定量分析とは?定性分析との違いや活用方法をわかりやすく解説

定量分析とは?定性分析との違いや活用方法をわかりやすく解説

デジタルマーケティングの進化により、企業が取得できるデータの量と種類は飛躍的に増加しました。アクセス解析、顧客行動データ、広告効果測定など、あらゆるマーケティング活動が数値化できる環境が整いつつあります。

一方で、以下のような声も増えています。

  • 「定量分析」と「定性分析」の違いがよくわからない
  • データは集めているが、どのように分析すれば成果につながるのかわからない
  • 分析手法が多すぎて、自社に合った方法を選べない

そこで本記事では、定量分析の基本的な意味から定性分析との違い、具体的な手法、そして成功させるためのポイントまでを体系的に解説します。マーケティング施策の精度を高め、データに基づいた意思決定を実現するための参考にしていただければ幸いです。

定量分析とは

定量分析を正しく活用するためには、まずその基本的な意味とビジネスにおける役割を理解することが重要です。ここでは、定量分析の定義と、なぜ多くの企業がデータに基づく分析を重視するようになったのかを解説します。

定量分析の基本的な意味

定量分析とは、数値データを用いて事実や傾向を測定し、評価する分析手法のことです。「定量」という言葉が示す通り、分析対象を数値として「量」で捉え、客観的な判断材料とすることが特徴です。

例えば、Webサイトのアクセス数、広告のクリック率、アンケートの回答結果など、数値化できるあらゆるデータが定量分析の対象となります。これらの数値を集計・比較・分析することで、現状の把握や課題の特定、施策の効果測定が可能になります。

定量分析の大きな特徴は「客観性」にあります。数値という明確な基準を用いることで、分析者によって解釈が異なるといった問題を回避できます。「売上が前月比で増加した」という表現よりも、「売上が前月比で15%増加した」と具体的な数値で示すほうが、関係者間で共通の認識を持ちやすくなります。

また、定量分析は「再現性」も備えています。同じデータに対して同じ分析手法を適用すれば、誰が分析しても同じ結果が得られます。これにより、分析結果の検証や、時系列での比較が容易になります。

ビジネスにおける定量分析の役割

ビジネスにおいて定量分析が重要視される理由は、感覚や経験だけに頼らない、データに基づいた意思決定を可能にするためです。

従来のマーケティングでは、担当者の勘や過去の成功体験に基づいて施策を決定することも少なくありませんでした。しかし、市場環境の変化が速く、顧客ニーズが多様化する現代において、主観的な判断だけでは最適な施策を選択することが難しくなっています。

定量分析をビジネスに活用することで、以下のような価値を得られます。

課題の明確化

数値データを分析することで、どこにボトルネックがあるのかを客観的に特定できます。例えば、ECサイトにおいて「カート追加後の離脱率が高い」という数値が明らかになれば、決済フローの改善という具体的なアクションにつなげられます。

施策効果の測定

実施した施策がどの程度の成果を上げたのかを数値で評価できます。「広告を出稿した結果、コンバージョン数が増加したのか減少したのか」を正確に把握することで、次の施策の方向性を判断できます。

チーム内の認識統一

数値という共通言語を持つことで、マーケティング部門と営業部門、あるいは経営層との間で認識のズレを防げます。「成果が出ている」という曖昧な表現ではなく、「目標KPIの達成率は85%」と具体的に示すことで、建設的な議論が可能になります。

予測と計画の精度向上

過去のデータを分析することで、将来の傾向を予測し、より精度の高い事業計画を立てられます。季節変動や市場トレンドを数値で把握することで、適切なタイミングでの施策実行が可能になります。

弊社の支援においても、まずデータ分析の基盤を整え、客観的な数値に基づいて戦略を策定することを重視しています。データドリブンなアプローチを取ることで、施策の成功確率を高め、継続的な改善サイクルを回すことができるためです。

定量分析と定性分析の違い

定量分析を効果的に活用するためには、対となる概念である定性分析との違いを理解し、両者を適切に使い分けることが重要です。ここでは、定性分析の特徴と両者の比較、そして組み合わせによる効果的な分析方法について解説します。

定性分析とは

定性分析とは、数値では表現できない情報を対象とした分析手法です。顧客の感想、インタビューの回答、口コミ、行動の背景にある心理など、質的なデータを扱います。

例えば、「なぜこの商品を選んだのか」「サービスを利用してどのように感じたか」といった顧客の声は、数値化が難しい情報です。これらを収集・分析し、顧客のニーズや課題を深く理解することが定性分析の役割です。

定性分析の代表的な手法としては、以下のようなものがあります。

  • ユーザーインタビュー
  • ユーザビリティテスト
  • フォーカスグループインタビュー
  • 自由記述式アンケートの分析
  • SNSや口コミサイトのテキスト分析

定性分析の強みは、数値だけでは見えない「なぜ」を明らかにできる点にあります。定量分析で「離脱率が高い」という事実がわかっても、その理由までは数値からは読み取れません。ユーザーインタビューやユーザビリティテストを通じて、「フォームの入力項目が多すぎて面倒に感じた」といった具体的な理由を把握することで、効果的な改善策を立案できます。

両者の比較と使い分け

定量分析と定性分析は、それぞれ異なる特徴を持っています。両者の違いを整理すると、以下のようになります。

項目 定量分析 定性分析
対象データ 数値データ 非数値データ(言葉、行動、感情など)
分析結果 数値、統計量 解釈、洞察、仮説
客観性 高い 分析者の解釈が入る
サンプル数 多数が望ましい 少数でも有効
得られる情報 「何が」「どのくらい」 「なぜ」「どのように」
主な用途 仮説の検証、効果測定 仮説の発見、深掘り

定量分析は「全体像の把握」に適しています。大量のデータを集計・分析することで、傾向やパターンを発見できます。一方、定性分析は「深層理解」に適しています。少数の対象者から深い情報を得ることで、数値の背景にある心理や動機を理解できます。

使い分けの判断基準としては、分析の目的を明確にすることが重要です。

  • 「現状を把握したい」「施策の効果を測定したい」という場合は、定量分析が適しています
  • 「顧客の本音を知りたい」「課題の原因を探りたい」という場合は、定性分析が適しています

また、分析のフェーズによっても使い分けが変わります。新しい施策を企画する段階では、定性分析で顧客ニーズを探索し、施策実行後は定量分析で効果を測定する、といった活用が効果的です。

組み合わせによる効果的な分析

定量分析と定性分析は、どちらか一方だけで完結させるよりも、両者を組み合わせることでより精度の高い分析が可能になります。それぞれの強みを活かし、弱みを補完し合う関係にあるためです。

定量分析だけでは「何が起きているか」はわかっても「なぜ起きているか」まではわかりません。一方、定性分析だけでは「仮説」は得られても、それが全体に当てはまるかどうかの「検証」ができません。

効果的な組み合わせ方としては、以下のようなアプローチがあります。

定性分析で仮説を立て、定量分析で検証する

ユーザーインタビューで「価格が高いと感じている」という声が多く聞かれた場合、それが全体の傾向なのかをアンケート調査で定量的に検証します。少数の深い情報から仮説を立て、大量のデータで裏付けを取るアプローチです。

定量分析で課題を発見し、定性分析で原因を探る

アクセス解析で「特定のページでの離脱率が高い」ことがわかった場合、ユーザビリティテストを実施してその原因を探ります。数値で課題を特定し、質的な調査で深掘りするアプローチです。

定性分析と定量分析を並行して実施する

アンケート調査において、選択式の設問(定量)と自由記述の設問(定性)を組み合わせることで、同時に両方のデータを収集できます。

弊社の支援においても、定量データと定性データの両面からアプローチすることを重視しています。数値だけを追うのではなく、その背景にある顧客心理まで理解することで、より本質的な課題解決につなげることができます。

事例に学ぶ:定量・定性を組み合わせた分析の実践

ある人材サービス企業では、広告単価の上昇や検索経由の流入競争が激化する中で、初回コンタクトの獲得数が伸び悩んでいました。対象ユーザー層が広く設定されていたため、どの層が成果に直結しやすいかの可視化が不十分となり、ターゲティング精度の最適化が進まない状況が続いていたのです。

この企業では、定量データと定性データを組み合わせたアプローチで課題解決に取り組みました。

まず、現場のキャリアアドバイザーに対する複数回のヒアリング(定性分析)を実施し、ペルソナおよびカスタマージャーニーを作成。その結果、一般的な訴求軸に共感する層よりも、特定の状況において「主体的に動きづらいため、効率的にサポートを受けたい」といったニーズを持つユーザーが一定数存在することが明らかになりました。

あわせて、自社のユーザー行動に関する定量データが、他社が一般に提示している数値傾向とは異なることが確認され、その要因や背景についても、ヒアリングを通じて明確化されました。

これを基に、ターゲットのニーズに沿った訴求内容に変更するため情報整理を実施。すでに蓄積されている数値や事業部の重要視するポイント、過去の実績を再評価した上で、訴求すべき軸や提供すべき情報を再構築しました。特に、データを整理してターゲット層が求める内容と現場の実態が矛盾しないよう調整を徹底しました。

結果として、指名検索からのCVRが倍以上に向上し、スカウトメールのCVRも半数以上の媒体で倍増。マーケティング観点からの訴求見直しを通じて収益をさらに向上させる余地があることを示すエビデンスとなりました。

この事例からわかるのは、定量分析で把握した「数値の傾向」と、定性分析で明らかになった「顧客心理」を照らし合わせることで、本質的な課題と打ち手が見えてくるということです。どちらか一方だけでは得られない示唆が、両者の組み合わせによって生まれます。

定量分析のメリット・デメリット

定量分析を自社に導入する際には、そのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが重要です。ここでは、定量分析の長所と短所を整理し、効果的に活用するための判断材料を提供します。

定量分析のメリット

定量分析には、ビジネス上の意思決定を支援する多くのメリットがあります。

客観的な評価が可能

数値データに基づく分析は、分析者の主観や先入観に左右されにくいという特徴があります。「売上が好調だ」という曖昧な評価ではなく、「売上が前年同月比で20%増加した」という客観的な事実として把握できます。これにより、感覚的な判断ミスを防ぎ、事実に基づいた意思決定が可能になります。

解釈の相違を防げる

数値という明確な基準を用いることで、関係者間での認識のズレを最小限に抑えられます。マーケティング部門が「成果が出ている」と評価しても、営業部門や経営層が同じ認識を持っているとは限りません。共通の数値指標を設定することで、組織全体で同じ方向を向いた議論が可能になります。

説得力のある報告・提案ができる

経営層への報告や、他部署への提案において、数値的な根拠は大きな説得力を持ちます。「この施策を実施すべきだ」という主張よりも、「過去のデータから試算すると、この施策により売上が10%向上する見込みがある」という数値を伴った提案のほうが、承認を得やすくなります。

継続的な改善が可能

数値を定点観測することで、施策の効果を時系列で追跡できます。改善施策を実行する前後での数値変化を比較することで、その施策が本当に効果があったのかを検証できます。このPDCAサイクルを繰り返すことで、継続的な成果向上が実現します。

比較・ベンチマークが容易

数値化されたデータは、他の期間や他のセグメント、あるいは業界平均などと比較しやすいという特徴があります。「自社のコンバージョン率は業界平均と比べてどうか」「前四半期と比べて改善しているか」といった相対的な評価が可能になります。

定量分析のデメリット

一方で、定量分析には限界やデメリットも存在します。これらを理解した上で活用することが重要です。

数値化できない情報は分析できない

顧客の感情、ブランドへの愛着、サービス利用時の満足感など、数値として表現しにくい情報は定量分析の対象外となります。これらの情報を無視すると、数値上は問題がなくても顧客離れが進むといった事態を見落とす可能性があります。

「なぜ」がわからない

定量分析で「コンバージョン率が低下している」という事実は把握できても、その原因までは数値からは読み取れません。原因を特定するためには、定性分析など別のアプローチが必要になります。数値だけを追っていると、表面的な対処に終始してしまうリスクがあります。

データ収集にコストがかかる

精度の高い定量分析を行うためには、十分な量と質のデータを収集する必要があります。アンケート調査の実施、分析ツールの導入、データ基盤の構築など、相応のコストと工数が発生します。特に中小企業においては、このハードルが高いと感じられることもあります。

データ量が不十分だと誤った結論を導く

サンプル数が少なすぎると、データの偏りが大きくなり、分析結果の信頼性が低下します。例えば、「先週のアンケートでは満足度が高かった」という結果も、回答者が数十人程度であれば、たまたま満足度の高い顧客が回答した可能性を排除できません。統計的に有意な結論を得るためには、一定以上のデータ量が必要です。

数値に振り回されるリスク

数値ばかりに注目すると、本質を見失うことがあります。「クリック率を上げる」ことに固執するあまり、誤解を招くような広告表現を使ってしまったり、「PVを増やす」ことを目的化して、本来のターゲット以外のユーザーを集めてしまったりするケースがあります。数値は目的達成のための手段であり、数値そのものが目的ではないという認識が重要です。

これらのデメリットを踏まえると、定量分析だけで全ての意思決定を行うのではなく、定性分析と組み合わせたり、数値の背景を常に考慮したりすることが、効果的な活用につながると言えます。

定量分析の代表的な手法

定量分析には様々な手法があり、目的や状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。ここでは、マーケティング領域で特に活用されることの多い代表的な手法を紹介します。

アクセス解析

アクセス解析とは、Webサイトに訪れたユーザーの行動データを収集・分析する手法です。「どこから来たのか(流入経路)」「何を見たのか(閲覧ページ)」「どこで離脱したのか(離脱ポイント)」「成果につながったのか(コンバージョン)」といった情報を把握することで、サイトの課題を特定し、改善施策を立案できます。

Google Analytics 4(GA4)は、アクセス解析において最も広く利用されているツールの一つです。GA4では、ページビューだけでなく、スクロール、クリック、動画視聴などあらゆる行動を「イベント」として計測できます。これにより、ユーザーの行動をより詳細に把握することが可能になりました。

アクセス解析で確認すべき主要な指標としては、以下のようなものがあります。

  • セッション数:サイトへの訪問回数
  • ページビュー数:ページが閲覧された回数
  • 直帰率:1ページだけ見て離脱した割合
  • 平均セッション時間:1回の訪問での滞在時間
  • コンバージョン率:目標達成した訪問の割合

これらの指標を流入経路別、ページ別、ユーザー属性別などで分析することで、どこに課題があるのかを特定できます。例えば、「広告経由のユーザーは直帰率が高い」ということがわかれば、広告とランディングページの整合性を見直す必要があるかもしれません。

アクセス解析は「PDCA」で回すことが基本です。Plan(仮説立案)→Do(施策実行)→Check(効果検証)→Action(改善)のサイクルを繰り返すことで、継続的なサイト改善と成果向上を実現します。

ABテスト

ABテストとは、2つ以上のバリエーションを用意し、どちらがより高い成果を上げるかを比較検証する手法です。例えば、ボタンの色を「青」と「赤」の2パターン用意し、どちらがよりクリックされるかを測定します。

ABテストの大きな特徴は、実際のユーザー行動に基づいて判断できる点です。「こちらのデザインのほうが良い」という主観的な議論ではなく、「Aパターンのほうがコンバージョン率が1.5倍高い」という客観的な事実に基づいて意思決定できます。

ABテストで検証される対象としては、以下のようなものがあります。

  • ボタンの色、サイズ、配置
  • 見出しやキャッチコピーの文言
  • ページのレイアウト
  • フォームの入力項目数
  • 価格表示の方法

ABテストを実施する際の注意点として、十分なサンプル数を確保することが挙げられます。少ないサンプル数で判断すると、たまたまの偏りを誤って「差がある」と判断してしまうリスクがあります。統計的に有意な差が出るまでテストを継続することが重要です。

また、一度に複数の要素を変更すると、どの要素が結果に影響したのかがわからなくなります。基本的には一度に一つの要素だけを変更し、その効果を検証するアプローチが推奨されます。

クロス集計分析

クロス集計分析とは、2つ以上の項目を組み合わせて集計し、項目間の関係性や傾向を把握する手法です。アンケート調査の結果分析などでよく用いられます。

例えば、顧客満足度調査において「満足度」と「年代」をクロス集計すると、以下のような表が作成できます。

年代 満足 やや満足 どちらでもない やや不満 不満
20代 30% 40% 20% 8% 2%
30代 25% 35% 25% 10% 5%
40代 20% 30% 30% 15% 5%
50代以上 15% 25% 35% 18% 7%

この結果から、「若い年代ほど満足度が高い傾向がある」という示唆が得られます。このような傾向を把握することで、年代別に異なるアプローチを検討するなど、より精度の高いマーケティング施策を立案できます。

クロス集計分析の活用シーンとしては、以下のようなものがあります。

  • 属性別の購買傾向の把握
  • チャネル別のコンバージョン率の比較
  • 商品カテゴリ別の顧客満足度の分析
  • 時間帯別のアクセス傾向の把握

クロス集計は比較的シンプルな手法ですが、データの傾向を視覚的に把握しやすく、次のアクションにつなげやすいという特徴があります。

クラスター分析

クラスター分析とは、データを類似性に基づいてグループ(クラスター)に分類する手法です。顧客セグメンテーションや、商品のグルーピングなどに活用されます。

例えば、顧客データに対してクラスター分析を行うと、「高頻度・高単価で購入する優良顧客層」「低頻度だが高単価で購入する層」「高頻度・低単価で購入する層」といったグループに分類できます。このようなセグメントを特定することで、各グループに対して最適なアプローチを設計できます。

クラスター分析の活用例としては、以下のようなものがあります。

顧客セグメンテーション

購買履歴、行動データ、属性情報などを基に顧客をグループ化し、それぞれの特性に合ったマーケティング施策を展開します。

商品のグルーピング

商品の特性(価格帯、機能、ターゲット層など)を基に商品をグループ化し、品揃えの最適化や、クロスセルの提案に活用します。

市場調査における消費者分類

アンケート調査の回答パターンを基に消費者をグループ化し、市場の構造を把握します。

クラスター分析を行う際には、どの変数を用いてグループ化するか、いくつのグループに分けるかという判断が必要です。分析の目的を明確にした上で、適切な変数とグループ数を設定することが重要です。

定量分析を成功させるポイント

定量分析の手法を理解しても、実際に成果につなげるためにはいくつかの重要なポイントがあります。ここでは、定量分析を成功させるために押さえておくべき実践的なポイントを解説します。

分析目的と仮説を明確にする

定量分析で陥りがちな失敗の一つが、「データを集めてから何を分析するか考える」というアプローチです。目的が曖昧なままデータを集めても、膨大なデータに溺れてしまい、有効なインサイトを得ることができません。

効果的な定量分析を行うためには、分析を始める前に「何を明らかにしたいのか」という目的を明確にすることが重要です。目的が明確になれば、必要なデータの種類や収集方法、分析手法が自ずと決まってきます。

さらに、目的を明確にした上で「仮説」を立てることが、分析の精度を高めます。仮説とは、「おそらくこうなっているのではないか」という予測のことです。

例えば、「コンバージョン率が低い原因を探りたい」という目的に対して、「フォームの入力項目が多すぎるのではないか」「ページの読み込み速度が遅いのではないか」といった仮説を立てます。この仮説を検証するためのデータを収集・分析することで、効率的に課題を特定できます。

仮説を持たずに分析を始めると、「データを眺めていたら何かわかるのではないか」という期待に反して、何も見えてこないということになりがちです。仮説思考を取り入れることで、分析の効率と精度が大きく向上します。

弊社の支援においても、分析に入る前に「何を明らかにしたいのか」「どのような仮説を持っているのか」を明確にするプロセスを重視しています。この前準備が、その後の分析の質を大きく左右するためです。

事例に学ぶ:仮説検証サイクルで成果を出す方法

ある企業では、広告運用においてCV件数が頭打ちとなる問題に直面していました。成約につながりやすい良質なリードが獲得できていたため、伸び代があるのであればさらに投資を行いたいと考えていましたが、運用ノウハウやナレッジが蓄積されておらず、成功事例もほとんど共有されていない状況でした。

この企業では、「仮説立案→少額検証→勝ちパターン拡大」というサイクルを徹底することで、大きな成果を上げました。

まず、リサーチした内容をもとに、立てた仮説が正しいのかや、検証後の判断基準を明確にするためにシミュレーションを作成しました。広告を配信するターゲットと配信手法の選定、仮説が本当に有効なのかを判断するために必要な出稿金額に対してどれくらいのCV数が獲得できればいいかなど、詳細なシミュレーションを作成したのです。

仮説段階のため、失敗のリスクを最小化しながら、仮説の有効性を確認できる最低限の目標値と金額で広告を出稿。複数の異なるアプローチを同時にテストすることで、効率的に検証を進めました。

次のステップでは、検証で得られた成果をもとに成果が出やすいパターンの仮説を立て、別パターンの出稿内容を複数作成し、得られた成果に再現性があるのか、さらに仮説検証を実施しました。成功した配信の予算を徐々に増やしながら、同時に新たな仮説検証も継続することで、リスクを分散しながら成果を拡大していったのです。

PDCAサイクルの高速化も重要な要素でした。検証を行なって成果が得られた広告の金額を増やし、徐々に投資金額とCV数を増加させる。このように、仮説立案・検証・成果獲得・拡大というPDCAを回し、好循環を確立しました。週次、さらには日次でのモニタリング体制を構築し、細かな変化を見逃さないようにしました。

結果として、この取り組みにより3ヶ月でCV数を大幅に増加させることに成功。媒体特性を深く理解し、ユーザーニーズに合わせた配信ができたことにより、獲得効率が良いだけではなく、その後の成約率が高いリードの獲得につながりました。

この事例が示すのは、「仮説を持って分析に臨み、検証結果から学び、次の仮説につなげる」というサイクルの重要性です。目的なくデータを眺めるのではなく、明確な仮説に基づいて少額からテストし、成功パターンを見つけたら拡大していく。この考え方は、広告運用に限らず、あらゆる定量分析に応用できます。

十分なデータ量を確保する

定量分析の精度は、データの量に大きく依存します。サンプル数が少なすぎると、データの偏りが目立ってしまい、分析結果の信頼性が低下します。

例えば、アンケート調査で「満足度90%」という結果が出たとしても、回答者が10人だった場合、その結果を全体の傾向として捉えることには無理があります。たまたま満足度の高い顧客が回答した可能性を排除できないためです。

統計的に有意な結論を得るためには、一般的に数百以上のサンプル数が必要とされています。アクセス解析においても、月単位での分析を行うことで、日々の変動を平均化した傾向を把握できます。

データ量が不十分な状態で判断を急ぐと、誤った結論を導き、間違った施策を実行してしまうリスクがあります。「まだデータが足りない」と判断した場合は、追加でデータを収集するか、分析の粒度を調整するなどの対応が必要です。

ただし、データ量を確保することにこだわりすぎて、いつまでも分析が始められないという事態も避けるべきです。完璧なデータを待つよりも、ある程度のデータで仮説検証を行い、その結果を踏まえて精度を高めていくというアプローチが現実的です。

また、データの「量」だけでなく「質」も重要です。収集したデータに欠損や誤りが多いと、いくら量があっても正確な分析はできません。データ収集の段階で、品質を担保する仕組みを整えることも成功の鍵となります。

KPIツリーでゴールと指標を紐づける

定量分析を事業成果につなげるためには、分析対象となる指標が最終的なビジネス目標とどのように関連しているかを明確にする必要があります。そのために有効なのが「KPIツリー」の設計です。

KPIツリーとは、最終目標となるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)を頂点に、それを達成するための中間指標であるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を樹形図で可視化したフレームワークです。

例えば、KGIを「月間売上1,000万円」とした場合、以下のようにKPIを分解できます。

月間売上1,000万円
├── 新規顧客売上 600万円
│   ├── 新規リード数 × 商談化率 × 成約率 × 平均単価
│   └── 広告経由 / SEO経由 / 紹介経由 ...
└── 既存顧客売上 400万円
    ├── 継続率 × 平均単価
    └── アップセル率 × クロスセル率 ...

このようにKPIツリーを設計することで、以下のような価値が得られます。

ボトルネックの特定

どの指標がKGI達成の障害になっているかを特定できます。「リード数は十分だが、商談化率が低い」ということがわかれば、リード獲得施策ではなく、リードナーチャリングの改善に注力すべきと判断できます。

施策の優先順位付け

限られたリソースをどこに投下すべきかを判断できます。KPIツリーを見れば、「この指標を10%改善すると、KGIにどれだけ寄与するか」を試算でき、効果の高い施策を優先できます。

組織間の連携強化

マーケティング部門、営業部門、経営層がそれぞれ異なる指標を見ていると、施策の方向性がバラバラになりがちです。共通のKPIツリーを持つことで、組織全体が同じ目標に向かって動く体制を構築できます。

KPIツリーを設計する際のポイントは、「四則演算で分解できること」です。「売上 = 顧客数 × 客単価」のように、上位の指標が下位の指標の掛け算や足し算で表現できる構造にすることで、各指標の改善がKGIにどう寄与するかを定量的に把握できます。

弊社の支援においても、戦略立案の初期段階でKPIツリーの設計を行います。最終目標から逆算して指標を設計することで、「この施策は何のために行うのか」「どの指標を改善しようとしているのか」が明確になり、施策の精度と一貫性が向上します。

また、KPIツリーは一度作って終わりではなく、事業環境の変化や施策の進捗に応じて定期的に見直すことが重要です。市場環境や自社の状況が変われば、追うべき指標も変わってきます。

まとめ

本記事では、定量分析の基本から実践的な活用方法まで解説しました。

定量分析とは、数値データを用いて客観的に事実や傾向を把握する手法です。定性分析との違いを理解し、両者を適切に組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。

定量分析を成功させるためには、以下のポイントが重要です。

  • 分析の目的と仮説を事前に明確にする
  • 十分なデータ量を確保して信頼性を担保する
  • KPIツリーで最終目標と指標を紐づける
  • 定量分析と定性分析を組み合わせて活用する
  • 仮説検証のサイクルを高速で回し、成功パターンを見つけて拡大する

データに基づく意思決定は、マーケティング施策の精度を高め、継続的な改善サイクルを回すための基盤となります。本記事の内容を参考に、自社のマーケティング活動に定量分析を取り入れていただければ幸いです。

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著者

永田 さおり

永田 さおり

Growth Architect

業界歴10年以上。2017年株式会社MOLTSに参画。BtoB・BtoC問わず多様な業種業態でマーケティングの立ち上げから実行までを一貫支援。組織開発やコミュニケーション設計を中心にコンサルティングを行う。

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