AIを活用した企画書作成の進め方|手順・プロンプト設計・注意点を解説
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
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生成AIの進化により、企画書の作成プロセスは大きく変わりつつあります。情報収集から構成の立案、文章の生成まで、これまで何時間もかかっていた作業の多くをAIが支援できるようになりました。
一方で、以下のような声も増えています。
- AIに企画書を作らせてみたが、どこかで見たような内容ばかりで独自性がない
- プロンプトの書き方次第で出力の質が大きく変わるが、どう設計すればよいかわからない
- 機密情報の扱いやハルシネーションへの対処法が整理できておらず、実務で使いにくい
そこで本記事では、AIを活用した企画書作成の具体的な手順を5ステップで整理し、プロンプト設計のコツや品質を高めるための注意点まで、実務で使える進め方を体系的に解説します。
目次
AIを活用した企画書作成とは
AIを活用した企画書作成とは、生成AIに情報整理・構成案の作成・文章の起草といった工程を任せることで、企画書の制作を効率化する手法です。単に「AIで文章を書かせる」だけではなく、企画書の構成設計から壁打ち、ブラッシュアップまでを含めた幅広い活用方法が広がっています。
ここでは、AIが担える工程と人が担うべき領域の線引き、そしてAIの活用範囲がどこまで広がっているのかを整理します。
AI企画書作成で代替できる工程と代替できない工程
企画書作成のプロセスは、大きく分けて「情報収集」「構成設計」「文章化」「デザイン・視覚化」「レビュー・承認」の5つのフェーズに分かれます。このうち、AIが効果的に代替できるのは前半の3つが中心です。
AIが得意とする工程は以下の通りです。
- 情報収集と整理:市場の概況、業界動向、競合の公開情報などを短時間で収集し、要点をまとめる工程です。手作業では数時間を要する情報の整理を、AIであれば数分で完了できます
- 構成案の作成:目的・背景・課題・提案・期待効果といった論理的な流れに沿った骨子を提案する工程です。AIは大量のビジネス文書を学習しているため、企画書の基本構造を踏まえた骨子を素早く出力できます
- 文章の起草:各セクションのドラフトを、読み手の属性に合わせたトーンで生成する工程です。たたき台として使える品質の文章を短時間で用意できます
- 視覚化の補助:図表の構成案やスライドのレイアウト案を提示する工程です。完成品ではないものの、デザインの方向性を検討する素材としては十分に機能します
一方で、AIだけでは対応が難しい工程もあります。
- 企画の方向性を決める意思決定:どの課題に優先的に取り組むか、どのような解決策を提案するかは、事業の戦略や組織の状況を踏まえた人間の判断が不可欠です
- 自社固有の課題や制約条件の定義:自社の内部事情、予算制約、政治的な配慮などは、AIが自動的に把握できるものではありません
- 社内政治や人間関係を踏まえた調整:企画書が通るかどうかは、論理だけでなく、関係者の感情やタイミングにも影響されます。この部分はAIでは代替できません
- 最終的な品質判断と承認:企画書の完成品として十分な品質かどうかを判断するのは、内容を深く理解した担当者の役割です
重要なのは、AIが生成する企画書はあくまでも「たたき台」であるという前提です。AIの出力を土台にしながら、人間が判断・修正・追加を行うことで、初めて実務に耐える企画書が完成します。
人が担うべき領域の見極め方
AIと人の役割分担を考える際に有効なのが、「判断が必要か、作業が必要か」という切り分けです。この軸で整理すると、どの工程をAIに任せるべきかが明確になります。
作業的な要素が強い工程は、AIに任せる候補になります。たとえば、「過去の企画書のフォーマットに沿って情報を埋める」「収集したデータを表やグラフに変換する」「文章の表現を整え、誤字脱字をチェックする」「類似した企画書のパターンを検索して比較する」といった作業は、AIが効率よく処理できます。これらの作業を人間が行うと時間がかかるうえに、集中力の低下による品質のムラも発生しがちです。
一方、判断が求められる工程は、人が担うべき領域です。「この企画を誰に向けて、どういう順番で伝えるか」「どのデータを採用し、どのデータを省くか」「提案内容がクライアントの真の課題に合致しているか」「この表現は読み手の心証にどう影響するか」といった判断は、現場の文脈や関係者の意図を理解している人間にしかできません。
実務では、この線引きを明確にしたうえで、AIに任せる工程と自分が担当する工程を事前に決めておくと、作業の手戻りが減ります。特に、プロジェクトの初期段階で「AIに任せること」「自分がやること」のリストを作成しておくと、作業が進むにつれて境界が曖昧になることを防げます。
弊社のプロジェクトでも、「誰に、何を、どのように届けるべきか」という基本戦略の整理は必ず人が主導し、その上で具体的な施策の実行計画をAIの支援を受けながら策定するという進め方をとっています。企画書作成においても、戦略の意思決定は人が行い、その戦略を形にする作業をAIに任せるという分担が効果的です。
「たたき台の生成」から「思考の壁打ち」まで
AIの活用方法は、「たたき台を作らせる」だけにとどまりません。近年では、AIを「思考の壁打ち相手」として使う活用法が注目されています。企画書の内容を練り上げるプロセスにおいて、AIとの対話が思考を深める役割を果たすのです。
具体的には、次のような使い方が考えられます。
- 企画の方向性を複数パターン提示させ、比較検討の材料にする:一人で考えると視野が狭まりがちですが、AIに異なるアングルの提案を出させることで、見落としていた切り口に気づくことがあります
- 自分が書いた企画書の論点に抜け漏れがないかをチェックさせる:「この企画書で読み手が疑問に思いそうなポイントを挙げてください」と依頼すると、自分では気づかなかった弱点が浮かび上がります
- 想定される反論や質問をAIに出させ、事前に回答を準備する:プレゼンテーションを控えている場合、AIに「経営陣の立場からこの企画への懸念点を5つ挙げてください」と依頼することで、想定問答を事前に整理できます
- ターゲット読者の立場に立ったフィードバックを依頼する:「あなたは中堅企業のマーケティング部長です。この企画書を読んで、承認するかどうかを判断してください」と指示することで、読み手の視点からの評価を得られます
このように、AIを「作業の代行者」ではなく「対話の相手」として位置づけることで、企画の質を高めることが可能になります。
ある企業では、AIとの対話形式でメンバーの知見を引き出す仕組みを構築し、コンテンツ制作の生産性を大幅に向上させた事例があります。この取り組みでは、メンバーがAIと会話するだけでコンテンツが形になる仕組みを設計し、専門知識を持つメンバーの暗黙知を効率よくアウトプットに変換できるようにしました。企画書作成においても同様に、AIとの対話を通じて自分の思考を言語化し、整理するというアプローチは有効です。
AIを活用するメリットとつまずきやすいポイント
AIを活用した企画書作成には明確なメリットがある一方で、導入時につまずきやすいポイントも存在します。メリットだけに注目して導入を進めると、期待どおりの成果が得られないまま「AIは使えない」という評価に落ち着いてしまうケースも見られます。
ここでは、メリットと注意点の両面を整理し、実務でどのように向き合うべきかを解説します。
時間短縮と複数案の比較検討
AIを活用する最大のメリットは、企画書作成にかかる時間の短縮です。
従来、企画書を一本作成するには、情報収集に数時間、構成の検討に数時間、文章化に数時間と、合計で丸一日以上を要するケースが少なくありませんでした。特にBtoBの提案書では、クライアントの業界情報の収集、競合の状況整理、自社サービスとの適合性の検証など、準備段階だけでもかなりの時間を消費します。AIを活用すると、これらの工程の多くを短時間で処理できるため、担当者はより上流の戦略検討やクライアントとの対話に時間を充てられるようになります。
もうひとつの大きなメリットが、複数案の比較検討が容易になることです。同じテーマでも、切り口を変えた企画案を複数パターン生成できるため、チーム内での議論の質が高まります。従来は「一案に絞って提出」が一般的だった場面でも、「三案を比較して最適なものを選ぶ」というプロセスが現実的になります。これにより、企画の質が属人的なスキルに依存しにくくなり、チーム全体のアウトプットの底上げにつながります。
ただし、AIが真に価値を発揮するのは最初の一本ではなく、反復的に活用した後です。プロンプトの改善やインプット情報の整理を繰り返すことで、回を重ねるごとに出力の精度が向上し、作業時間はさらに短縮されます。弊社の知見でも、AIの活用は初回の試行錯誤を経て、反復するほど効率が高まる構造であることが確認されています。初回に時間をかけてプロンプトとインプット情報を練り込んでおけば、次回以降は同じテンプレートを応用して短時間で企画書を仕上げられるようになります。
AIで作った企画書が「薄く」なる原因
AIに企画書を作らせたものの、「どこかで見たことがある」「自社の強みが反映されていない」「提案の根拠が一般論に終始している」と感じたことがある方は多いでしょう。
AIが生成する企画書が「薄く」なる主な原因は、インプット情報の不足にあります。AIは与えられた情報をもとに出力を構成するため、「企画書を作ってください」という漠然とした指示だけでは、一般的で平均的な内容にとどまります。これは、AIが学習した大量のビジネス文書の「最大公約数」を出力してしまうためです。
この問題を解決するには、以下の3点を意識することが重要です。
インプット情報を具体的にする
企画の背景、ターゲットの属性、自社のポジション、競合との差別化要素など、企画書の核心となる情報をAIに渡す必要があります。「誰に」「何を」「なぜ」の3点が明確であるほど、AIの出力は具体性を増します。
たとえば、「新規事業の企画書を作ってください」という指示と、「年商50億円規模の製造業向けに、既存のデータ分析基盤を活用した予知保全サービスの企画書を作ってください。読み手は製造業の経営層で、設備投資の判断を行う立場にあります」という指示では、AIの出力の具体性がまったく異なります。
自社固有の知見を加える
AIは一般的な知識に基づいて文章を生成しますが、自社独自の事例やデータ、現場で蓄積されたノウハウは持っていません。AIの出力を土台にしつつ、自社ならではの視点や実績を加えることで、独自性のある企画書に仕上がります。
具体的には、以下のような情報をAIのドラフトに追加します。
- 過去の類似プロジェクトで得られた実績や教訓
- クライアントとのヒアリングから得られた一次情報
- 社内のベテラン担当者が持っている業界特有の判断基準
- 自社のサービスだからこそ実現できるアプローチ
出力結果を「完成品」ではなく「素材」として扱う
AIの出力は、あくまで企画書のたたき台です。そのまま使うのではなく、自分の言葉で書き直したり、不要な部分を削除したり、論点を追加したりすることで、初めて「自分の企画書」になります。
弊社ではこの考え方を「アウトプットの責任は常に使用者側にある」と整理しています。デザインが不格好な資料を作成した場合にPowerPointの責任にはならないのと同様に、AIの出力の質は使用者のインプットの質に依存します。AIが生成した平均的な文章を「AIの限界」と見なすのではなく、「自分のインプットの改善余地」として捉えることが、AIを使いこなすための基本的な姿勢です。
機密情報とハルシネーションへの対策
AIを企画書作成に活用する際、避けて通れないのが情報セキュリティとハルシネーション(※AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成する現象)への対策です。この2点は、企画書の信頼性に直結するため、事前に対応方針を定めておく必要があります。
機密情報の取り扱い
生成AIにプロンプトとして入力した情報が、AIの学習データに利用される可能性があるサービスも存在します。企画書には顧客情報や未公開の事業計画が含まれることが多いため、安全に利用するための対策が求められます。
確認すべきポイントは次の通りです。
- 利用するAIサービスのデータ利用ポリシーを確認する:特に「入力データを学習に使用しない」と明記されているプランを選ぶことが重要です
- 法人向けプランを選択する:個人向けの無料プランでは、データの取り扱いに関するガバナンスが十分でないケースがあります
- 固有名詞や具体的な数値は匿名化してから入力する:たとえば、クライアント名を「A社」に置き換えたり、具体的な売上数値をレンジ表記にしたりすることで、情報漏洩リスクを低減できます
- 社内のAI利用ガイドラインを策定し、ルールを明文化する:どの情報をAIに入力してよいか、どのサービスを使ってよいかを組織として定めておくことが、トラブル防止の基本です
ハルシネーションへの対処
AIは論理的に正しく見える文章を生成する能力に優れていますが、事実と異なる情報を含むことがあります。特に、市場規模のデータ、法規制に関わる記述、競合他社の情報などは、AIが推測で補完してしまうケースが多く見られます。
企画書にAIが生成した不正確な情報が含まれると、プレゼンテーションの場で指摘を受けたり、意思決定を誤ったりするリスクがあります。ハルシネーションへの対処法としては、以下が有効です。
- AIの出力に含まれるデータや固有名詞は、必ず一次情報で裏付けを取る:公的機関の公表資料や企業の公式サイトなど、信頼性の高い情報源で確認します。「出典を明記して」と指示しても、AIが存在しないURLや架空の調査名を生成する場合があるため、出典の確認は必ず人が行い、実在する情報源かどうかを検証してください
- 事実と意見を分離し、AIの出力のうちどこまでが事実に基づくかを判断する:「市場は拡大傾向にある」という記述が事実なのか、AIの推測なのかを見極めることが必要です。AIに「不確実な情報には、その旨を明記してください」と指示することで、確度の低い情報を識別しやすくすることも一つの方法です
企画書は社内外の意思決定に影響するドキュメントであるため、AIの出力をそのまま採用することは避け、人による確認プロセスを必ず設けることが重要です。
AIで企画書を作る5つのステップ
ここからは、AIを活用して企画書を作成する具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。各ステップで何をすべきか、AIにどのような指示を出すべきかを整理しています。このステップは、企画書の種類(社内提案、クライアント向け提案書、事業計画書など)を問わず共通して適用できる基本フローです。
目的・前提条件の整理
最初のステップは、企画書の目的と前提条件を明確に言語化することです。この工程は、AIへのインプットの質を決定する重要なフェーズであり、ここでの準備が企画書全体の精度を左右します。
具体的に整理すべき項目は以下の通りです。
- 企画の目的:この企画書で何を実現したいのか。予算の承認を得たいのか、新規プロジェクトの開始を提案したいのか、既存施策の改善を訴えたいのか。目的が異なれば、企画書の構成もトーンも変わります
- 読み手:誰が読み、誰が承認するのか。読み手の立場や関心事によって、強調すべきポイントが変わります。経営層であればROIや市場機会に関心が高く、現場担当者であれば実行可能性や具体的な手順に関心が向きます
- 背景・課題:なぜこの企画が必要なのか。現状の課題を具体的に言語化し、その課題が放置された場合に生じるリスクも合わせて整理します
- 制約条件:予算、スケジュール、リソース、技術的な制約など、企画の実行を制限する条件を明確にします
- 成功基準:何をもって成功とするのか。定量的な指標(売上、コスト削減額、リード獲得数など)と定性的な指標(顧客満足度の向上、ブランド認知の強化など)の両面から設定します
- 競合・代替案:比較対象となる選択肢は何か。なぜ他の選択肢ではなく、この提案を選ぶべきなのかを説明できる材料を用意します
これらの情報を箇条書きやテンプレートで整理し、AIに渡すことで、後続のステップで生成される構成や文章の精度が格段に上がります。
弊社のプロジェクトでも、クライアントのマーケティング支援を始める際に、まず「誰に、何を、どのように届けるべきか」という基本戦略を整理し、その上で施策の優先順位を決定する進め方をとっています。企画書作成におけるAI活用もまったく同じで、最初に情報を整理する工程を省略すると、後から手戻りが発生しやすくなります。
構成(骨子)の生成
目的と前提条件が整理できたら、次はAIに企画書の構成案(骨子)を生成させます。骨子は企画書の「設計図」に相当するものであり、ここの精度が最終的な企画書の説得力を大きく左右します。
AIに渡す情報としては、前のステップで整理した目的・背景・制約条件に加えて、以下の要素を含めると効果的です。
- 企画書のフォーマット(スライド形式か、ドキュメント形式か)
- 想定するページ数やセクション数
- 各セクションに期待する内容の概要
- 参考にしたい既存の企画書がある場合は、その構成パターン
構成案をAIに生成させる際のポイントは、「一度で完成させようとしない」ことです。最初に出力された骨子を確認し、論点の過不足やセクションの並び順を調整したうえで、再度AIに修正を依頼する。この反復プロセスを2〜3回繰り返すことで、論理的に一貫性のある構成に仕上がります。
骨子の段階で確認すべき観点は以下の通りです。
- 論理の流れに飛躍がないか:「現状分析」から「提案」にいきなり飛んでいないか、間に「課題の定義」が入っているかを確認します
- 読み手にとって不足している情報はないか:読み手が企画の背景を十分に理解できるだけの情報が含まれているかを検証します
- 提案内容が目的に直結しているか:企画書の目的と、提案内容との間に論理的なつながりがあるかを確認します
- 各セクションの粒度が揃っているか:あるセクションだけ極端に詳細で、他が薄いというバランスの崩れがないかを確認します
この段階で構成に問題があると、後の文章化フェーズでも修正が難しくなるため、骨子の精度を上げることに時間をかける価値があります。
各セクションの詳細生成
骨子が固まったら、各セクションの詳細な文章をAIに生成させます。このステップが、企画書の「中身」を作り込むフェーズです。
ここで重要なのは、すべてのセクションを一度にまとめて生成するのではなく、セクション単位で個別に指示を出すことです。「背景」「課題分析」「提案内容」「実行計画」「期待効果」といったパートごとに分けて依頼することで、各セクションの深度と具体性が増します。
各セクションを生成する際に含めるべき指示のポイントを整理します。
- 対象セクションの目的を明確に伝える:たとえば、「このセクションでは、読み手に課題の深刻さを理解してもらい、解決策の必要性を感じてもらうことが目的です」と指定します
- そのセクションで使用可能なデータや情報があれば、併せて提供する:AIは与えられた情報をもとに文章を構成するため、インプットが豊富であるほど出力の質が上がります
- 文体やトーンを指定する:たとえば、「経営層向けのフォーマルなトーンで、専門用語を避けて平易に書いてください」と指示します
- 文字数の目安を指定する:「このセクションは300〜400文字で」と指定することで、過不足のない分量に収まります
- 読み手のアクションを意識させる:「このセクションを読み終えた読み手が、次に知りたいと思うことは何かを意識して書いてください」と指示することで、読み手の視点に立った文章が生成されやすくなります
AIに一括で「全体を書いて」と依頼すると、各セクションの連携は取れるものの、個々のセクションの深度が浅くなりがちです。セクション単位で丁寧に指示を出すことが、企画書全体の質を底上げするコツです。
また、各セクションの生成結果を確認する際には、「このセクションだけを読んで意味が通じるか」「前後のセクションとの接続は自然か」という2つの視点でチェックすると、品質のムラを防ぐことができます。
事実確認と独自視点の追加
AIが生成した文章のドラフトが揃ったら、次のステップは事実確認と独自視点の追加です。この工程は、AIを活用した企画書作成において最も重要なフェーズと言えます。ここでの作業が、「AIで作った企画書」と「AIを活用して作った質の高い企画書」の差を生みます。
事実確認で検証すべきポイント
- 数値データの正確性:市場規模、成長率、業界統計などのデータが正しいかを、一次情報にあたって確認します。AIが生成した数値は、推測や古い情報に基づいている場合があります
- 固有名詞の確認:企業名、サービス名、法令名、業界団体名などに誤りがないかを検証します。AIが存在しない組織名やサービス名を作り出すことも稀ではありません
- 論理の整合性:前提→課題→提案→効果の流れに矛盾がないかを通しで確認します。セクション単位で生成した場合、全体を通して読むと論理が一部噛み合わないことがあります
- 時制の適切さ:過去の事実と現在の状況、将来の予測が正しく区別されているかを確認します。AIは時制の取り扱いが不安定になることがあるため、注意が必要です
独自視点を加える方法
事実確認と並行して、自社ならではの視点や情報を加えます。この作業こそが、AIの出力を「どこにでもある企画書」から「この企業にしか書けない企画書」へと変える最も重要なプロセスです。
具体的には、以下のような要素を追加します。
- 自社が過去に取り組んだ類似プロジェクトの知見や実績データ
- クライアントとのヒアリングや現場訪問から得た一次情報
- 業界の常識に対する自社独自の見解や解釈
- 競合が言及していない論点や、独自のアプローチ方法
- 社内のベテラン担当者から聞いた、数字には現れない判断基準
AIが生成する文章はどうしても「一般的に正しいこと」の集合になりがちです。ここに自社固有の知見や現場の実感を加えることで、読み手にとって「自分ごと」として感じられる企画書に仕上がります。
視覚化と最終調整
最後のステップは、テキストベースの企画書を視覚的に整え、最終調整を行う工程です。どれだけ内容が優れていても、視覚的な見せ方が不十分だと、読み手にメッセージが伝わりにくくなります。
AIを活用したスライド生成やデザイン支援も進化していますが、視覚化においてはAIの出力をそのまま使うよりも、人間が最終的な調整を行うほうが効果的です。AIはテキストの生成には優れていますが、情報のメリハリや読み手の感情に配慮したデザインの判断は、現時点では人間のほうが得意な領域です。
視覚化で意識すべきポイント
- 一枚のスライドで伝えるメッセージは一つに絞る:情報を詰め込みすぎると、何が重要なのかが伝わりません
- テキスト量を最小限にし、図表やチャートで視覚的に訴求する:文字だけのスライドが続くと、読み手の集中力が途切れます
- 読み手の理解を助けるフロー図やマトリクスを活用する:特にプロセスの説明や比較分析では、視覚的な整理が効果的です
- 配色やフォントは社内のブランドガイドラインに準拠する:統一感のないデザインは、提案の信頼性を損なう要因になります
最終調整のチェックポイント
- 全体のストーリーラインが一貫しているか:最初から最後まで通して読み、話の流れに違和感がないかを確認します
- 各スライドの接続が自然か:前のスライドから次のスライドへの流れがスムーズかどうかを検証します
- 読み手にとって不明瞭な専門用語がないか:初出の専門用語には簡潔な説明を添えます
- 「だから何をすべきか」が明確に示されているか。企画書の結論が具体的なアクションにつながっているかを確認します
- 誤字脱字や表記ゆれがないか:最終段階でのケアレスミスは、内容の信頼性を損ないます
企画書の最終的な品質は、このステップでの磨き込みにかかっています。AIが生成したドラフトを土台に、読み手の視点に立って一枚ずつ確認し、調整を加えることが、説得力のある企画書に仕上げるための最後の工程です。
AIから質の高い企画書を引き出すプロンプト設計
企画書の質を左右する大きな要因のひとつが、AIに対する指示(プロンプト)の設計です。同じAIを使っていても、プロンプトの書き方次第で出力の質は大きく変わります。ここでは、企画書作成に特化したプロンプト設計のコツを3つの観点から解説します。
役割・目的・読者を明示する
プロンプト設計で最初に押さえるべきポイントは、AIに対して「役割」「目的」「読者」の3点を明確に伝えることです。この3要素がプロンプトに含まれているかどうかで、出力の具体性と実用性が決まります。
たとえば、以下のような指示の違いで、出力の質は大きく変わります。
曖昧な指示の例:「新規事業の企画書を作ってください」
具体的な指示の例:「あなたはBtoB向けSaaS企業のマーケティング責任者です。既存サービスの顧客基盤を活用した新規サービスの企画書を作成してください。読み手は経営会議のメンバー(CEO、CFO、事業部長)です。提案の目的は、来期の予算確保と開発リソースの承認です。各セクションは300文字以内で簡潔にまとめてください」
後者のように、AIに「誰として」「何のために」「誰に向けて」書くのかを具体的に伝えることで、出力されるトーン、粒度、構成が読み手に合ったものになります。
この考え方は、AIを未経験の新人に仕事を教えるのと同じ構造です。「この企画書のポイントはここ」「こういう順番でまとめて」「読む人はこういう立場の人だから、こういう情報を重視している」という具体的な構成案と指示を徹底することで、アウトプットの質が格段に向上します。逆に、曖昧な指示でAIに丸投げすると、一般的で当たり障りのない出力に落ち着いてしまいます。
役割設定の具体例をいくつか紹介します。
- 「あなたは広告代理店のプランナーです。食品メーカーの新商品発売キャンペーンの提案書を作成してください」
- 「あなたは製造業のDX推進担当です。工場のIoT化に関する社内稟議書を作成してください」
- 「あなたはスタートアップのCOOです。投資家向けの事業計画書を作成してください」
このように、AIの「立場」を具体的に指定することで、その立場にふさわしい専門用語、論点、優先順位を踏まえた出力が得られます。
構造を指定し、曖昧表現を避ける
次に重要なのが、企画書の構造をプロンプト内で明確に指定することです。AIは与えられた構造に沿って文章を生成するため、構造の指定が具体的であるほど、期待通りの出力が得られます。
「目的→背景→課題→提案→実行計画→期待効果→リスクと対策」のように、セクションの順序と各セクションに期待する内容を具体的に指定することで、論理的に一貫した企画書が生成されやすくなります。
構造指定の具体例を紹介します。
- 「以下の構成で企画書のドラフトを作成してください」と前置きし、セクション名と各セクションの文字数目安を箇条書きで提示する
- 各セクションに「このセクションのゴール」を添える(例:「課題セクションのゴール:読み手が現状の問題を自分ごととして認識できる状態にすること」)
- 具体的な数値基準を示す(例:「提案内容は3つ以内に絞る」「期待効果は定量指標と定性指標の両方を含める」「実行計画は四半期単位のスケジュールで示す」)
- 出力形式を明示する(例:「箇条書きではなく段落形式で」「表形式で比較してください」「フロー図の構成案をテキストで示してください」)
避けるべきなのは、「良い感じにまとめてください」「わかりやすく書いてください」といった曖昧な表現です。「良い」「わかりやすい」の基準は人によって異なるため、AIもどこに着地すべきか判断しにくくなります。
代わりに、「経営会議で5分間のプレゼンに使用する想定で、各スライドの主張を一文で要約できる粒度で書いてください」のように、具体的な利用シーンと判断基準を示すことで、AIの出力はより実務に即したものになります。
また、「〜してはいけない」という否定条件をプロンプトに含めることも効果的です。たとえば、「抽象的な表現は避け、すべての提案に具体的なアクションを含めてください」「業界用語を使う場合は、初出時に簡潔な定義を添えてください」といった条件を加えることで、出力のブレを減らすことができます。
反復改善を前提にした対話の進め方
プロンプト設計において最も見落とされがちなのが、「一度の指示で完成させようとしない」という考え方です。多くの場合、AIへの期待値が「一発で完成品が出てくること」に設定されているため、初回の出力に失望し、AI活用を諦めてしまうケースが見られます。
AIとのやりとりは、一問一答ではなく対話として進めるのが効果的です。最初の出力を確認し、「この部分は良いが、ここは修正してほしい」「この論点を追加してほしい」「トーンをもう少しフォーマルにしてほしい」とフィードバックを重ねることで、段階的に精度が上がります。
反復改善の進め方として、以下のプロセスが有効です。
- 1回目:全体の骨子と方向性を確認する。この段階では文章の質は問わず、「論点に過不足がないか」「セクションの並び順は適切か」だけを判断します
- 2回目:各セクションの深度と具体性を調整する。具体例の追加、データの挿入ポイントの指定、議論を深めたいセクションの特定を行います
- 3回目:文体の統一、表現の洗練、不要な部分の削除を行う。この段階で初めて「文章の質」に注力します
- 4回目:読み手の視点でのフィードバックを依頼する。「この企画書を受け取った経営層が最初に抱く疑問は何か」と質問し、想定問答の材料にします
この反復プロセスを通じて、AIの出力は回を追うごとに精度が上がります。弊社の知見でも、AIの価値は初回の出力ではなく、反復的に活用する中で発揮されることが確認されています。初回に時間をかけてプロンプトとインプット情報を磨き込むことで、次回以降の作業時間は大幅に短縮されます。
また、反復改善を前提にすることで、AIの出力に対する心理的なハードルも下がります。「一発で正解を出さなければ」というプレッシャーがなくなり、AIとの対話を通じて企画を練り上げていくという建設的なプロセスに変わります。
もうひとつ重要なのは、優れたプロンプトやフィードバックのパターンを蓄積しておくことです。一度うまくいったプロンプトの構造やフィードバックの表現を記録し、次回の企画書作成に再利用することで、反復のたびに精度が向上するだけでなく、チーム内での知見共有にもつながります。
組織でAIを活用した企画書作成を定着させるには
ここまでは個人でのAI活用を中心に解説してきましたが、組織全体でAIを活用した企画書作成を定着させるには、個人の取り組みとは異なるアプローチが必要です。個人の成功体験を組織全体に広げるためには、仕組みと文化の両面からの取り組みが求められます。
暗黙知を引き出す仕組みとスモールスタートの考え方
組織でAI活用を進める際にまず向き合うべき課題は、ベテラン担当者の頭の中にある企画のパターンや判断軸をどう引き出し、共有するかという点です。
企画書には、表面的なフォーマットやロジックだけでは捉えられない「暗黙知」が多く含まれています。たとえば、「このクライアントにはこの切り口が響く」「この業界では、まず数字のインパクトを見せてから詳細に入るほうが承認を得やすい」「この類の提案では、リスク対策のセクションを厚くしないと経営層の不安が払拭できない」といった判断は、経験に基づくものであり、マニュアル化が難しい領域です。
AIを活用すると、この暗黙知を引き出す仕組みを構築できます。具体的には、AIとの対話形式でベテランの思考プロセスを言語化し、それをプロンプトのテンプレートやナレッジベースとして蓄積する方法があります。ベテランが「なぜこの構成にしたのか」「なぜこのデータを選んだのか」をAIとの対話で言語化することで、これまで個人の中に閉じていたノウハウを組織の共有資産に変えることができます。
ある企業では、AIとの対話を活用して社内メンバーの知見をコンテンツ化する仕組みを構築し、これまで外部の編集者に依頼していた月2本の制作から、社内メンバーによる月30本以上の制作体制へと大幅に生産性を向上させました。この事例では、AIリテラシーが低いメンバーが多い中でも、環境構築を支援し、まず体験してもらうことから始めるアプローチで段階的に展開しました。品質のばらつきが課題になった際は、人を制御するのではなくAI側のプロンプトを改善することで品質を安定させるという発想で対処しています。
企画書作成においても、同じアプローチが有効です。以下のステップで段階的に進めることが推奨されます。
スモールスタートの進め方
- まずは少人数(2〜3名)で試行し、効果と課題を洗い出す:全社展開を前提にしつつも、初期段階では小さく始めて知見を蓄積します
- 成功事例を社内で共有し、関心を持つメンバーを巻き込む:「AIを使ってこの企画書を半分の時間で作成できた」という具体的な実績が、最も説得力のある導入推進材料になります
- プロンプトのテンプレートや企画書のフォーマットを標準化する:個人ごとにバラバラの使い方をしていると、品質のばらつきが生じます
- 品質のばらつきが出やすいポイントを特定し、プロンプトで制御する:「最終チェックリスト」をAIに実行させるなど、品質担保の仕組みを組み込みます
定着に向けて意識すべきポイント
- AIが生成した企画書の品質チェック基準を明文化する:「何をもって承認可能な品質とするか」を組織として定義しておきます
- チーム内でプロンプトや出力結果のフィードバックを共有する場を設ける:週次のミーティングで「こういうプロンプトが効果的だった」「この指示だとうまくいかなかった」という知見を交換します
- 「AIを使うこと」を目的化せず、「企画の質と速度を上げること」を目的として位置づける:ツールの導入が目的ではなく、成果の向上が目的であることを常に意識します
- AI活用に消極的なメンバーに対して、まず体験する機会を提供する:使ったことがない状態で否定的な判断を下すケースは少なくありません。短時間のハンズオンセッションで「触れてみる」機会を設けることが有効です
組織でのAI活用は、ツールの導入だけでは定着しません。メンバーが「これは便利だ」「これなら続けられる」と実感する成功体験を積み重ねることが、定着への近道です。
全社に一斉展開するのではなく、まずは少人数で成果を出し、その実績をもとに段階的に広げていくアプローチが、組織変革において最も再現性の高い方法です。
まとめ
AIを活用した企画書作成は、正しい手順で進めることで、時間短縮と品質向上の両立が可能になります。
本記事のポイントを整理します。
- AIは情報収集、構成設計、文章化の工程で効果を発揮するが、意思決定や独自視点の追加は人が担う領域である
- AIの出力が「薄く」なる原因はインプット情報の不足にあり、目的・背景・制約を具体的に整理してからAIに指示を出すことが重要である
- プロンプト設計では、役割・目的・読者の明示と、構造の具体的な指定が出力の質を決定する
- 一度で完成させようとせず、反復的にAIとの対話を重ねることで、段階的に精度が向上する
- 組織への展開は、スモールスタートで成功体験を積み、段階的に広げていくアプローチが有効である
AIは万能な企画書作成ツールではなく、担当者の思考を加速させるためのパートナーです。自社の知見やクライアントとの対話から得られた一次情報を組み合わせることで、AIだけでは到達できない説得力のある企画書を作成できるようになります。
この記事は、社内の知見や実績データを活用し、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを生み出すよう設計されたAIを活用して制作し、マーケターがレビュー・監修した後に公開しています。KAAANは、AIと人の共創によって高品質なコンテンツを効率的に制作しています。
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著者
齊藤 麻子(まこりーぬ)
Media Planner / Editor
業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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齊藤 麻子(まこりーぬ)
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業界歴10年以上。LIGブログ編集長などを経て、2026年5月よりKAAANにジョイン。AI Drivenな自社広報・メディアプランニングを担う。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)
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