急速な外部環境の変化によって、従来の価値が一気に通用しなくなる場面がある。たとえば、新型コロナウイルスの流行のような、生活様式が大きく変わったことで、長年提供してきたサービスや情報への需要が突如なくなるようなケースだ。こうしたとき、多くの企業やチームは、従来のやり方を微調整して何とか適応しようとする。しかし、変化のスピードや深さが一定の閾値を超えると、従来の延長線上では新たな価値提供につながらない。根本的な行動様式やニーズが変化しているにもかかわらず、それを見極める前に表面的な改善にとどまってしまうと、本質的な変化を捉えることができない。結果として、競合に先を越されたり、新しい市場の兆しを見逃したりして、取り返しのつかない差が生まれる。特に、既存の概念に縛られたままだと、変化に対応するというよりも「前の状態に戻そうとする」思考になりがちだ。そうしたときこそ、視点を180度切り替え、自分たちの実体験を起点にしたアプローチが求められる。
コロナ禍のような、急激な外部環境の変化に対応した新しい価値提供を見つけるには、チームメンバー自身の行動変容を丁寧に分析することから始めるとよい。まず、メンバーがそれぞれの生活の中で「どう行動が変わったか」を洗い出す。たとえば、「通勤がなくなった」「買い物がオンライン中心になった」「人とのつながり方が変わった」など、身近な変化で構わない。そのうえで、表面的な行動ではなく「なぜそうなったのか」「そのとき自分は何を求めていたか」といった感情や背景を丁寧に言語化していく。こうした行動と感情のセットを複数集めると、そこに共通する変化のパターンが見えてくる。次に、抽出した行動変容を「生活の変化」と「求める価値や体験の変化」の2つの軸で整理し、それらを掛け合わせて新しい価値提供のポイントを見極める。たとえば、移動範囲が制限される状況では、従来の「遠くへ行く体験」から「身近な場所での新しい発見」や「自宅での新しい楽しみ方」といった価値に転換する可能性がある。このような分析から得られたアイデアは、最初から完璧な判断基準を設けるのではなく、「やりながら決める」アプローチで検証していく。可能性のあるものは、仮説を立て、積極的に試作し、検索結果への反映や市場の反応を短期間で確認して、効果的なものに絞り込んでいく。重要なのは、既存の概念や枠組みにとらわれたり、「完璧な企画をつくること」よりも、「変化に素直に向き合うこと」。既存の正解にとらわれず、自分たちの変化をヒントにすることで、新しい価値が見えてくる。