コーポレートサイトやサービスサイト、採用サイト、オウンドメディアの制作・リニューアルに取り組む際、どのようなサイトにすべきかを検討することはよくあるが、重要なのは、コミュニケーションをとる手段の一つに過ぎないという点である。コミュニケーションをとる場は他にもSNS、CM、OOH、営業、接客、CRM、MAなど多様なチャネルが存在する。サイト単体で考えすぎると、全体の統一感を欠いてしまう危険がある。例えば、サイトを煌びやかに見せて企業の未来像を強調した結果、実際に入社してきた社員や顧客がそのイメージと乖離を感じ、期待外れの印象を抱くことがある。これにより、業績が中長期的に悪化するケースも少なくない。重要なのは、企業やサービスがステークホルダーやターゲットに対してどのようなコミュニケーションをとるべきかという全体像を設計し、その方向性に基づいてサイトのリニューアルを進めることである。このような基盤があれば、どのようなサイトを作るべきかが自然に見えてくる。
サイトの目的によって異なるが、解決策として有効なのがターゲットごとのコミュニケーションマップを作成すること。これは、顧客や求職者などのターゲットがどのような経路で企業やサービスを知り、何に関心を持ち、どのような課題を抱えて選ばれるのかを、態度変容のプロセスに基づいて整理するものである。これらを整理した上で、現在実施している施策がどの態度に対して展開しているのかを態度ごとに施策を分類し、企業やサービス全体の状況を可視化することで、改善ポイントを特定できる。さらに、リニューアルを検討した目的に応じて、変えたいこと、追加で行うべきことなどを精査し、リニューアル後の理想的なコミュニケーションマップを更新する。この段階で、サイトの役割や新たに加えるべき要素が明確になり、リニューアルがスムーズに進行する。現状の可視化では、現在の状態を客観的に把握し、主観的な解釈を排除することが重要。これにより、理想と現状のギャップを明確にし、関係者の間で誤解や対立を防ぎやすくなる。リニューアルでよくある誤解として、「リニューアルすること自体がゴール」と捉えてしまうことがあるが、これでは本来の目的を見失ってしまう。リニューアルは新たなスタートのきっかけであり、リニューアルと同時に変化を取り入れ、事業部や組織、施策の変更をスムーズに推進することで、良いスタートダッシュを切ることができる。