市場やユーザーのニーズが変わる中で、サービスやプロダクトの方向性を見直す必要に迫られることは珍しくない。たとえば、「今のままではうまくいかない気がするけれど、どこをどう変えればいいのか分からない」「アイデアはあるけれど、自信が持てない」といった悩みはよくある。こうしたときにコンセプトがあいまいなままだと、何を届けるべきかが定まらず、結果としてコンテンツやプロダクトの軸もぶれてしまう。その結果、ユーザーにとっての魅力が薄れ、利用者数や売上の減少につながるリスクがある。多くの組織では、方針転換のプロセスをリードできる人やフレームワークが不足していることも多く、結果として対応が後手に回ってしまう。だか、そもそも、「環境変化に応じてサービスを根本から見直す」という経験が少ない。ただ、経験がないからといって、この課題を放置していると、ユーザーのニーズとサービスのズレが広がっていき、競合に置き換わる可能性が高まる。
気づいたときには手遅れ、とならないように、サービスの軸を見直すときは、「今どんな価値を提供しているのか」「その価値はこれからも必要とされるのか」を順を追って考えることが大切だ。まず、自社サービスがユーザーにとってどんな本質的な価値を提供しているのかを言語化する。これはチームの主観だけではなく、実際のユーザーの声や過去の利用データなど、客観的な情報をもとに整理するのがポイント。表面的な機能や特徴ではなく、「なぜそのサービスを使うのか」という深い理由を探る。このプロセスでは、ユーザーが何を求めているのか、その裏側にある本質的なニーズを特定することが不可欠。次に、外部環境の変化によってその価値がどう変化しているかを確認する。たとえば、ユーザーが代わりに使っている別のサービスは何か、そちらの方が便利または良いと感じている理由は何かを調べる。こうした分析から、今後満たすべき新しいニーズが見えてくる。ここで得られた気づきをもとに、コンセプトを再設計する。ただし、一度で正解にたどりつこうとするのではなく、仮説を立てて小さく検証するサイクルをまわすことが重要。検証には「いつまでに」「どんな結果なら続けるか」という判断ポイントをあらかじめ決めておくと進めやすい。このように、ユーザーの本質的なニーズを深く理解し、それに応じてサービスの意味を再定義することが、環境変化に負けないコンセプト設計の土台になる。最初から完璧を求めるのではなく、試行錯誤を前提にした柔軟な姿勢が鍵となる。