酒やタバコ、お茶など、嗜好品業界では、後発ブランドでも独自性あるコンテンツ設計により市場で差別化が可能である。しかし、多くの企業が一般的な商品説明や基本的な使用方法の紹介に留まり、自社ならではの価値を十分に伝えきれていない。 嗜好品は正解のない領域であるため、情報の切り口や深度によって、他社とどのように差別化するかや提供価値が大きく変わる。単なる特徴紹介では埋もれやすく、ユーザー体験全体を視野に入れた設計が求められる。 たとえば、単純な商品紹介ではなく、「初心者向けの使い方記事」から「応用テクニック」「商品選びの基準」など、ユーザーの体験プロセス全体を見据えたコンテンツ設計により、競合他社では提供できない独自の価値を創出できる。 重要なのは、自社の事業領域の広さを活かしながら、ユーザーが本当に求める情報を体系的に整理し、それらを情報同士が互いに意味のある形で連動し、全体でひとつの価値を構成している状態を構築することが必要となる。

今回のようなケースの差別化を行う際に、ユーザーの行動プロセスを起点に構成する「体験マップ」の作成を作成した。商品利用の過程を分解し、準備・実施・応用までの全体像を網羅的に整理する。社内で実際に使用・検証を行い、各ステップでのこだわりや使用前に必要な道具、環境、強さ・量・タイミングの違い、目的の違いなど、あらゆる変数を洗い出す。 嗜好品のように「正解のない」領域では、体験の質がこれらの変数によって大きく左右される。したがって、変数を網羅的に把握しておくことで、ユーザーごとの最適解やこだわりポイントを提示でき、差別化されたコンテンツが構築しやすくなる。 この検証結果をもとに、情報を蜘蛛の巣状に整理し、俯瞰できる構造に落とし込み、複数の視点からのレビューを取り入れ、「主観」ではなく「ユーザーの必要性」に基づいて取捨選択を行う。また、自社が持つ専門的知見や社内リソースも積極的に活用する。たとえば、製法に詳しい担当者がいれば、その知見を活かした「産地別・製法別のこだわり」など、他社では語れないテーマで展開する。 さらに、活用シーン別、季節別、応用例別といった多面的な切り口を掛け合わせることで、ブランドとしての独自価値を一貫して伝えられる基盤となる。