サービスのアイデアはあるものの、どのように立ち上げればよいのかが明確でないケースが多い。他にも、どの施策が効果的なのかが見えず、CTRやCVRを改善してもこれ以上の伸びが期待できない。広告、SEO、SNSといった各種施策を実施しても、アプローチ自体は成立しているものの、成果につながらないという課題が発生することがある。このような状況の背景には、顧客起点ではなく、アイデア起点、競合他社の模倣、市場で一般的とされる手法の導入といった考え方が優先され、ターゲットの視点が欠如しているケースが多いことが挙げられる。結果として、ターゲットのニーズに合致しない施策が展開され、期待する成果を得られないまま施策が続く。このような問題の大半は、顧客解像度の不足に起因していることが多く、その部分を深掘りすることで適切な施策の方向性が見えてくる。顧客解像度を高めるためには、購買行動プロセスを可視化し、ターゲットが求めているもの(ニーズ)や抱えている悩み(ペイン)を明確にする必要がある。このプロセスを実施することで、マーケティングの全体像が把握しやすくなる。
顧客の購買行動プロセスは、カスタマージャーニーマップを活用することで可視化できる。BtoBマーケティングの視点では、顧客が課題を認識し、情報収集を行い、ソリューションを検討し、問い合わせや契約といったプロセスを経る。この各フェーズでの心理状況を明確にし、それに基づく施策を設計することで、より効果的なアプローチが可能となる。例えば、広告のCPA高騰に直面している企業が、リード獲得の手段としてオウンドメディアの導入を検討する場合を考える。この際、単に「オウンドメディアを導入しませんか」と訴求しても、対象となる企業がソリューションの検討段階に至っていない場合、適切に響かない可能性がある。このような状況では、まず顧客が抱える課題を整理し、適切な情報提供を行うことが重要となる。具体的には、CPA高騰に対応するための施策を紹介するホワイトペーパーの提供や、関連する情報を掲載したLPを設計することで、顧客の関心を喚起し、適切なタイミングでのアプローチを可能にする。このように、起点となる課題の設定を正しく行い、購買行動プロセスに適した訴求内容へと変更しない限り、成果は期待できない。他にもターゲットのニーズやペインを可視化することで、より適切なメッセージングが可能となる。例えば、ある特定領域のSaaS製品では、当初「直感的なUI」「手厚いサポート」「コスト削減」といった訴求を行っていたとする。しかし、ターゲットにヒアリングを実施すると、導入プロセスの煩雑さに課題を感じており、社内の既存システムとの連携やトレーニング負担の軽減が重要視されていることが明らかになった。この情報を基に「既存ツールとワンクリックで連携」「導入後すぐに運用可能」といった具体的な訴求へと変更した結果、問い合わせ数が大幅に増加する、という具合だ。サービスの立ち上げにおいても、まずターゲットのニーズやペインを可視化することが重要であり、その後、購買行動プロセスを明確にすることで、具体的な施策の方向性が見えてくる。顧客解像度の向上を起点とし、適切な情報設計を行うことで、施策の精度を高め、成果につなげることが可能となる。