
オウンドメディアのメリットとは?導入前に知っておきたい8つの効果と注意点
デジタルマーケティングの進化により、企業の集客手法は大きく変わりました。特に、広告費の高騰やCookie規制の強化を背景に、自社でコントロールできる集客チャネルとしてオウンドメディアへの注目が高まっています。
一方で、以下のような声も増えています。
- オウンドメディアのメリットは理解しているが、自社に適しているか判断できない
- 投資対効果が見えにくく、社内での予算確保が難しい
- 運用を始めたものの、思うような成果が出ていない
そこで本記事では、オウンドメディアの導入を検討している方に向けて、具体的な8つのメリットと運用時の注意点、成果を出すためのポイントについて解説します。メリットだけでなくデメリットも含めて理解することで、自社での導入判断に役立てていただければ幸いです。
目次
オウンドメディアとは何か
オウンドメディアの導入を検討する前に、まずはその定義と役割を正しく理解しておくことが重要です。「オウンドメディア」という言葉の捉え方によって、運用の方向性や期待する成果が大きく異なってきます。
オウンドメディアの定義と役割
オウンドメディアとは、「企業の事業・採用課題を解決するための手段としてのメディア」です。自社で運用するWebマガジンやブログを単に指すのではなく、企業の収益を増やし、人を集め、事業に貢献するという観点で捉える必要があります。
オウンドメディアの運用目的は、企業によってさまざまです。代表的な目的として、以下のようなものが挙げられます。
| 運用目的 | 具体的な成果 |
|---|---|
| リード獲得 | サービスへの問い合わせ数・資料請求数の増加 |
| 認知拡大 | 会社名・サービス名の認知度向上 |
| ブランディング | 企業の専門性・独自価値の浸透 |
| 採用力強化 | 採用エントリー数の増加、ミスマッチの防止 |
重要なのは、オウンドメディアを単なる情報発信の場として捉えないことです。「どのように企業の収益を増やし、人を集め、事業に貢献するのか」という視点でメディアを設計・運用することで、はじめて事業課題の解決につながります。
例えば、自社で法人向けの会計サービスを提供している場合を考えてみます。「会計ソフト 比較」「会計ソフト おすすめ」といった、会計ソフトの導入を検討しているユーザーが検索するキーワードでコンテンツを制作し、上位表示を達成することで、狙っているターゲットを効率良く集客できます。
このように、オウンドメディアは事業目的と紐づけて設計することで、マーケティングや営業領域における課題解決に大きく貢献できる施策となります。
弊社が支援したある企業では、創業当初からテレアポを中心としたアウトバウンド営業でリード獲得を行っていました。しかし、広告費の上昇と人的リソースの逼迫により、継続的なリード獲得が困難になっていました。そこでオウンドメディアを事業課題の解決手段として位置づけ、検索をタッチポイントとした戦略を軸に運用を開始したところ、立ち上げから1年半でサービス全般への問い合わせ件数が毎月130件前後まで増加し、数千人規模の企業のカルチャーをアウトバウンドからインバウンドへと変革することに成功しました。
商業メディアやペイドメディアとの違い
オウンドメディアの特性をより深く理解するために、商業メディアやペイドメディア(広告)との違いを整理します。
商業メディアは、メディア自体での収益化を目的として運営されます。多くのトラフィックを集めることで、アフィリエイトやSSPなどの広告を利用し、直接的にマネタイズを行います。基本的にはトラフィックの伸びと比例して収益性が高まるため、「いかにトラフィックを集めるか」がメディア戦略の軸となります。
**ペイドメディア(広告)**は、広告費をかけて露出を獲得する手法です。即効性があり、早ければ即日で広告を配信して効果を試すことができます。一方で、広告配信を停止すれば集客も止まるという特性があります。
オウンドメディアは、これらとは異なり、事業・採用課題の解決を目的としています。いくらトラフィックが集まっても、事業課題の解決につながっていなければ意味がありません。
| メディア種別 | 主な目的 | 特性 |
|---|---|---|
| 商業メディア | メディア収益化 | トラフィック重視、広告収入が主な収益源 |
| ペイドメディア | 即時の露出獲得 | 即効性あり、停止で効果消失 |
| オウンドメディア | 事業課題解決 | 中長期的、資産型、コントロール性が高い |
オウンドメディアと商業メディアでは、同じWebメディアでも運営の目的が全く異なり、役割や成果のポイントが変わってきます。この違いを理解した上で、自社に適した運用方針を検討することが大切です。
また、オウンドメディアとコンテンツマーケティングの関係についても触れておきます。オウンドメディアを店舗経営に例えると、オウンドメディアは「店舗」そのもので、コンテンツは「販売員」に相当します。オウンドメディアの中にコンテンツが蓄積されるため、両者は親子関係のようなものと考えることができます。
オウンドメディアを運用する8つのメリット
オウンドメディアを運用することで得られる具体的なメリットを8つ紹介します。それぞれのメリットがどのように事業に貢献するのかを理解することで、自社での導入判断に役立てていただけます。
中長期的な集客基盤を構築できる
オウンドメディアの最大の特徴は、「ストック型」の集客チャネルを構築できる点です。一度作成したコンテンツは、インターネット上に残り続け、検索エンジンで評価されれば継続的に集客効果を発揮します。
Web広告は配信期間が終わると表示が停止しますが、オウンドメディアで制作したコンテンツは、公開後も長期にわたってユーザーを集め続けます。検索エンジンからの自然流入は、広告のように配信停止のリスクがなく、安定した集客基盤となります。
特に検索をタッチポイントとしたコンテンツSEOでは、狙ったキーワードで上位表示を達成することで、そのキーワードで検索するユーザーを継続的に獲得できます。例えば、「会計ソフト 比較」というキーワードで検索1位を獲得した場合、そのキーワードで検索するユーザーの多くが自社サイトを訪問することになります。
この「ストック型」の特性により、オウンドメディアは時間をかけて資産を積み上げていく施策として機能します。運用初期は成果が出にくいものの、コンテンツが蓄積されるにつれて集客効果は複利的に高まっていきます。
弊社が支援したある大手化学メーカーの健康情報メディアでは、当初は月間8万UUという低迷した数字に留まっていました。しかし、戦略を見直し、限られた予算の中で信頼できるライターに高品質なコンテンツ制作を依頼することから始め、2年間で8万UUから300万UUへと40倍の成長を実現しました。この事例が示すように、オウンドメディアは正しい戦略のもとでコンテンツを積み上げていくことで、指数関数的な成長が可能になります。
広告費を削減しながら安定集客が可能
オウンドメディアを運用することで、広告費を抑えながら安定した集客を実現できます。
近年、Web広告のCPA(顧客獲得単価)は高騰傾向にあります。広告手法が一般化した結果、競合が増え、入札価格が上昇しているためです。特にBtoB領域では、リード1件あたりの獲得コストが数万円に達することも珍しくありません。
オウンドメディアは、質の高いコンテンツを作り込み継続して運用することで、広告に頼らない集客チャネルを構築できます。初期の構築費用や運用費用は必要ですが、一度軌道に乗れば、広告のように継続的な出稿費用をかけることなく集客を維持できます。
長期的な視点で見ると、オウンドメディアの投資対効果(ROI)は高まる傾向にあります。広告は配信を続ける限りコストが発生しますが、オウンドメディアはコンテンツが蓄積されるほど、1記事あたりの獲得コストが下がっていくためです。
ある専門分野向けマッチングサービスを運営する企業では、新規事業立ち上げ当初は広告出稿やアウトバウンド営業でリード獲得を行っていましたが、コスト上昇と人的リソース逼迫により継続的なリード獲得が困難になっていました。そこでオウンドメディアを強化し、検索ボリュームではなくツール・サービスの検討段階で検索されるキーワードに絞った戦略を実行。その結果、立ち上げ半年で月数十件、1年後には月100件を超えるお問い合わせを獲得し、最終的には広告費・営業コストをゼロにすることに成功しました。
ただし、この効果を得るためには、戦略的なキーワード設計と質の高いコンテンツ制作が前提となります。やみくもにコンテンツを量産しても、検索上位を獲得できなければ集客効果は生まれません。
質の高い見込み客を獲得できる
オウンドメディアでは、質の高い見込み客を効率的に獲得できます。
検索エンジンを通じてオウンドメディアに訪れるユーザーは、自ら能動的に情報を求めています。「会計ソフト 比較」と検索するユーザーは、会計ソフトの導入を検討している可能性が高く、購買意欲や課題意識が明確です。
このような「自発的に訪問するユーザー」は、広告で獲得したユーザーと比較して、以下のような特徴があります。
- 課題が明確で、解決策を積極的に探している
- 情報収集の段階から比較検討の段階まで、購買プロセスが進んでいる
- 自社サービスへの関心度が高い
その結果、オウンドメディア経由で獲得したリードは、成約率が高い傾向にあります。営業担当者が商談に臨む際も、すでに課題意識を持った見込み客であるため、スムーズなコミュニケーションが可能です。
キーワード設計の段階でユーザーの態度をコントロールできる点も、オウンドメディアの強みです。「〇〇とは」のような認知段階のキーワードから、「〇〇 比較」「〇〇 おすすめ」のような比較検討段階のキーワードまで、ターゲットとするユーザーの購買段階に合わせてコンテンツを設計できます。
弊社の支援事例でも、オウンドメディア経由で獲得したリードは、広告経由のリードと比較して案件化率が高い傾向が見られます。ある企業では、BtoBマーケティングの戦略設計者とオウンドメディア領域のプロフェッショナルが協働することで、1年未満でリード3倍化、案件化率30%増、受注率3倍増という成果を実現しました。これは、オウンドメディアから獲得したリードの質の高さを示す一例です。
コンテンツが資産として蓄積される
オウンドメディアで作成したコンテンツは、企業の資産として蓄積されていきます。
広告は配信期間が終われば効果がなくなりますが、コンテンツは一度公開すれば長期間にわたって価値を発揮し続けます。過去に作成した記事が検索エンジンで高く評価されれば、広告費をかけることなく安定した集客力を維持できます。
ただし、ここで重要な注意点があります。「コンテンツは資産になるので、とにかく数を増やしたい」という認識は必ずしも正しくありません。コンテンツには「価値を生むものもあれば、生まないものもある。また、価値が増えるものもあれば減るものもある」という特性があります。
コンテンツが「負債」と化すケースもあります。例えば、以下のような状況です。
- 低品質なコンテンツが多いと、サイト全体のSEO評価に悪影響を与える
- 古くなった情報がそのまま残っていると、ユーザーの信頼を損なう
- メンテナンスにコストがかかり続ける
真に価値のあるコンテンツとは、ビジネスの目的に合致し、その目的達成に貢献できる品質を持ったものです。リード獲得目的であれば実際にリードが獲得できているか、認知目的であれば読者に届いているかが判断基準となります。
コンテンツを資産化するためには、量よりも質を重視し、継続的なメンテナンスを行う体制が必要です。
弊社では、コンテンツの資産化について「暗黙知の形式知化」という観点でも捉えています。社内のプロフェッショナルが持つ経験や判断、ノウハウなど、これまでまとまっていなかった知識や情報を形式知化し、コンテンツとして発信することで、他社との差別化を図ることが可能になります。
ある企業では、AIを活用した対話システムで社員の暗黙知を引き出し、月2本だったコンテンツ制作を30本へと15倍に増やすことに成功しました。この企業では、従来の手法では1本あたり5〜8時間を要していたライティング作業が、30分の会話でコンテンツ化できるようになりました。「思っていることをコンテンツ化するのは楽しい」という声が多数上がり、当初は1人1本の納品を想定していたものが、1人で3〜4本を担当するケースも生まれました。
特筆すべきは、作成されたコンテンツが単なる記事にとどまらず、多面的な資産として活用されている点です。外部への情報発信だけでなく、社内教育や提案書、採用資料など多様な用途に活用されています。さらに、これらのコンテンツを戦略オートメーション化AIエージェントに組み込んで考慮観点を増やしたり、コンテンツSEOのリライトに自動活用するなど、売上向上と原価削減の両面で暗黙知を設計・活用する仕組みが構築されました。
このように、コンテンツを資産化するためには、量よりも質を重視し、継続的なメンテナンスを行う体制に加えて、社内の知見を効率的に形式知化する仕組みづくりも重要な観点となります。
ブランディングに活用できる
オウンドメディアは、企業のブランディングに有効な手段です。
ブランディングとは、「ブランドに意味を持たせ、受け皿を作ること」を指します。ただ商品やサービス名を知ってもらうだけではブランディングは成り立ちません。「利便性を重視するならA社」「セキュリティを重視するならB社」といったように、自社サービスの強みや特徴をユーザーに認知してもらい、ユーザーの評価軸とブランドを結びつけることを目指します。
オウンドメディアは、コンテンツの内容や出し方を自分たちでコントロールできるため、ブランディングに適しています。「ユーザーにどのような印象を持ってもらいたいか」を意識して一貫したコンテンツを発信し、ユーザーとコミュニケーションを図ることで、ブランドイメージの形成が可能です。
具体的には、以下のような効果が期待できます。
- 専門性の高いコンテンツを発信することで、「この分野のプロフェッショナル」という認知を形成
- 企業の価値観やビジョンを伝えることで、共感を得られるファンを獲得
- 競合との差別化ポイントを明確に打ち出すことで、選ばれる理由を作る
広告では伝えきれない企業の深い価値観や専門性を、コンテンツを通じて丁寧に伝えることができる点が、オウンドメディアの強みです。
弊社が支援した老舗飲料メーカーでは、豊富な専門知識と歴史を持つ一方で、デジタル領域における情報発信やユーザーとの関係構築に関する経験が不足していました。オウンドメディア立ち上げにあたり、SEO専門人材ではなく、日常的に対象製品を楽しむ愛好家をライターとしてアサインしました。嗜好品特有の主観的な価値観を活かし、読み手の共感を得る自然な語りを重視したことで、他社では真似できない独自性のあるコンテンツが生まれ、1年で月間8万UUを達成するとともに、ブランドの世界観を効果的に伝えるメディアとして社内でも高く評価されるようになりました。
また、ブランディングにおいて重要なのは、「何を伝えるか」だけでなく「誰に伝えるか」を明確にすることです。ある業務支援系SaaS企業では、オウンドメディアの運営を通じて顧客起点の発想への転換を実現しました。従来は「何をやるか」という施策起点の発想でメディア運営を行っていましたが、ターゲットの調査分析やカスタマージャーニーの整理を通じて「誰に、何を届けるか」という顧客起点の発想に切り替えることで、ブランドメッセージの一貫性が生まれ、結果としてリード数は昨対比115%、商談数は昨対比120%を達成しました。この事例が示すように、オウンドメディアは単なる情報発信の場ではなく、顧客との対話を通じてブランドの価値を深く理解してもらうための基盤となります。
採用力の強化につながる
オウンドメディアは、顧客向けだけでなく、求職者向けの情報発信にも活用できます。
社員へのインタビューやイベント、日々の働き方など、自社にフォーカスしたコンテンツを発信することで、会社のカルチャーやビジョンに共感する採用候補者を獲得することに繋がります。
求職者にとっても、「入社してみないと会社の様子が分からない」といった懸念が解消され、納得した上で転職先を決めることができます。その結果、入社後のミスマッチを防ぐことが期待できます。
採用オウンドメディアの効果として、以下のような点が挙げられます。
- 理念やビジョンに共感した人材からの応募が増える
- 採用候補者との初期コミュニケーションがスムーズになる
- リファラル(社員紹介)採用の促進につながる
- 採用コストの削減が期待できる
企業文化や働く環境を発信することで、自社に合った人材を効率的に獲得できる点が、採用におけるオウンドメディア活用のメリットです。
弊社が支援したあるマーケティング支援企業では、シニア層はカルチャーを重視したリファラル採用で定着していたものの、ジュニア層は明確な採用基準がないまま採用が行われ、早期退職や途中離脱が多発していました。そこで、代表との複数回の議論を経て会社のミッションやビジョンを再設計し、会社が重視するバリューを整理した「カルチャーブック」を3ヶ月で作成しました。これにより、全社で統一した価値観を共有できるようになり、採用活動においても一貫性を持たせることが可能となりました。
顧客との信頼関係を構築できる
オウンドメディアを通じて有益な情報を継続的に提供することで、見込み客や既存顧客との信頼関係を構築できます。
商品やサービスの一方的な売り込みではなく、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供することで、「この会社は自分たちの課題を理解してくれている」という信頼感が生まれます。
この信頼関係は、営業活動においても効果を発揮します。企業名や商品名の認知を獲得することで、営業時のアポイントや商談がスムーズに進むことがあります。「御社のメディアを以前から読んでいました」という反応が得られれば、すでに一定の信頼を獲得した状態から商談をスタートできます。
また、既存顧客に対しても、継続的な情報提供を通じてロイヤリティを高めることができます。サービスの活用方法や業界の最新情報を発信することで、顧客との関係性を維持・強化できます。
弊社の考えとして、オウンドメディアで信頼を構築するうえで最も重要なのは「嘘や誤情報を絶対に出さない」という原則です。誤った情報は読者に不利益を与え、企業ブランドに計り知れないダメージを与えます。成果追求の前に情報発信の責任を最優先にする姿勢が、長期的な信頼構築の基盤となります。事実確認の厳格化、推測と事実の区別、専門家監修の義務化、引用元の明確化といった具体的な基準を設定し、組織全体で徹底することが不可欠です。
顧客理解が深まりビジネスに活かせる
オウンドメディアの運用を通じて、顧客理解を深めることができます。
コンテンツへのアクセスデータを分析することで、顧客がどのような情報を求めているのか、どのような課題を抱えているのかを把握できます。どのキーワードで流入が多いか、どのコンテンツがよく読まれているかといったデータは、顧客ニーズを理解するための貴重な情報源となります。
これらの知見は、オウンドメディアの改善だけでなく、さまざまなビジネス活動に活かすことができます。
- 商品開発やサービス改善のヒント
- 営業トークやプレゼン資料の改善
- 広告クリエイティブの最適化
- カスタマーサポートの品質向上
顧客の声を直接聞く機会が限られている企業にとって、オウンドメディアは顧客理解を深めるための有効なチャネルとなります。
弊社が支援したある業務支援系SaaS企業では、オウンドメディアのデータ分析を通じて顧客理解を深め、マーケティング戦略を大きく転換しました。従来は「何をやるか」という施策起点の発想でメディア運営を行っていましたが、ターゲットの調査分析やカスタマージャーニーの整理を通じて「誰に、何を届けるか」という顧客起点の発想に切り替えることに成功。その結果、リード数は昨対比115%、商談数は昨対比120%を達成しました。この事例が示すように、オウンドメディアで得られた顧客理解は、マーケティング戦略全体の方向性を見直すきっかけにもなり得ます。
弊社では、オウンドメディアの運用を「コミュニケーション」という観点で捉えることをお勧めしています。「コンテンツマーケティング」というカテゴリーで考えると、使える手段はコンテンツに限定されてしまいます。しかし「コミュニケーション」という観点で捉え直すと、広告、SNS、手紙、営業トークまで、あらゆるタッチポイントが有効な手段として見えてきます。オウンドメディアで得られた顧客理解は、こうした多様なコミュニケーションチャネルの改善に活用できるのです。
オウンドメディア運用の注意点とデメリット
オウンドメディアには多くのメリットがありますが、運用にあたっては注意すべき点もあります。メリットだけでなくデメリットも理解した上で、導入を検討することが重要です。
成果が出るまでに時間がかかる
オウンドメディアは、成果が出るまでに時間がかかる施策です。
検索エンジンをタッチポイントとしたコンテンツSEOの場合、コンテンツが検索エンジンに評価されるまでには一定の時間がかかります。一般的に、成果が出始めるまでに半年から1年程度かかることも珍しくありません。場合によっては1年以上成果が出ないケースもあります。
この特性を理解せずに短期的な成果を求めてしまうと、以下のような問題が生じます。
- 成果が出る前に運用を中止してしまう
- 焦ってコンテンツの質を落としてしまう
- 経営層や社内の理解を得られなくなる
オウンドメディアの運用には、中長期的な視点が不可欠です。プロジェクトマネジャーやコンテンツディレクター、コンテンツ制作者などのメンバーを揃え、適切なリソース配分でコンスタントにコンテンツを公開し続ける体制が必要です。
初期段階では、成果指標として検索順位や表示回数といった中間指標を設定し、進捗を確認しながら運用を継続することが重要です。
弊社の経験から言えば、特に初期段階で重要なのは「小さな成功体験の積み重ね」です。滞在時間が10秒伸びた、SNSで初めてシェアされた、といった小さな変化に全員で喜ぶ文化を作ることが、ブレイクスルーまで走り続ける精神力を支えます。また、経験の浅いメンバーが数値データを見ると、PVの上下に一喜一憂し、本質と離れた表面的な数値改善に躍起になることがあります。初期3ヶ月程度は基礎の習得に集中させ、数値よりもコンテンツの質に集中する期間を設けることをお勧めします。
専門知識と継続的なリソースが必要
オウンドメディアの運用には、専門知識と継続的なリソースが必要です。
リード獲得を目的としてオウンドメディアを運営する場合、検索エンジンから集客するためにSEOの知識が求められます。ユーザーに焦点を絞ったコンテンツの作成、被リンクの獲得、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化、適切な構造でのサイト構築など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
また、オウンドメディアを外注して立ち上げる場合の費用相場として、以下のような目安があります。
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 構築費 | 100万円〜300万円程度 |
| 運用費(月額) | 90万円〜130万円程度 |
初年度で見ると1,000万円ほどかかる場合も珍しくありません。自社で対応する業務と依頼する業務を決めてから予算を組むことが重要です。
社内で運用する場合も、専任の担当者を配置するか、他業務と兼務しながらも一定の時間を確保する必要があります。「担当者が通常業務と兼務しており、コンテンツ制作に時間を割けない」という状況は、オウンドメディアが失敗する大きな要因の一つです。
弊社がこれまで多くのオウンドメディア支援を行ってきた中で感じるのは、「組織と人の意識を変えること」が成果の最大の阻害要因になるケースが多いということです。マーケティング組織の立て直しやシステム導入のテクニカルな面よりも、実際には営業とマーケティング部門の認識齟齬が根本的な課題となることがあります。「マーケのリードは質が悪い」「営業が動いてくれない」といった相互不信を解消するには、双方を巻き込んで顧客の実像から議論を構築し直す必要があります。成果を生み出す組織へ変革するには、テクニカルな施策よりも、人と組織の側面への深い着目と継続的なアドバイスが不可欠です。
必ずしも全ての企業に適しているわけではない
オウンドメディアは、すべての企業に適した施策というわけではありません。
特にBtoB企業では、BtoCと比較してターゲットが限定的であり、一度方向性を決めると軌道修正が困難になる特徴があります。そのため「どうやるか」以前に「やるかやらないか」の判断が成功の鍵を握ります。
オウンドメディアが有効なケースと、投資対効果が見合わないケースを整理すると、以下のようになります。
オウンドメディアが有効なケース
- デジタルサービスを提供している
- 全国展開している
- 市場規模が大きい
投資対効果が見合わないケース
- アナログサービス中心
- 地域限定のビジネス
- 狭い市場(ニッチ市場)
例えば、地域密着型の店舗ビジネスでは、全国からの集客よりも地域内での認知向上が重要です。このような場合、オウンドメディアよりもローカルSEOやGoogleビジネスプロフィールの活用、地域広告などの施策が有効な場合があります。
また、オウンドメディアはあくまで多くの施策のひとつです。自社の事業特性や他のマーケティング施策との関係を考慮した上で、取り組むかどうかを判断する必要があります。「競合がオウンドメディアを始めたから始める」というような、オウンドメディアの立ち上げを目的にするのではなく、自社にとってオウンドメディアが施策として適しているのかを見極めることが重要です。
弊社が支援したあるインフラサービス会社では、年間数億円規模の売上を誇るオウンドメディアがGoogleのコアアップデートによる検索順位低下に直面しました。当初はリライトの行動量を増やすことで検索順位の回復を試みましたが、どれだけ試算しても目標達成が困難だとわかり、売り方自体を抜本から見直すことにしました。既存顧客を分析し、個別販売からセット販売へと販売方法を変更した結果、検索順位が完全に回復しなくても顧客単価の向上で売上を最大化できる体制を構築し、過去最高のマーケティングリード数を創出することに成功しました。この事例が示すように、オウンドメディアに固執せず、事業全体の視点で最適な施策を選択する柔軟性が重要です。
オウンドメディアで成果を出すための運用ポイント
オウンドメディアで成果を出すためには、適切な運用が不可欠です。成功しているメディアに共通するポイントを紹介します。
目的と成果指標を明確に定義する
オウンドメディアで成果を出すための第一歩は、運用目的と成果指標を明確に定義することです。
「何のためにオウンドメディアを運用するのか」という目的の明確化が欠かせません。オウンドメディアの特性は事業貢献、事業課題の解決にあります。ミッションをあらかじめ定義しておくことは、設計や運用フェーズにおけるすべての判断基準になります。
ミッションの例として、以下のようなものが考えられます。
- 検索からのコンバージョンを獲得し、広告費を抑制しながらも売上を伸ばす
- インバウンドでのリード獲得基盤を構築する
- 認知を拡大し採用のエントリー数を増やす
目的が定まったら、その達成度合いを定量的に測れる成果指標(KPI・KGI)を設定します。例えば、リード獲得が目的であれば「問い合わせ数」「資料ダウンロード数」、認知拡大が目的であれば「新規ユーザー数」「指名検索数」といった指標が考えられます。
成功しているオウンドメディアには、以下の3つの法則が共通しています。
- 目的と成果が明確に定義されている - KPIツリーを設計し、適切な段階を踏んで目的を達成できるようにしている
- 目的に沿った運用がされている - 定めた目的や成果に対して正しい運用がなされている
- 継続と改善を行い続けている - 中長期的な視点で運用を継続し、改善を繰り返している
重要なのは、見るべき指標を絞ることです。指標が多すぎるのは得策ではありません。見るべきもの、見なくてよいものを振り分け、6〜7つ程度の指標に絞ることをおすすめします。
弊社の経験では、認知獲得フェーズでPVを指標に置くことはお勧めしていません。理由は二つあります。一つは、PV数は季節やトレンドなどコントロール不可能な要因に影響されること。もう一つは、検索順位が上がればCTRも自然と上がりPVも増えるからです。検索1位を獲得した際の平均CTRは約40%程度ですが、10位では1.6%程度まで落ち込みます。大事なのは、狙ったキーワードで1位を獲得することです。
戦略設計と運用体制を整える
目的と成果指標を定めたら、達成に向けた戦略を設計し、運用体制を整えます。
戦略設計においては、リソースをどこに投下するかが大切です。「やる」と決めたことに振り切るためにも、同時に「やらないこと、諦めること」も明確に定めます。
時間軸での戦略設計の例として、以下のような切り方が考えられます。
- 初月: キーワード設計を徹底的に行う
- 2〜6ヶ月目: ひたすら新規コンテンツを作成し、運用体制を構築
- 7〜12ヶ月目: メンテナンスにシフトし、CV獲得に注力
また、戦略を実行するための体制構築も重要です。いくら理想的な戦略が描けても、実行できなければ成果は生まれません。
ここで注意したいのが、「手段の目的化」を防ぐことです。詳細な行動計画を立てすぎると、毎月の記事本数やカテゴリー配分といった「やるべきこと」が目的になってしまうことがあります。データを振り返っても、計画変更のハードルが高すぎて改善に活かせない状態に陥ります。
これを防ぐためには、「余白設計」が重要です。運用体制、リソース、予算を把握し、変えられること・変えられないこと、なくせること・なくせないことを整理します。定数と変数を分けて、変数を柔軟に対応できる余白として定義することで、目標に真摯に向き合える組織土壌が形成されます。
弊社では、スモールスタートで成功体験を積み上げることをお勧めしています。ある企業の支援では、多岐にわたるサービスの中から最初は最重要な3つに狙いを定め、成功体験を作って運用を加速させる戦略を取りました。検索ボリュームではなく、ツール・サービスの検討段階で検索されるキーワードに絞ることで、少ないリソースでも確実に成果を出すことができました。
継続的な改善を行う組織を作る
オウンドメディアは、公開して終わりではありません。継続的な改善を行う組織づくりが、長期的な成功の鍵を握ります。
コンテンツは公開後も、検索エンジンの評価やユーザーニーズの変化に合わせてメンテナンスが必要です。検索順位やユーザーの行動データを分析し、コンテンツの改善点を特定して更新することで、より高い成果につなげることができます。
継続的な改善を実現するためのポイントとして、以下の3点が挙げられます。
1. 共通の目標と判断軸の確立 オウンドメディアの明確な目的(KGI)と判断基準をチーム全体で共有します。これにより、メンバー全員が同じ方向を向いて意思決定できるようになります。
2. 成功体験の積み重ね 特に初期段階では、小さな成功でも共有・称賛し、チームの自信とモチベーションを高めます。滞在時間が10秒伸びた、SNSで初めてシェアされた、といった小さな変化に全員で喜ぶ文化を作ることが重要です。
3. 段階的な自律性の向上 初めは手厚いサポートと具体的な指示を行い、成果が出始めたら徐々に「確認」へとコミュニケーションをシフトします。外部の専門家に依存せず、社内で持続的に運用できる体制を整えることが長期的な成功には欠かせません。
また、社内にノウハウが不足している場合は、外部パートナーの活用も選択肢となります。戦略設計や良質なコンテンツ制作には専門的な経験・スキルが必要であり、最短距離で成果を出すためにプロに任せるという判断も有効です。
パートナー選びの際は、実績を確認することが重要です。どのようなプロセスで、どのような課題を解決してきたのか、何を得意分野としているのかを聞くことで、自社に対してどのような提案をしてくれるかイメージできます。
弊社の経験から、継続的な改善を実現する組織づくりで最も重要なのは、「成果」と「結果」の違いを理解することです。「成果」は良い結果のことを指し、「結果」はある物事・行為から生じた状態を指します。例えば「リードが0から100件集まる」という成果を得た結果、担当者の役職が変わり、メンバーと予算が増え、新しい体制を元に成長させていく体制ができる、といった使い分けを行います。成果を得た際に生じる「結果」を元に、次の成果と結果を手にして、さらに伸ばしていく。この視点がオウンドメディアの醍醐味であり、中長期的な視点で見ていくオウンドメディアだからこそ、成果と結果を積み重ね続けていけば、マーケティング、売上、利益、組織、カルチャー、さらには株価まで変えていける可能性を持っています。
まとめ
本記事では、オウンドメディアのメリットと注意点、成果を出すための運用ポイントについて解説しました。
オウンドメディアを運用することで得られる主なメリットは、以下の8点です。
- 中長期的な集客基盤を構築できる
- 広告費を削減しながら安定集客が可能
- 質の高い見込み客を獲得できる
- コンテンツが資産として蓄積される
- ブランディングに活用できる
- 採用力の強化につながる
- 顧客との信頼関係を構築できる
- 顧客理解が深まりビジネスに活かせる
一方で、成果が出るまでに時間がかかること、専門知識と継続的なリソースが必要なこと、必ずしも全ての企業に適しているわけではないことも理解しておく必要があります。
オウンドメディアで成果を出すためには、目的と成果指標を明確に定義し、戦略設計と運用体制を整え、継続的な改善を行う組織を作ることが重要です。
オウンドメディアは、正しい戦略に基づいて運用と継続を繰り返せば、必ず成果が出てくる施策です。本記事の内容を参考に、自社にとってオウンドメディアが適切な施策かどうかを判断し、導入を検討していただければ幸いです。
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