリソース、これまでの経験を基に展開し、事業を成立させていた。しかし、CPAの高騰やSEO領域での競争激化により、初回面談数は思うように増加せず、採用媒体のスカウトでは配信数を重視した結果、送付に対する相談率が低下していた。また、特定職種において未経験者から経験者まで幅広い層を対象にしていたため、どの層が成約につながりやすいかを明確化できず、ターゲティングが不十分な状況が続き、事業の成長に苦戦を強いられる状況に陥っていた。これを受け、マーケティング活動をより効果的な形へとシフトさせるために、現場社員のヒアリングしたデータを分析し、成約率の高いターゲット層を特定、その層からの相談数を増やすための具体的なアプローチを実施することとなった。
最も成約率が高いターゲットを洗い出し、ターゲティングを実施
全体のコミュニケーションを分析した結果、ターゲティングが明確でなく、訴求内容が競合他社と差別化されていない点が課題として浮上。施策そのものの見直しではなく、訴求内容の再構築が必要と判断した。まず、既存データと現場社員が行ったヒアリングから得られたエントリーから成約までのプロセスと関連する数値を整理し、現状把握から始めた。その際に、ヒアリングからもっともクリティカルな要因となるであろう経験年数を軸にターゲットを3つのパターンに分け、それぞれの数値を詳細に把握。キャリアカウンセラーへのヒアリングやマーケティングチームによる分析の結果、経験年数ごとにエントリー数の差は少ない一方、成約数や面談進行数に大きなばらつきがあることが判明。特に、経験年数が一定以上のターゲットで成約率がもっとも高いことが確認された。既存の成果が伸び悩む中、組織疲弊の可能性も考慮し、経験年数が一定以上のターゲットに集中してアプローチするように訴求を変更することにした。
ヒアリングを元にターゲットの解像度を上げ、訴求内容を大幅に変更
ターゲットの解像度を上げるため、現場のキャリアアドバイザーに対する複数回のヒアリングを実施し、ペルソナおよびカスタマージャーニーを作成。その結果、転職エージェントが一般的に訴求する「親身なキャリアサポート」に共感する層ではなく、「忙しいから代わりに転職活動を進めてほしい」というニーズを持つ求職者が特定の職種や状況において多数を占めることが明らかになった。また、他社が提示する一般的な実績データ、例えば「年収増加額」や「相談から転職完了までの期間」などとは異なるその企業独自データが観測され、その違いがどのように生じているかの背景がヒアリングを通じて明確化された。これを基に、ターゲットのニーズに沿った訴求内容に変更するため情報整理を実施。すでに蓄積されている数値や事業部の重要視するポイント、過去の実績を再評価した上で、訴求すべき軸や提供すべき情報を再構築した。特に、データを整理してターゲット層が求める内容と現場の実態が矛盾しないよう調整を徹底した。
組み立てたコミュニケーション軸でスカウト文面、サイトに訴求を反映
変更した訴求軸や情報の効果を測定するため、まずサイトに反映させ、指名検索からのCVR変動をテストした。また、プロジェクトチームが関与可能な範囲でスカウト文面の変更にも着手。複数の媒体を対象に、それぞれの傾向を分析し、実際に登録して文面の傾向を確認。媒体ごとの特性に基づき、タイトルの文字数や内容、訴求軸を最適化し、今回設定した新しい訴求軸が効果的に伝わるよう調整を実施した。今回の訴求内容は、一般的な転職エージェントがあまり取り上げないものであり、従来のコミュニケーションから大きく変更された。そのため、大幅な成果減少リスクを考慮し、全体の施策反映はせず、まずは絞って段階的に展開。施策の進行状況を週次で観測し、大きな成果減少が確認されなかった段階で、他施策にも順次適用した。リリース後1ヶ月間は効果検証とチューニングを実施し、データを基に最適化を図った。
指名、スカウトメールのCVR増、収益向上の可能性をデータで証明
広告配信は別チームの管轄で直接的な調整は行わなかったが、ターゲット軸や訴求内容を変更したことで指名検索からのCVRが倍以上になり、変更後の成果が最初に実感できた。また、媒体ごとのスカウトメールのCVRも半数以上で倍増し、翌月には他媒体でも増加傾向が見られたことから、全体的なCVRの上昇を達成した。しかし、予算削減や広告配信の一部停止により、指名検索やスカウト数が制限され、全体のボリュームは微増に留まった。一方で、当初の計画通りに経験者の契約数は安定して増加。これにより、事業収益の向上が確認され、マーケティング観点からの訴求見直しを通じて収益をさらに向上させる余地があることを示すエビデンスとなった。
企業
株式会社KAAAN
純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略
プロセスでなく、成果を、事業成長を提供
KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。
著者
寺倉 大史
Media Consultant / Business Producer
1987年、京都生まれ。藍染見習いから2013年株式会社LIGに入社。同社でメディア事業部部長、人事部長を経て、2015年9月からは執行役員を務める。2016年3月にデジタルマーケティングカンパニーを設立し、独立。BtoC、BtoB問わず、戦略からプロジェクトマネジメントを行い、累計200以上のプロジェクトに参画。