ウェブサイトやサービスは、長期間運用される中で、機能やコンテンツの追加、細かな改修の積み重ねによって、使いにくさや画面間の連携の崩れが発生することがある。その結果、ユーザーが意図した行動を取れなくなったり、利便性が低下することが少なくない。こうした状況を改善するには、全体の課題点を特定し、改修箇所を適切かつ明確にして、改修を進める必要がある。課題の特定は、定量的な情報と定性的な情報を組み合わせたアプローチが有効。定量的情報とは、アクセス解析やヒートマップを活用してユーザーの行動パターンを可視化すること。定性的情報とは、ユーザーテストでユーザーがどのように操作するのか、どのような壁にぶつかるのかなどを観察すること。さらに主観的な判断と客観的な行動観察を統合することで、具体的かつ効果的な改善方針を導き出すことができる。最初に、自分自身でサイト全体を確認し、主観的な視点から課題を洗い出す。サイトやプロダクトの閲覧可能なすべてのページを確認し、「良い点」「悪い点」「疑問点」の3つの視点でチェックする。このプロセスは、後の行動調査を行う際の仮説形成にも役立つ。
例えば、ナビゲーションが直感的でない箇所や、特定の機能が使いにくいと感じる部分を記録する。気になる箇所はキャプチャを撮り、スライドなどにメモを加えながら整理する。悪い点について、即座に改善アイデアが浮かぶ場合は、スモールアイデアとして追加しておくとよい。次に、ユーザーの行動を観察し、客観的な視点から課題を洗い出す。大規模なユーザーテストを実施することも有効だが、ユーザーテストに予算や時間を避けない場合、身近な人に協力を依頼し、手軽に初期データを集めても良い。その場合は、できるだけ対象のサイトやプロダクトをあまり知らない人に操作を依頼し、具体的なタスクを与えて行動を観察する。例えば、「このページで商品詳細を見て購入手続きに進んでください」というようなゴールを設定し、その達成プロセスを記録する。操作中に迷いや感想を言語化してもらうことで、設計の改善ポイントを明確にできる。また、主観的な視点で洗い出した課題が他の人も感じるのか、つまずくのかという答え合わせにもなる。依頼する被験者は、日常的に関わりが少ない他部署のメンバーに協力してもらうなど、自分たちと距離がある人を選ぶと、先入観のないリアルな意見を得られやすい。こうした調査で得られた課題は、性質ごとに分類して整理する。基本的には、ナビゲーション関連、コンテンツ関連、素材関連、機能関連など、サイトやプロダクトの構成に応じて分類することが多い。この分類により、どの領域に課題が集中しているかを可視化でき、優先すべきポイントが明確になる。また、分類作業を通じて見逃していた問題点が新たに浮かび上がることもある。分類が終わった後は、課題全体を俯瞰して優先順位を決定する。重要な課題に対する基本方針を言語化し、関係者間で共有することで、プロジェクトの方向性を統一する。この方針に基づいて具体的な改善策を検討し、仮説を立てていく。策定した仮説は、ワイヤーフレームやプロトタイピングツールを用いて検証を行う。これにより、提案した改修が実際に有効であるかどうかを確認し、実運用に適した改善を進められる。