業界最大手JTCの広報チェックが厳しすぎる問題 4ヶ月かかるコンテンツ公開プロセスを約2ヶ月に圧縮

著者: 株式会社KAAAN 森下 樹里

背景

大手企業が運営するオウンドメディアは、商材の周辺情報を発信するお役立ち情報のメディアとして運営されていた。しかし、企業全体で予算カットの流れとなり、今後もオウンドメディアを続けていくためには、良質なリードを獲得することが急務となった。 ただ情報を発信するのではなく、オウンドメディア経由でのリードを獲得できるように運営方針を変更することが決定された。しかし、コンテンツSEOを意識した記事制作をしたことがなかったため、社内に制作する体制やノウハウが存在しなかった。 さらに大きな課題として、自社商材の広告宣伝となりうる内容を含んだコンテンツは、審査部門によるチェックが非常に厳しく、公開できるまでには多くのリソースと時間が必要だった。これまでは商材の宣伝となりうる内容は極力避けてコンテンツ制作を行っていたが、リード獲得を目的とする以上、商材に関連する内容は避けられなくなった。 また、メディアの担当者変更が頻繁に発生し、引き継ぎがうまく行えていなかったり、担当期間が短いために過去のやり方を踏襲することで手一杯になっていた。加えて、複数の支援会社がそれぞれ独自の方法でコンテンツ制作を行うため、対応する担当者には大きな負荷がかかっていた。このような状況下で、コンテンツの品質向上と制作期間の短縮を同時に実現することが求められた。

STEP1

公開基準が厳しいこと、公開までに時間がかかることを前提に制作スケジュールを作成した。しかし、どの程度の期間がかかるのか、どのような基準で審査されるのかは実際に制作を始めてみないとわからない状況だった。 そこで、コンテンツをチェックする審査部門のフィードバックなどを受けて柔軟に対応することを担当者と合意形成し進行することにした。コンテンツ制作当初は通常よりも丁寧に担当者とコミュニケーションをとりながら、一つ一つの指摘事項について詳細に確認していった。 審査部門からのフィードバックを受けるたびに、その意図や背景を担当者に解説してもらった。「なぜこの表現が問題なのか」「どのような懸念があるのか」を深く理解することで、同じ指摘を受けないように言語化、ルール化も同時に行っていった。この地道な作業により、徐々に審査部門の判断基準が見えてきた。

STEP2

これまで属人化していた基準やルールを、原稿や打ち合わせを通してすべて言語化することに着手した。担当者の頭の中にあった暗黙知を、誰でも理解できる形式知に変換していく作業は簡単ではなかった。しかし、一つ一つの事例を積み重ねることで、徐々に体系的なレギュレーションが形作られていった。 作成したレギュレーション・エビデンス資料は制作チームで常に最新の情報を共有し、レギュレーションの遵守を徹底した。新たな指摘事項が発生するたびに、レギュレーションをアップデートし、チーム全体で学習していく体制を構築した。 さらに、各事業者ごとに異なっていた制作方法や資料・原稿の格納方法などのオペレーションを調査し、可能な限り共通化させることを提案した。各社の立場や状況を最大限配慮しつつ、メディア担当者の負荷軽減という共通の目的を説明し、少しずつ協力を得ることができた。

STEP3

約1年の間に、担当者が2回変更となった。これまでのやり方であれば、担当者の変更は制作スピードの鈍化を招く可能性があった。しかし、これまでに構築してきた詳細なレギュレーションと運用ルールのおかげで、新しい担当者も比較的スムーズに業務を理解することができた。 また、引き継ぎ内容を細かく整理し、資料に落とし込むことで、伝え漏れや認識違いを無くすことに重点をおいて進行した。「何を」「誰が」「いつまでに」「どのように」行うのかを明確に定義し、役割分担を可視化した。この仕組みにより、担当者が変わっても制作ペースやコンテンツの質を落とすことなく、施策を実行できた。 また、新しい担当者が着任するたびに、これまでの経緯や審査部門との関係性について丁寧に説明し、信頼関係の継承にも注力。

結果

プロジェクト開始当初、多くのリソースと制作時間がかかっていたが、プロジェクトを進めるにつれルールが確立し、それによって制作工程にかかるリソースと時間も大幅にカットできた。開始当初と比べると約半分の期間でコンテンツをリリースできるようになった。 これまで複数の支援会社がバラバラな手順や納品方法で運用代行を行っていたため、対応する担当者に大きな負担がかかっていた。しかし、新しく制作したレギュレーションや納品ルールに少しずつ関係各社も合わせてもらうことにより、メディア担当者の負荷も軽減される結果となった。 標準化されたプロセスにより、これまで培った経験をもとに、さらに制作期間を短縮する議論ができるようになった。また、別の施策を行うための余裕や実行体制準備も可能となり、メディア全体の活性化につながった。
タグ: コンテンツ制作, プロジェクトマネジメント

業界最大手JTCの広報チェックが厳しすぎる問題

4ヶ月かかるコンテンツ公開プロセスを約2ヶ月に圧縮

本ケーススタディスタディは、実際にあった事例をもとに組み立てられていますが、匿名性、NDA上の問題により、こちら側が提供した内容、かつ詳細データを掲載しないことを前提にし、意図がずれないように変更されております。また、数値データなどは、誇張がないよう低く掲載されていますので、実際のデータとは異なることがあります。

背景

大手企業が運営するオウンドメディアは、商材の周辺情報を発信するお役立ち情報のメディアとして運営されていた。しかし、企業全体で予算カットの流れとなり、今後もオウンドメディアを続けていくためには、良質なリードを獲得することが急務となった。ただ情報を発信するのではなく、オウンドメディア経由でのリードを獲得できるように運営方針を変更することが決定された。しかし、コンテンツSEOを意識した記事制作をしたことがなかったため、社内に制作する体制やノウハウが存在しなかった。さらに大きな課題として、自社商材の広告宣伝となりうる内容を含んだコンテンツは、審査部門によるチェックが非常に厳しく、公開できるまでには多くのリソースと時間が必要だった。これまでは商材の宣伝となりうる内容は極力避けてコンテンツ制作を行っていたが、リード獲得を目的とする以上、商材に関連する内容は避けられなくなった。また、メディアの担当者変更が頻繁に発生し、引き継ぎがうまく行えていなかったり、担当期間が短いために過去のやり方を踏襲することで手一杯になっていた。加えて、複数の支援会社がそれぞれ独自の方法でコンテンツ制作を行うため、対応する担当者には大きな負荷がかかっていた。このような状況下で、コンテンツの品質向上と制作期間の短縮を同時に実現することが求められた。

補足要件

  • コンテンツを制作するにあたって、公開できる基準や公開までにかかる期間が未知数
  • 明確なレギュレーションがほとんどない
  • 多くの支援会社が関わり、それぞれが独自の方法でコンテンツ制作を行うため対応する担当者に負荷がかかっている

具体的なプロセス

STEP 1

担当者と密に連携し認識のすり合わせと信頼関係構築を徹底

公開基準が厳しいこと、公開までに時間がかかることを前提に制作スケジュールを作成した。しかし、どの程度の期間がかかるのか、どのような基準で審査されるのかは実際に制作を始めてみないとわからない状況だった。そこで、コンテンツをチェックする審査部門のフィードバックなどを受けて柔軟に対応することを担当者と合意形成し進行することにした。コンテンツ制作当初は通常よりも丁寧に担当者とコミュニケーションをとりながら、一つ一つの指摘事項について詳細に確認していった。審査部門からのフィードバックを受けるたびに、その意図や背景を担当者に解説してもらった。「なぜこの表現が問題なのか」「どのような懸念があるのか」を深く理解することで、同じ指摘を受けないように言語化、ルール化も同時に行っていった。この地道な作業により、徐々に審査部門の判断基準が見えてきた。

詳細アドバイス
担当者と同じ目線で語ると、強固な協力関係ができ、成果を得やすくなる
相手の知識やスキルレベルに応じた適切な方法で情報を伝える
記事制作の審査基準が厳しいことに対しての考え方と対応の仕方
STEP 2

レギュレーションを明確化、オペレーションの共通化を推進

これまで属人化していた基準やルールを、原稿や打ち合わせを通してすべて言語化することに着手した。担当者の頭の中にあった暗黙知を、誰でも理解できる形式知に変換していく作業は簡単ではなかった。しかし、一つ一つの事例を積み重ねることで、徐々に体系的なレギュレーションが形作られていった。作成したレギュレーション・エビデンス資料は制作チームで常に最新の情報を共有し、レギュレーションの遵守を徹底した。新たな指摘事項が発生するたびに、レギュレーションをアップデートし、チーム全体で学習していく体制を構築した。さらに、各事業者ごとに異なっていた制作方法や資料・原稿の格納方法などのオペレーションを調査し、可能な限り共通化させることを提案した。各社の立場や状況を最大限配慮しつつ、メディア担当者の負荷軽減という共通の目的を説明し、少しずつ協力を得ることができた。

詳細アドバイス
コンテンツの質とスピードを担保するために、明確なルールを設ける
コンテンツSEOで成果を上げるためには短期で効率的に公開する
成果のために複数ベンダーのオペレーションを統一する重要性
STEP 3

引き継ぎ内容や役割分担を定義、長期運用体制を構築

約1年の間に、担当者が2回変更となった。これまでのやり方であれば、担当者の変更は制作スピードの鈍化を招く可能性があった。しかし、これまでに構築してきた詳細なレギュレーションと運用ルールのおかげで、新しい担当者も比較的スムーズに業務を理解することができた。また、引き継ぎ内容を細かく整理し、資料に落とし込むことで、伝え漏れや認識違いを無くすことに重点をおいて進行した。「何を」「誰が」「いつまでに」「どのように」行うのかを明確に定義し、役割分担を可視化した。この仕組みにより、担当者が変わっても制作ペースやコンテンツの質を落とすことなく、施策を実行できた。また、新しい担当者が着任するたびに、これまでの経緯や審査部門との関係性について丁寧に説明し、信頼関係の継承にも注力。

詳細アドバイス
パフォーマンスを維持するためには引き継ぎに主力担当者を必ず入れる
オウンドメディアを安定して運用するにはパートナーと良好な関係が必要

結果または成果

制作期間がおよそ半分、メディア担当者の負荷も軽減

プロジェクト開始当初、多くのリソースと制作時間がかかっていたが、プロジェクトを進めるにつれルールが確立し、それによって制作工程にかかるリソースと時間も大幅にカットできた。開始当初と比べると約半分の期間でコンテンツをリリースできるようになった。これまで複数の支援会社がバラバラな手順や納品方法で運用代行を行っていたため、対応する担当者に大きな負担がかかっていた。しかし、新しく制作したレギュレーションや納品ルールに少しずつ関係各社も合わせてもらうことにより、メディア担当者の負荷も軽減される結果となった。標準化されたプロセスにより、これまで培った経験をもとに、さらに制作期間を短縮する議論ができるようになった。また、別の施策を行うための余裕や実行体制準備も可能となり、メディア全体の活性化につながった。

シェア

企業

株式会社KAAAN

純広告・記事広告 , コンテンツマーケティング , マーケティング戦略

プロセスでなく、成果を、事業成長を提供

KAAANは、漠然とした企業、事業の業績やマーケティングの課題に対して、現状を把握し、診断し、今、やるべきことを明確化。ゴールに向けて伴走し、業績向上・成果最大化を請負うマーケティングエージェンシーです。

著者

森下 樹里

Content director

約4年間、フリーで主にtoC向けオウンドメディアのグロース支援に携わり、SNSやYoutubeチャンネル、クラウドファウンディングなどに携わる。2022年にMOLTSグループ子会社KRAFTに所属、エンタープライズ企業を中心としたtoBメディアの立ち上げやグロースを支援。その後、新規事業のGINESにて、営業やCS、UX改善、コンテンツの制作などを幅広く従事。現在はKAAANにてメディア事業に携わる。