オウンドメディアのコンテンツ制作において「ユーザー理解を深めるため、ヒアリングを実施する」場面は多い。しかし、実際には、ユーザーヒアリングで得られた情報をコンテンツ制作に有効活用できていないケースが少なくない。よく、どのような手順でヒアリングを設定すればよいかが分からない、質問項目の設計が不十分で精度の高い回答が得られない、あるいは、ヒアリングを実施すること自体が目的化してしまい、その後のアクションにつながらない、といった課題があがる。目的が曖昧なままでは、ヒアリング自体の質も下がり、結果としてコンテンツの精度向上にもつながりにくい。限られた時間とリソースの中で、確実にユーザー理解を深め、制作に活かすには、ヒアリングの設計と実施に明確なルールが必要。
このような課題を解決するためには、1. 対象者選定、2. 質問項目の設定、3. 事後の振り返りの実施という3つのポイントを押さえて進めると良い。1. 適切な対象者選定対象者は、「実際の顧客」または「顧客接点の多い自社メンバー」のいずれかを選定する。顧客に依頼する場合、依頼から実施までに時間がかかるため、スピードを重視するなら、カスタマーサポートや営業担当など、現場を知っている担当者へのヒアリングを選択する。自社メンバーへ依頼する場合、どちらかというと社歴が長い担当者へ依頼するのがおすすめ。社歴が長い担当者の方が、事業フェーズごとの顧客の変化などを把握している事が多く、精度の高いヒアリングが行える可能性が高い。社内外に関係なくヒアリング対象者には、ヒアリングの目的と背景をセットで伝え、理解を得た上で依頼する。 2. 質問項目の設計と整理質問は顧客行動のフェーズ別に整理する。情報収集段階、比較検討段階、導入段階、導入後、の4つに分けて設計すると、ヒアリングの軸がブレづらい。情報収集段階:問い合わせ理由やよくある質問、新規導入 / リプレイスのどちらが多いか比較検討段階:競合しやすい会社 / サービス、競合比較のポイント、失注理由、商談時に刺さりやすいトーク導入段階:受注しやすい / しにくい顧客の傾向、受注までの平均期間とプロセス、決め手になるポイント導入後:継続しやすい / しにくい顧客の傾向、継続率に関わる要素、導入後に顧客からよくあるFB質問設計時は、まず縛りを設けずに聞きたいことをできるだけたくさん出し、その後、先程のカテゴリごとに整理・統合する。質問項目が確定したら、ヒアリング実施の1週間前を目安に対象者へ事前共有する。このときも、ヒアリング対象者から意図に沿った回答をもらいやすくするため、ヒアリングの目的や背景を改めて伝え、認識をそろえておく。 3. 事後の振り返りとナレッジ蓄積ヒアリング後は、「ターゲットユーザー像」「検索背景」「想定ニーズ」の3点を言語化し、いつでも全員がアクセスできる共有シートに整理する。この際、自社事業のターゲットのボリュームゾーンを意識しながら、事前想定とのズレを洗い出し、チームで議論する場を設ける。議論を通じて、リアルなユーザー像を深く理解し、コンテンツ制作時には「このユーザーならどう感じるか」という視点で記事の構成やCTAの訴求を検討する。リアルなユーザー像を軸に判断を行うことで、コンテンツの精度が高まり、成果にも直結しやすくなる。