サービスの成長を目指す広告運用において、事業を成長させるために「規模の拡大」と「効率の改善」の両立を目指すことが多い。しかし実際には、複数の広告媒体のテストやクリエイティブの大量投入、CPAの削減、リターゲティング強化など、やるべき施策が多すぎて優先順位がつけられず、リソースが分散してしまう。結果として、すべての施策が中途半端に終わり、費用対効果が見合わない状態に陥る。特に、広告成果が伸び悩んでいる初期フェーズでは、この傾向が顕著で、成果の出ない広告に予算を使い続けながら、一方で「一発逆転」を狙った施策に走る。守るべきか、攻めるべきかの判断がつかず、毎日の運用タスクに追われ、チームとしての戦略的な意思決定ができなくなる。こうした課題の背景にあるのが、広告運用の「フェーズ」を意識していないこと。広告運用のフェーズを段階的に整理し、それぞれのフェーズで何を優先すべきかを明確にすることが必要となる。
この課題を解決するには、ゴールに向けて広告運用のフェーズを明確に分け、それぞれの目的とアクションを段階的に設計することが有効。まず、「守り」のフェーズでは、無駄な施策を止め、効率を徹底して追求する。成果が出ていない広告媒体やキャンペーンを停止し、限られたリソースを効果の高い媒体に集中させる。自動入札に頼りきりになっている場合は、手動入札を併用し、予算の配分や獲得単価のコントロールを取り戻す。複雑化したターゲティングは精査し、もっとも成果につながるセグメントに絞り込んで配信する。これらの運用判断は、「CPAを目標値以下で安定させる」など、チーム全体で合意した定量的な目標を指針にすることで、感情ではなくデータに基づいて進めることができる。守りが確立された後に移行するのが「攻め」のフェーズだ。ただし、単にCPAが安定しただけでは不十分で、「この施策を展開すれば、獲得件数がこれだけ伸びる」というデータに基づいたシミュレーションが見えた段階で、はじめて攻めに転じる。このフェーズでは、守りで得た勝ち筋をもとに、他カテゴリへの横展開を進める。映像コンテンツを扱う商材を例にすると、アニメやドラマ、映画といったコンテンツごとに最適な訴求やクリエイティブを設計し、それぞれで成果を高める。さらに、訪問履歴や検討期間に応じたセグメントを細分化し、リターゲティングの精度を上げる。反響の大きいタイトルに絞った個別最適化も、効率と成果の両立に効果的だ。最終的にこの戦略を成功させるには、「何を捨て、何に集中するか」という決断力が欠かせない。広告運用には絶対的な正解はなく、過去の成功体験が次の成功を保証するとは限らない。「この施策も、もう少し続ければ改善するかもしれない」という淡い期待を断ち切り、今の市場やサービスに合わなければ潔く手放す。合理的にフェーズごとの目的と判断基準を明確に定め、フェーズごとに広告運用の手法を変えていくことで、成果が得られ、事業成長につながる。