想定場面や課題
デジタルメディアの収益化に取り組む際、多くの企業が陥りがちなのが、複数の収益化手法を同時に進めようとすることだ。実際、ネットワーク広告やアフィリエイト、タイアップ、イベント収益、有料コンテンツなど、手法の選択肢は多い。しかし、立ち上げ初期の知名度がなく、リソースも限られた状況で、これらを一気に進めようとすると、施策が分散し、どれも成果が出ないまま終わってしまうリスクが高まる。重要なのは、自社のメディア規模や集客の特性に応じて、段階的に手法を選ぶこと。たとえば、集客の軸が検索流入中心で、ブランド認知やコミュニティが未形成の段階では、レバレッジの効きやすいネットワーク広告やアフィリエイトから始めた方が現実的である。
解決策
収益化の初期において重要なのは、「今のメディア規模で実行可能か」「レバレッジが効くか」の2点を基準に、手法を段階的に選ぶことだ。まず、ネットワーク広告は流入が少なくても始めやすく、改善の余地も大きいため、初期の手法として有効な手段だ。一方、タイアップ広告やイベント収益、有料コンテンツなどは、メディアの知名度やファンコミュニティの存在が前提になる。実際、月間1,000万PVを超える頃になると、広告代理店からの問い合わせが増え始め、タイアップ案件の獲得が現実的になる。また、イベント収益を目指すには、数万人規模の会員やファンの存在が必要になる。このように、収益化手法には「取り組める条件」が存在する。初期に実行しやすい手法から始め、メディアの成長にあわせて次の手法を導入していくことで、リソースを無駄にせず、収益性を高められる。また、集客の軸と収益化手法の相性も重要だ。指名検索の少ない検索流入中心のメディアでは、コミュニティ形成が難しいため、有料会員モデルやイベント収益などの手法は機能しづらい。自社の集客特性を把握し、手法ごとの適性を見極めて導入の順番を決めることも大切である。段階的に手法を導入するという考え方は、遠回りに見えて、実は最短ルートになる。初期フェーズで着実に成果を積み上げることで、次の手法への布石を打つことができる。