新規事業を立ち上げる際には、ビジネスとしての永続的な発展を見据え、企業の予算やキャッシュフローの状況に合わせた試算表を事前に組み立てることが重要。これにより、現実的な前提を踏まえた上での事業推進が可能となる。例えば、キャッシュに余裕がなく、投資回収期間を短期で見積もる必要がある場合、1年以上先に単月黒字化を見込んだ試算をするのはリスクが高い。途中でプロジェクト自体が資金不足に陥り、停止せざるを得ない状況になる可能性がある。さらに、メイン事業部が短期収益を重視するPLベースの管理会計を行っている場合、当初は長期回収を容認していても、方針変更によって新規事業が中断することもある。特に、メイン事業がレッドウォーシャン化し、じわじわ業績が落ちている企業は、新規事業のアイデアでブルーウォーシャン化しようとする傾向がある。
特に短期での収益化が求められる場合、確実性のある事業を選択する視点が求められる。つまり、ニーズがあるのかさえ不明な不確実な高い「ブルーオーシャン」の市場を選択するよりも、ニーズが明確で競争の激しい「レッドウォーシャン」の市場に参入するほうが、独自の差別化を図る方が収益改修の道筋が立てやすく、短期の投資回収も見込みやすい。一例を挙げると、CPAが25,000円で損益分岐に到達する場合、これを15,000円に下げる施策を講じれば、短期間での収益化が現実味を帯びてくる。ここでのポイントは、単なる価格競争ではなく、ターゲットのニーズに合わせた明確な差別化を行うことにある。差別化を考える際、年齢や年収といった単純なセグメンテーションではなく、ターゲットのニーズに基づいた差別化要素を探る方が効果的かつ重要。ニーズに即したアプローチを行うことで、見込み顧客の取りこぼしを減らし、より精度の高いターゲティングが可能になる。仮に既存の新規事業のアイデアがある場合、そのアイデアが満たすニーズをもとに、近い領域のレッドウォーシャン市場を見つけ出し、内容をブラッシュアップすることでより強い競争力を持たせることができる。一方で、具体的なアイデアがない場合には、既存サービスを活用しつつ、異なるコミュニケーション手法や切り口を提案することで新規事業に落とし込むと、短期間で展開できることもある。新規事業を立ち上げる際には、夢のあるアイデアに魅了され、インパクトを求めることが多い。しかし、最初にモチベーションが高くとも、成果が伴わなければチームや会社の支持を失い、事業が冷ややかに見られることになる。企業の規模やキャッシュ状況を見極め、何が市場に求められているかを徹底的に掘り下げ、前提条件を揃えた上で着実に進めることが成功の鍵だ。