コンテンツ制作において、業界大手のJTCやブランディングを重視する企業などから厳しい審査基準が求められる場合がある。組織規模が大きければ大きいほど、または商材やサービスが医療などの健康に関するものであればあるほど、この傾向が強くなる。こういった環境でコンテンツを制作する場合、非常にたくさんのレギュレーションがあり、それをチェックするためのリソースがとられてしまいがちである。例えば、自社製品やサービスが他社よりも有利に見える表現は厳しくチェックされるポイントの一つ。自社製品の強みを強調したいのは自然な流れだが、こうした表現が「不当景品類及び不当表示防止法」に抵触する可能性がある。顧客に誤解を与えたり、他社の評価を損なうような表現があれば、法的リスクやブランディングの失敗につながるので、自社製品やサービスが有利であるかのようにみせる表現は特に配慮する必要がある。他にも「断定的な表現を避ける」「表現の統一性を保つ」などもよく見られる基準だが、これも読者に誤った情報やオウンドメディアを通して与える自社ブランドのイメージを損なわないための措置だ。コンテンツを制作する側からすると、コンテンツ作成段階でも、編集段階でも多くのリソースがとられるため、煩わしいと感じる人が多いと思うが、このように設けられている基準の背景や目的を理解することで、コンテンツ制作の際に何を重視すべきか、どういった表現や内容で制作すれば良いかが明確になる。審査基準の意図を理解して制作を進めることで、審査担当者とスムーズに協力しながら、制作から公開までの工程を効率化できる。
業界の大手企業などがこうした基準を設ける背景には、自社から発信する情報が多くの人に影響を与える可能性がある点を重視し、長期的な視点からブランド価値を守りたいという意図がある。また、多くのベンダーが関わることによる品質管理の必要性、自社のブランドイメージや信頼性の担保、さらに法令遵守のために設けられている。しかし、コンテンツ制作者が審査基準を十分に理解していないと、審査担当者との間で認識のズレが生じやすいため、結果としてかなり細かい部分までレギュレーションとして明示されている。その都度承認・否認の確認が発生、制作側にも修正対応の工数がかさむが、この基準の認識がきっちりとあっていれば、審査する側も入念にチェックする必要がなくなる。そのため、制作の初期段階で審査部門と十分にコミュニケーションを取り、審査基準やその背景にある考え方を確認することが重要。初めに1〜2本のコンテンツを試作し、審査担当からのフィードバックを「なぜダメなのか」「どういった表現または言葉ならOKなのか」をかなり細かくすり合わせできると理想的。単に原稿を提出してチェックを受けるだけでなく、打ち合わせなどを通してどのような視点から審査が行われるのかを共有することで、基準に対する理解を深められる。フィードバックの具体的なポイントを得られることで、その後の制作に活かすことができ、指摘や修正が減り、チェック工数と制作工数の両方を効率化することが期待できる。