定性分析とは?マーケティングに活かす方法と具体的な手法を解説

定性分析とは?マーケティングに活かす方法と具体的な手法を解説

マーケティング活動において、データに基づく意思決定の重要性は高まり続けています。アクセス解析や売上データなどの定量的な数値を追いかけることで、施策の効果を可視化し、改善につなげる取り組みは多くの企業で定着してきました。

一方で、以下のような声も増えています。

  • 数値データだけでは「なぜ顧客がその行動を取ったのか」が分からない
  • アンケートの選択式回答では、顧客の本音や潜在的なニーズが見えてこない
  • 定性分析をやりたいが、具体的にどう進めればよいか分からない

そこで本記事では、マーケティング活動に欠かせない「定性分析」について、基本的な定義から具体的な手法、活用のポイントまで詳しく解説します。定量分析との違いや、調査の進め方、失敗を防ぐためのコツについても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

定性分析とは何か

定性分析は、マーケティングリサーチにおいて定量分析と並ぶ重要な分析手法です。数値では表せないデータを扱い、顧客の行動や心理の「なぜ」に迫ることで、定量データだけでは見えてこないインサイトを得ることができます。

定性分析の定義と目的

定性分析とは、質的データ(数値では表せないデータ)を基に行う分析のことです。具体的には、言葉、表情、行動、感情といった要素が分析対象となります。自由回答式のアンケートやインタビュー、口コミやSNSから集めた消費者の声など、数値化できないデータを分析することが定性分析にあたります。

定性分析の主な目的は、以下の3点に集約されます。

目的 内容
「なぜ」の解明 顧客がその行動を取った理由、購買に至った背景を明らかにする
「どのように」の理解 購買プロセスや意思決定のプロセスを詳細に把握する
潜在ニーズの発見 顧客自身も気づいていない潜在的なニーズや課題を発見する

定量分析が「何が起きているか(What)」を明らかにするのに対し、定性分析は「なぜ起きているか(Why)」「どのように起きているか(How)」を明らかにする役割を担います。この違いを理解することが、効果的なマーケティングリサーチの第一歩となります。

定量分析との違い

定性分析と定量分析は、分析の対象となるデータの種類、得られる結果の特性、適した活用場面がそれぞれ異なります。両者の違いを正しく理解することで、目的に応じた適切な分析手法を選択できるようになります。

データの種類による違い

定量分析は、アンケートの選択式回答、アクセス数、売上金額、コンバージョン率など、数値として測定可能なデータを扱います。一方、定性分析は、インタビューでの発言内容、自由記述のアンケート回答、行動観察で得られた情報など、数値化が難しいデータを扱います。

結果の特性による違い

定量分析の結果は、統計的な処理が可能であり、客観性や再現性が高いという特徴があります。「コンバージョン率が前月比で上昇した」「満足度の平均スコアが低下した」といった明確な数値として結果を示すことができます。

定性分析の結果は、より文脈依存的であり、解釈に主観が入る余地があります。しかし、その分、顧客の心理や行動の背景にある理由、言葉にならない感情やニーズといった、数値では捉えきれない深い洞察を得ることができます。

適した活用場面による違い

分析手法 適した場面
定量分析 施策の効果測定、傾向の把握、仮説の検証、大規模な市場調査
定性分析 仮説の探索・構築、顧客インサイトの発見、新商品開発のヒント収集、課題の深掘り

重要なのは、どちらか一方が優れているということではなく、両者が補完関係にあるということです。定量分析で把握した傾向の「なぜ」を定性分析で深掘りしたり、定性分析で発見した仮説を定量分析で検証したりすることで、より精度の高いマーケティング活動が可能になります。

定性分析が求められる背景

近年、定性分析の重要性が改めて注目されている背景には、いくつかの要因があります。

顧客行動の複雑化

デジタル化の進展により、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスは、以前よりも複雑になっています。Webサイト、SNS、実店舗、口コミなど、複数のタッチポイントを経由して意思決定が行われるため、単純な数値データだけでは顧客の行動を十分に理解することが難しくなっています。

差別化の必要性

市場の成熟化により、機能や価格だけでは競合との差別化が難しくなっています。顧客が商品やサービスを選ぶ際の深層心理や、言語化されていない期待を把握することが、差別化戦略を立案する上で重要になっています。

データドリブンマーケティングの進化

データ活用が進む中で、「データの見える化」だけでは不十分であることが認識されるようになっています。数値の変動を確認するだけでなく、その変動が起きた理由や背景を理解し、次のアクションにつなげることが求められています。

定性分析は、こうした課題に対応するための有効な手段として、マーケティング活動における位置づけが高まっています。特にBtoB領域では、購買意思決定に複数のステークホルダーが関与し、検討期間が長いという特性から、顧客の意思決定プロセスを深く理解するための定性分析の価値は大きいと言えます。

定性分析の主な手法

定性分析には複数の手法があり、調査の目的や対象によって適切な手法を選択することが重要です。ここでは、マーケティング領域でよく活用される代表的な4つの手法について解説します。

インタビュー調査(デプスインタビュー・グループインタビュー)

インタビュー調査は、定性分析において最も広く活用されている手法です。調査対象者と直接対話を行うことで、言葉・行動・表情・感情といった数値化できない情報を収集・分析します。

デプスインタビュー

デプスインタビューは、調査対象者と1対1で面談を行う手法です。1人あたり60分から90分程度の時間をかけて、話を深掘りしながら回答を引き出していきます。

デプスインタビューの特徴は、以下の点にあります。

  • 他者の意見に影響されず、対象者の本音を引き出しやすい
  • 購入に至るプロセスや気持ちの変化を時系列で追うことができる
  • デリケートなテーマや個人的な話題についても聞きやすい
  • 1人ひとりの意見を深く掘り下げることができる

デプスインタビューは、顧客の意思決定プロセスを詳細に理解したい場合や、購買行動の背景にある心理を探りたい場合に特に有効です。

グループインタビュー(FGI)

グループインタビュー(フォーカスグループインタビュー)は、4〜8人程度の調査対象者を集め、モデレーター(司会者)の進行のもとで意見交換を行う手法です。

グループインタビューの特徴は、以下の点にあります。

  • 参加者同士の意見交換から、新たな気づきやアイデアが生まれやすい
  • 短時間で複数人の意見を収集できる
  • 参加者の反応や表情から、言葉にならない感情を読み取ることができる
  • グループダイナミクスにより、1人では思いつかない発言が引き出される

グループインタビューは、新商品のコンセプトに対する反応を確認したい場合や、特定のテーマについて多様な意見を収集したい場合に適しています。

行動観察(オブザベーション)

行動観察は、対象者の自然な行動や習慣を直接観察する手法です。店舗での購買行動や製品の使用シーンなど、実際の場面での行動を観察することで、インタビューやアンケートでは把握できない発見を得ることができます。

行動観察の主なアプローチには、以下のようなものがあります。

アプローチ 内容
参与観察 調査者が対象者と同じ環境に身を置き、行動を観察する
非参与観察 調査者が第三者として、対象者の行動を観察する
エスノグラフィー 対象者の生活環境に入り込み、長期間にわたって行動や文化を観察する

行動観察の価値は、対象者が無意識に行う行動や癖、商品の使い方などを知ることができる点にあります。インタビューでは、対象者自身が認識している行動しか語られませんが、行動観察では本人も気づいていない行動パターンを発見できます。

例えば、店舗での購買行動を観察することで、「どの売り場で立ち止まるか」「商品をどのように手に取るか」「比較検討にどれくらいの時間をかけるか」といった情報を得ることができます。これらの情報は、売り場のレイアウト改善やパッケージデザインの見直しなどに活用できます。

自由回答式アンケート

自由回答式アンケートは、選択式のアンケートとは異なり、回答者に自由に記述してもらう形式のアンケート調査です。定性分析の手法の中では、比較的低コストで多くの回答を収集できるという特徴があります。

自由回答式アンケートで得られる情報には、以下のようなものがあります。

  • 満足・不満の理由や背景
  • 改善してほしい点の具体的な内容
  • 商品やサービスに対する期待や要望
  • 競合商品との比較における自社の強み・弱み

自由回答式アンケートを活用する際のポイントは、質問の設計にあります。「なぜ満足なのか」「なぜ不満なのか」という理由を引き出す質問を設計することで、具体的な課題点を見つけ出すことができます。

ただし、自由回答の分析には一定の工数がかかります。回答数が多い場合は、テキストマイニングなどの手法を活用して効率的に分析を行うことも検討するとよいでしょう。

オンラインコミュニティ調査(MROC)

MROC(Marketing Research Online Community)は、インターネット上のコミュニティを通じて、対象者から発言を収集する手法です。一定期間、調査対象者をコミュニティに所属させ、双方向で質問のやり取りを行いながら消費者インサイトを見つけ出します。

MROCの特徴は、以下の点にあります。

  • 場所や時間の制約なく、対象者とコミュニケーションを取ることができる
  • 一定期間にわたって継続的にデータを収集できる
  • 対象者同士の交流から、新たなインサイトが生まれることがある
  • 写真や動画を活用した調査も可能

MROCは、新商品の開発プロセスにおいて、アイデアの創出から評価まで継続的に消費者の声を取り入れたい場合に適しています。また、地理的に分散した対象者から効率的にデータを収集したい場合にも有効です。

定性分析の進め方

定性分析を効果的に行うためには、適切なプロセスに沿って調査を進めることが重要です。調査企画の設計から結果の活用まで、各ステップでのポイントを解説します。

調査企画の設計(目的・課題の明確化)

定性分析の成否を左右するのは、調査を実施する前の「企画」段階です。この段階で目的や課題が明確になっていないと、調査を実施しても有益な結果を得ることが難しくなります。

調査企画で明確にすべき項目は、以下の通りです。

項目 内容
調査目的 なぜこの調査を行うのか、最終的に何を達成したいのか
調査課題 具体的に何を明らかにしたいのか、どのような仮説を検証したいのか
調査手法 どの手法が目的・課題に最も適しているか
対象者条件 どのような属性・条件の人に話を聞くべきか
活用方法 調査結果をどのように施策や意思決定に活用するか

特に重要なのは、「調査目的」と「活用方法」を事前に明確にしておくことです。「何となく顧客の声を聞いてみたい」という曖昧な目的では、調査結果を具体的なアクションにつなげることが難しくなります。

また、調査企画の段階で、調査結果をどのような形でアウトプットするのか(レポート形式、プレゼンテーション形式など)、誰に対して報告するのかも決めておくことで、調査の方向性がブレにくくなります。

データ分析全般に言えることですが、成果を出すためには「前工程」の設計が重要です。目的が曖昧なまま調査を進めてしまうと、後から軌道修正することが困難になります。調査企画の段階で十分な時間をかけて、関係者と認識を合わせておくことが成功の鍵となります。

対象者の選定とリクルーティング

調査企画が固まったら、次は調査対象者を選定し、リクルーティングを行います。定性分析の結果の質は、対象者の選定に大きく左右されます。

対象者選定のポイントは、以下の通りです。

調査目的に適した対象者を選ぶ

調査課題に対する答えを得るために、適切な対象者を選ぶ必要があります。「どんな人にどんな話を聞きたいか」から逆算して、対象者の条件を設定します。

例えば、既存顧客の離脱理由を探りたい場合は、実際に離脱した顧客を対象者とする必要があります。新商品のコンセプトを検証したい場合は、ターゲットとする顧客層に近い属性の人を選ぶことが重要です。

スクリーニング条件を明確にする

対象者を絞り込むための条件(スクリーニング条件)を明確にします。年齢、性別、職業といった基本属性に加えて、商品・サービスの利用状況、購買経験、検討状況などの条件を設定します。

対象者の多様性を確保する

定性分析では、限られた人数から深い情報を収集します。そのため、対象者の属性や意見が偏らないよう、一定の多様性を確保することが重要です。ただし、あまりに対象者の属性がバラバラだと、分析が困難になることもあるため、バランスが求められます。

リクルーティングの方法としては、調査会社のパネルを活用する方法、自社の顧客リストから募集する方法、SNSや紹介を通じて募集する方法などがあります。調査の目的や予算に応じて、適切な方法を選択します。

インタビュー・調査の実施

対象者が決まったら、いよいよ調査を実施します。インタビュー調査の場合、事前にインタビューフロー(質問の流れや内容をまとめたもの)を作成しておくことが重要です。

インタビューフロー作成のポイント

インタビューフローには、以下の要素を盛り込みます。

  • アイスブレイク(導入部分で緊張をほぐす)
  • 基本情報の確認(属性や利用状況など)
  • メインの質問(調査課題に関連する質問)
  • 深掘り質問(回答内容をさらに掘り下げる質問)
  • クロージング(追加で話したいことがないか確認)

質問の順序は、答えやすい一般的な質問から始めて、徐々に核心に迫る質問へと移行していくのが基本です。

インタビュー実施時の注意点

インタビュー実施時には、以下の点に注意します。

注意点 内容
誘導を避ける 回答を誘導するような質問をしない
傾聴する 対象者の話を遮らず、最後まで聞く
深掘りする 表面的な回答で終わらせず、「なぜそう思うのか」を掘り下げる
記録を残す 録音や録画の許可を得て、正確な記録を残す

インタビューの成功は、モデレーターのスキルに左右される面があります。対象者がリラックスして本音を話せる雰囲気を作り、適切なタイミングで深掘りの質問を投げかけることが求められます。

結果の分析とまとめ方

調査が完了したら、収集した情報を分析し、レポートとしてまとめます。定性分析の結果は数値化できないため、どのように整理・分析し、関係者に伝えるかが重要なポイントとなります。

分析の進め方

定性情報の整理・分析には、KJ法と呼ばれる手法が有効です。KJ法では、収集した情報を一つずつ付箋などに書き出し、類似したものをグルーピングして整理・分析を行います。

分析を進める際には、以下の点を意識します。

  • 調査目的や仮説に対する結果はどうだったのか
  • どのような傾向やパターンが見られたのか
  • 予想外の発見や新たな仮説はあったか
  • 具体的にどのような示唆・知見が得られたのか

レポート作成のポイント

レポートを作成する際には、調査に携わっていない人でも理解できるようにまとめることが重要です。文章だけでなく、表や図を活用することで、顧客のニーズや課題を分かりやすく伝えることができます。

レポートには、以下の要素を盛り込むことが一般的です。

  • 調査概要(目的、対象者、手法、実施時期)
  • 主な発見・結論
  • 詳細な分析結果(具体的な発言やエピソードを含む)
  • 示唆と推奨アクション

定性分析のレポートでは、対象者の具体的な発言(バーベイタム)を引用することで、説得力を高めることができます。ただし、発言の一部だけを切り取って解釈を歪めないよう、文脈を踏まえた引用を心がけます。

定性分析をマーケティングに活かすポイント

定性分析は、調査を実施して終わりではありません。得られた知見をマーケティング施策や組織の意思決定に活かしてこそ、価値を発揮します。ここでは、定性分析の結果を効果的に活用するためのポイントを解説します。

定量分析との組み合わせ方

定性分析と定量分析を効果的に組み合わせることで、より精度の高いマーケティング活動が可能になります。両者を組み合わせるパターンには、主に2つのアプローチがあります。

定性分析→定量分析(仮説構築→検証)

まず定性分析を行って仮説を立て、その仮説を定量分析で検証するパターンです。

例えば、デプスインタビューを通じて「顧客は価格よりもサポート体制を重視している」という仮説が見えてきた場合、大規模なアンケート調査を行ってその仮説が全体に当てはまるかどうかを検証します。

このアプローチは、新規事業の企画や新商品の開発など、仮説が十分に固まっていない段階で特に有効です。

定量分析→定性分析(傾向把握→深掘り)

定量分析で傾向や課題を把握した上で、その「なぜ」を定性分析で深掘りするパターンです。

例えば、アクセス解析で特定のページの離脱率が高いことが分かった場合、ユーザーインタビューやユーザビリティテストを行って、離脱の理由を探ります。

このアプローチは、既存の施策の改善や、数値の変動要因を特定したい場合に有効です。

どちらのアプローチを取る場合でも、定量分析と定性分析を単独で行うよりも、両者を組み合わせることで、より確度の高いインサイトを得ることができます。

事例に学ぶ定性分析の活用

定性分析は、理論として理解するだけでなく、実際のビジネス現場でどのように活用されているかを知ることで、より実践的な示唆を得ることができます。ここでは、定性分析を活用して成果を上げた事例をご紹介します。

ヒアリングでターゲットの解像度を上げ、訴求内容を改善した事例

ある人材サービス企業では、広告単価の上昇や検索経由の流入競争が激化する中で、獲得数が伸び悩む課題を抱えていました。対象ユーザー層が広く設定されていたため、どの層が成果に直結しやすいかの可視化が不十分な状況でした。

そこで、現場のキャリアアドバイザーに対する複数回のヒアリングを実施し、定性的な情報を丁寧に収集しました。その結果、一般的な訴求軸に共感する層よりも、特定の状況において「主体的に動きづらいため、効率的にサポートを受けたい」といったニーズを持つユーザーが一定数存在することが明らかになりました。

加えて、自社のユーザー行動に関する定量データが、他社が一般に提示している数値傾向とは異なることが確認され、その要因や背景についてもヒアリングを通じて明確化されました。

この定性分析で得られた知見を基に、ターゲットのニーズに沿った訴求内容に変更したところ、指名検索からのCVRが倍以上に向上し、スカウトメールのCVRも半数以上の媒体で倍増という成果を得ることができました。

この事例から分かるのは、定量データだけを見ていても把握できない「顧客の本当のニーズ」を、定性分析によって発掘できるということです。現場担当者へのヒアリングという比較的シンプルな手法であっても、適切に設計・実施することで、大きな成果につながる可能性があります。

既存顧客への定性分析で戦略を見直した事例

あるインフラサービス事業会社では、オウンドメディアを主軸にリード創出を行っていましたが、検索アルゴリズムの変動により検索順位が低下し、売上が低迷する状況に直面しました。

当初は検索順位の回復を目指してリライトの行動量を増やしましたが、検索順位が回復する記事もあれば現状維持の記事もあり、売上の回復にはつながりませんでした。そこで、「なぜ既存顧客は自社のサービスを購入したのか」「どのような顧客が自社の顧客になり得るのか」という本質的な問いに立ち戻り、既存顧客への定性的な分析を実施しました。

その結果、これまで個別に販売していたサービスには共通の需要があり、同時に必要になるケースが多いことが判明しました。この分析結果を基に、複数サービスをセットで提供する新たな販売方法を企画・実施したところ、過去最高のマーケティングリード数を創出し、数千万円以上の増収を達成しました。

この事例が示唆しているのは、数値の改善だけに囚われるのではなく、定性分析を通じて顧客理解を深めることで、より本質的な課題解決につながるということです。「なぜ買ってくれたのか」という問いに丁寧に向き合うことで、新たな販売戦略のヒントを得ることができます。

フレームワークを活用した分析

定性分析を効果的に行うためには、分析の際に基準となるフレームワークを活用することが有効です。フレームワークを用いることで、意見がバラけにくくなり、より体系的な分析が可能になります。

定性分析と組み合わせて活用できる主なフレームワークには、以下のようなものがあります。

フレームワーク 活用場面
PEST分析 外部環境の変化が顧客に与える影響を分析する
3C分析 市場・顧客、競合、自社の視点から情報を整理する
SWOT分析 定性情報を強み・弱み・機会・脅威に分類する
カスタマージャーニーマップ 顧客の購買プロセスに沿って情報を整理する

特にカスタマージャーニーマップは、定性分析の結果を可視化し、組織内で共有するために有効なツールです。顧客が認知から購入、利用に至るまでの各段階で、どのような行動を取り、何を感じ、どのような課題を抱えているのかを一枚の図にまとめることで、組織全体で顧客像を共有することができます。

フレームワークを活用する際は、フレームワークありきで情報を当てはめるのではなく、調査で得られた生の情報を大切にしながら、フレームワークを整理のための道具として活用することが重要です。

組織への共有と活用

定性分析の結果は、マーケティング部門だけでなく、営業、商品開発、カスタマーサポートなど、組織全体で共有・活用することで、より大きな価値を生み出すことができます。

組織共有のポイント

定性分析の結果を組織で共有する際には、以下の点を意識します。

  • 顧客の具体的な発言(バーベイタム)を引用し、生の声を伝える
  • 数値データだけでは見えない背景やストーリーを伝える
  • 部門ごとに関心のある切り口で情報を整理する
  • 定期的に共有の機会を設け、継続的に顧客理解を深める

特にBtoB領域では、マーケティング部門が獲得したリードが営業部門を通じて受注につながったかどうかを確認するために、両部門の連携が不可欠です。定性分析の結果を共有することで、「どのような顧客が商談化・受注しやすいのか」「顧客はどのような課題を抱えているのか」といった情報を営業部門と共有でき、リードの質の向上や商談の成功率向上につなげることができます。

活用シーンの例

定性分析の結果は、以下のようなシーンで活用できます。

  • ペルソナの作成・更新
  • コンテンツマーケティングのテーマ設定
  • 広告クリエイティブの改善
  • 営業資料やトークスクリプトの改善
  • 商品・サービスの改善提案
  • 新商品・新機能の企画

定性分析で得られたインサイトを単発の施策に活用するだけでなく、組織の意思決定の基盤として継続的に活用していくことで、顧客中心のマーケティング活動を実現することができます。

定性分析の注意点と失敗を防ぐコツ

定性分析は有効な手法ですが、その特性を理解した上で適切に実施しないと、誤った結論を導いてしまう可能性があります。ここでは、定性分析を行う際の注意点と、失敗を防ぐためのコツを解説します。

サンプルサイズと代表性の限界

定性分析の最も重要な注意点は、サンプルサイズの限界を理解しておくことです。定性分析では、数人から数十人程度の対象者から情報を収集するのが一般的です。そのため、得られた結果が顧客全体の傾向を代表しているとは限りません。

この限界を認識した上で、定性分析の結果を活用する際には、以下の点に注意します。

  • 定性分析の結果を「顧客の声」ではなく「一部の顧客の声」として扱う
  • 定性分析で得られた仮説は、定量分析で検証することを検討する
  • 「全ての顧客が〇〇と言っている」ではなく「〇〇という声があった」という表現を使う
  • 少数のサンプルの結果に基づいて、大きな投資判断を行うことを避ける

定性分析の価値は、「統計的に有意な結論を導く」ことではなく、「深い洞察や新たな視点を得る」ことにあります。この特性を理解した上で、適切な活用方法を選択することが重要です。

バイアスを排除する工夫

定性分析では、調査者や分析者のバイアスが結果に影響を与えやすいという特性があります。バイアスを完全に排除することは難しいですが、影響を最小限に抑えるための工夫は可能です。

調査設計段階でのバイアス対策

調査設計の段階では、以下の点に注意します。

対策 内容
対象者の偏りを避ける 特定の属性や意見を持つ人ばかりに偏らないよう、対象者を選定する
質問の誘導を避ける 特定の回答を誘導するような質問文を避ける
仮説に固執しない 調査前に立てた仮説に合致する情報ばかりを集めようとしない

調査実施段階でのバイアス対策

インタビュー実施時には、以下の点に注意します。

  • 調査者の期待や意見を対象者に伝えない
  • 対象者の回答に対して、肯定・否定の反応を示さない
  • オープンクエスチョンを中心に質問し、対象者が自由に回答できるようにする
  • 対象者が言いづらそうな場合でも、答えを先回りして言わない

分析段階でのバイアス対策

分析時には、以下の点に注意します。

  • 自分の仮説に合致する情報だけでなく、反証となる情報にも目を向ける
  • 複数人で分析を行い、解釈のブレを確認する
  • 発言の一部だけを切り取らず、文脈を含めて解釈する

属人的スキルへの依存を防ぐ方法

定性分析、特にインタビュー調査は、モデレーターのスキルによって結果が大きく左右される面があります。スキルの高いモデレーターであれば、対象者がリラックスして本音を話せる雰囲気を作り、適切なタイミングで深掘りの質問を投げかけることができます。

しかし、属人的なスキルに依存しすぎると、モデレーターによって結果が異なったり、特定の人しか調査を実施できなかったりするという問題が生じます。

属人的スキルへの依存を軽減するための方法には、以下のようなものがあります。

インタビューフローの標準化

インタビューの流れや質問内容をドキュメント化し、誰が実施しても一定の品質を担保できるようにします。質問の意図や、どのような回答が得られた場合にどう深掘りするかといった点も記載しておくと、モデレーターによるブレを軽減できます。

モデレーターの育成

定性分析を継続的に実施する場合は、社内でモデレーターを育成することも検討します。経験豊富なモデレーターの調査に同席したり、自身の調査の録画を振り返ったりすることで、スキルを向上させることができます。

複数人での調査実施

可能であれば、複数のモデレーターで調査を分担し、後から結果を照らし合わせることで、個人のスキルや視点の偏りを補完することができます。

調査会社の活用

社内にスキルやリソースがない場合は、定性調査を専門とする調査会社に依頼することも選択肢の一つです。調査設計からモデレーション、分析・レポート作成までを一貫して依頼することで、質の高い調査を実施することができます。

まとめ

本記事では、定性分析について、基本的な定義から具体的な手法、マーケティングへの活用方法、注意点まで解説しました。

定性分析は、数値では表せない質的データを分析することで、顧客の行動や心理の「なぜ」に迫る手法です。定量分析が「何が起きているか」を明らかにするのに対し、定性分析は「なぜ起きているか」「どのように起きているか」を明らかにする役割を担います。

主な手法としては、デプスインタビューやグループインタビュー、行動観察、自由回答式アンケート、オンラインコミュニティ調査などがあります。どの手法を選択するかは、調査の目的や対象によって異なります。

定性分析を成功させるためには、調査企画の段階で目的や課題を明確にし、適切な対象者を選定し、結果を組織で共有・活用するところまでを一貫して設計することが重要です。また、サンプルサイズの限界やバイアスの影響を認識した上で、定量分析と組み合わせて活用することで、より精度の高いマーケティング活動を実現することができます。

定性分析は、顧客理解を深め、差別化戦略を立案し、組織全体で顧客中心の活動を推進するための有効な手段です。本記事で解説した内容を参考に、自社のマーケティング活動に定性分析を取り入れていただければ幸いです。

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著者

永田 さおり

永田 さおり

Growth Architect

業界歴10年以上。2017年株式会社MOLTSに参画。BtoB・BtoC問わず多様な業種業態でマーケティングの立ち上げから実行までを一貫支援。組織開発やコミュニケーション設計を中心にコンサルティングを行う。

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